artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

20世紀のポスター[タイポグラフィ]─デザインのちから・文字のちから─

会期:2011/01/29~2011/03/27

東京都庭園美術館[東京都]

ポスター展だが、文字のデザインにスポットをあてる切り口がおもしろい。近代におけるスイスやドイツの重要性がよくわかる。大衆的な商品のコマーシャルや展覧会のポスターが数多くあるなかで、マニアックなコロンビア大学の建築学科のレクチャーのポスターが入っていたのが、印象的だった。これは建築的なタイポグラフィを提唱するウィリィ・クンツのデザインである。

2011/03/25(金)(五十嵐太郎)

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シュテーデル美術館所蔵 フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展

会期:2011/03/03~2011/05/22

Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]

有名なフェルメールの絵画《地理学者》の背景を読み解くための、社会的な背景を紹介する展覧会。17世紀のオランダ絵画は、窓の描き方において重要な時代だが、とくに興味深い作品、ピーテル・ヤンセンス・エーリンハ《画家と読みものをする女性、掃除をする召使いのいる室内》の実物に出会えたことが良かった。これは、扉の向こうの部屋の窓という折り畳まれた重層的な空間構成や、絵画と鏡に囲まれた大きな窓がさまざまなリフレクションを起す複雑な関係性など、表象分析の題材として楽しめるだろう。

2011/03/23(水)(五十嵐太郎)

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ホンマタカシ「ニュー・ドキュメンタリー」展/高嶺格「Good House, Nice Body ~いい家・よい体」

会期:2011/01/08~2011/03/21

金沢21世紀美術館[石川県]

ホンマタカシのニュー・ドキュメンタリー展を見る。最終日のため、長蛇の列。双眼鏡の部屋は時間がなく、見ることができなかった。東京の巡回展で見ることにしよう。狩猟の後、生き物の血が白い雪に残る「trails」やロサンゼルスの野生動物の「wild corridors」と、人工的な風景であるマクドナルドのMシリーズが対比的で興味深い。
同時開催の桑山忠明展は、ミニマルな立体を反復することにより、金沢21世紀美術館の空間がきわだつような作品である。しかし、部屋に入るたび、監視員から作品には近づくなと必ず注意される鑑賞システムは、なんとかならないものか。鑑賞者を信じない、この警告を聞くこと自体が、作品の一部に組み込まれているかのようだ。
高嶺格の展示「いい家・よい体」は、二度目の訪問だ。ワーク・イン・プログレスなので、作品も少し変化。昨年、高嶺さんから海外での展示で、土嚢を使いたいという相談のメールをもらい、渡辺菊眞さんという建築家がいると教えたのだが、その後、二人のコラボレーションが続き、この作品に至ったようだ。廃材を活用し、反・現代住宅的な空間が、プロジェクト工房にて出現している。

2011/03/21(月)(五十嵐太郎)

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GEIBUN2─富山大学芸術文化学部第2回卒業制作展─

会期:2011/03/08~2011/03/23

高岡市美術館[富山県]

那覇─小松空港を経由し、高岡へ。小松駅にて、東京─仙台の新幹線をキャンセルしようとしたら、駅員に新幹線以外の鉄道なら行けるのでは? と言われ(もちろん、つながっていない)、ああ、ここは被災地と遠いのだと実感した。高岡市美術館の富山大学芸術文化学部による卒業制作展に関連して、トークショー「ヴェネチアビエンナーレ国際建築展について」を行ない、建築と映像の学生の作品を講評する。
五十嵐賞を出すということで、建築からは、一番造形力のあった谷間を横断するジグザグ建築の三上恵理華と、コートハウスのサンプルを集め、上下をばらして再度組み合わせ、バリエーションを増やした橋本千夏、そして造形芸術コースからは、感情にまつわる架空の昆虫を大量に制作した川越ゆりえの「感情標本」を選ぶ。なお、卒制展の打ち上げでは、東北大から富山市の実家に疎開した研究室の椚座くんと再会した。

2011/03/20(日)(五十嵐太郎)

建築講演会 沖縄建築の可能性について

会期:2011/03/18

聖クララ教会[沖縄県]

震災翌日に予定されていた日本郵船歴史博物館の「船→建築」展に関連した遠藤秀平との対談など、幾つも仕事のキャンセルが続き、震災後の初仕事となったのが、東日本から遠く離れた沖縄での講演会。素晴らしきモダニズム建築の聖クララ教会にて、「沖縄建築の可能性について」のレクチャーを行なう。ゲニウス・ロキや批判的地域主義などの基本概念をレビューしつつ、赤い瓦や沖縄構成主義などについて語る。続いて、入江徹の司会により、対談と質疑応答。めずらしく、若手の出席者から多くの質問があり、その後の懇親会でも熱い議論が続く。批判的に掘り下げると、これはとても面白いテーマである。沖縄は震災とは無関係の地と思いきや、東北の建材メーカーの被災により、部材が入手しにくくなっているという。また国際通りの路上では、義援金集めの活動が始まっていた。

2011/03/18(金)(五十嵐太郎)