artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
特別講座「復興へのリデザイン」第一回
会期:2011/06/11
せんだいメディアテーク[宮城県]
震災のあおりを食って、昨年秋にスタートしたせんだいスクール・オブ・デザインもプログラムの変更を余儀なくされた。まず2011年度の開講と2010年度の修了式が遅れて、6月になったこと。今期はスタジオのプログラムを走らせず、代わりに連続特別講座「復興へのリデザイン」とアジャイル・リサーチ・プロジェクトを行なうこと。そこで五十嵐は、「文化被災」を特集テーマとして、「S-meme」2号を制作する予定だ。6月11日は、せんだいメディアテークにて、第二期の説明会を行なった後、「復興へのリデザイン」の第一回「復興を設計する」を開催し、講師陣によるプレゼの後、参加者とともに討議した。
2011/06/11(土)(五十嵐太郎)
東日本大震災:八戸
会期:2011/06/09
[青森県]
青森の八戸港は、船が陸にのりあげた映像で知られるが、もうだいぶ片付いていた。住宅地も湾岸部と離れており、岩手県や宮城県に比べると、被害は少ない。震災後、各地の港や魚市場をまわりながら、飾り気のない漁港施設のモダニズムのカッコ良さに気づかされた。2月にオープンしたばかりの八戸ポータルミュージアム「はっち」は、針生承一・アトリエノルド・アトリエタアク設計共同体によるものだが、八戸のせんだいメディアテークというべき現代的な空間だった。震災時には、避難所としても活躍したことを知る。
2011/06/09(木)(五十嵐太郎)
DSA日本空間デザイン賞2016
朝から夕方まで、日本空間デザイン協会(DSA)の空間デザイン賞の審査をオブザーバーとして立ち会う。ディスプレイや展示デザイン、インテリア、イベント、インスタレーションなど、幅広い作品が最終選考に残り、一部の作品は映像資料も提出されていた。世の中にはいろんな賞があるけれど、やはりそれぞれに特徴があって興味深い。また審査の途中で方向性の分岐点となるいくつかの作品をめぐる討議が一番面白い。最後は社会性をもつ作品、前衛的な造形の作品二案が最優秀賞を争った。
2011/06/05(日)(五十嵐太郎)
東日本大震災:東松島市・石巻
会期:2011/06/04
[宮城県]
電車が通じないため、バスに乗って、矢本/東松島のエリアを訪れた。45号線を越えて少しすると、風景が変わりはじめる。たとえ昼でも、濃霧のなかで、見渡す限り誰もいない、ガレキだらけの耕作地のあぜ道を歩くのは怖い体験である。淀川大橋を渡ろうとしたら、途中でばっさりと切断されていた。仕方なく、大きく迂回して、震災後、三度目の石巻へ。北上運河を越え、中屋敷から東の工業港背後の住宅地や、海辺の南浜町や門脇町はいまだにガレキが片付いていない。もっとも、中央や立町の商店街は、ささやかながら再開し、復興の兆しが見えていた。
2011/06/04(土)(五十嵐太郎)
ポンペイ展 ~世界遺産 古代ローマ文明の奇跡~
会期:2011/02/10~2011/06/05
仙台市博物館[宮城県]
大学院の時にポンペイ、その後にもうひとつの消えた町エルコラーノも訪れた。また、なぜか日本では三年に一度はポンペイ展を開催しているので、通常なら行かなかったと思うのだが、震災時に仙台でポンペイ展が開催されていたことに奇遇を感じ、終了間際に足を運ぶ(ただし、今回は、現地の展示やポンペイ展でよく目玉になる、火山灰で亡くなった犠牲者の身体が空洞になり、そこに石膏を流して最期の姿を彫刻化したものはなかった)。実際、やけに塀や門構えだけが残ってしまった蒲生など、仙台の被災地にはポンペイのような風景が出現した。改めて当時のフレスコ画は、色があせずに二千年もよく残ったと感心する。現代のデジタル化された情報はどうなるのだろうか。ちなみに、仙台市博物館も被災しており、まだ完全復活していなかった。
2011/06/03(金)(五十嵐太郎)