artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

中山英之 展「小さくて大きな家」

会期:2011/04/27~2011/05/08

AXIS ギャラリー[東京都]

中山英之のとびらプロジェクトに弾みをつけるべく、企画された展覧会である。テーブル・クロスにまとわれた小さな机群のうえに置かれた模型たち。本人が執筆したテキストは、短い説明文だが、思考をぐらぐらさせるような飛翔力をもつ。建物の基盤をとらえなおす、中山の特徴を反映し、会場では模型を置く、テーブルとクロスの繊細なデザインが魅力的だった。

2011/05/01(日)(五十嵐太郎)

【帰心の会】伊藤建築塾・5人の建築家による「震災復興シンポジウム」

会期:2011/05/01

伊藤建築塾神谷町スタジオ[東京都]

神谷町の伊東塾にて、帰心の会のシンポジウムが開催された。東日本大震災を受けて、隈研吾と内藤廣の声がけによって始まったチームである。妹島和世は避難所の体育館に小さなテーブルを置くだけでも空間は変わるのではないかと、山本理顕はコミュニティをつくる仮設住宅を提案するが、現状では制度の壁が高いという。伊東豊雄が提唱したのは、人の批判をしないこと、私よりもわれわれを考えること、そして小さくても、できることから手をつけることである。被災地に8畳の小空間でもいいから、公共性や癒しの場となるような、(ノマド的?)建築の原型をつくれないかという。トップアーキテクトも壊滅した街の風景を前にまだ戸惑い、どう行動すべきかを模索している。3.11を契機に改めて、建築家は社会において信用されている? かを自問するようなイベントだった。会場には、多くのプレスほか、そうそうたる建築家が駆けつけていたのも印象に残る。

2011/05/01(日)(五十嵐太郎)

「篠原一男と7つの住宅論」展

会期:2011/04/24~2011/04/30

桑沢デザイン研究所1Fホール[東京都]

1950年代から90年代まで、時代順に39の住宅模型が並ぶ、会場の風景は壮観だった。順路に沿って見ていくと、篠原の作風の変遷をたどることができる。東日本大震災の影響で開催が危ぶまれるなか、建築系ラジオのスタッフ、平田りかを含む、わずか7名の学生が主催した企画である。感心したのは、手で模型の屋根を外せること。なるほど、篠原建築にとって屋根の姿は重要だが、内部空間も重要である。しかし、通常の模型のように屋根が外せないと、内部がわからないし、最初から屋根がない模型をつくると、外観がわからなくなる。つまり、外せると両方楽しめるというわけだ。

2011/04/26(火)(五十嵐太郎)

彰国社引越し

彰国社[東京都]

東日本大震災の影響により、急きょ彰国社は老朽化した自社ビルを出て、そう遠くはない新しい仕事場に引越しを決めた。その際、被災した東北大に本や雑誌を寄贈いただけることになり、普段は入れない資料室で作業する機会を得た。竣工当初の彰国社ビルの写真を見ると、増築前のために、プロポーションは細く、また両側には小さな家屋が並ぶ。90年代からここのビルには何度も打ち合せで訪れたが、会議室の窓から見る市ヶ谷駐屯地の風景も変わってしまった。引越が終わると、すぐに解体するという。自分がいま何階にいるのかわからなくなるようなステップ・フロア、力強い手すりなど、失われることを知って、改めて思い出深い空間であることに気づく。

2011/04/24(日)(五十嵐太郎)

Emerging Project 2011展

会期:2011/04/01~2011/04/28

新建築社1階、吉岡ライブラリー[東京都]

新建築社の吉岡ライブラリーは、平田晃久のデザインによる本の展示空間である。ひだ状のパーティションにより表面積を増やし、ほとんどの雑誌が表紙を見えるようにレイアウトしている。ヴィジュアルが重要な建築雑誌ならではの視覚を楽しめる空間だ。そのオープンを記念する「Emerging Project 2011」展では、乾久美子、長坂常ほか、若手建築家22組の模型が、書架空間のあいだのあちこちに設置された。シンプルな模型展がより魅力的に見えるギャラリーである。4月7日の出展者による座談会では、全員で東日本大震災について討議していたが、それだけに、22組のなかに東北や名古屋の建築家がひとりもいないことが気になった。ほぼ東京であり、西日本(アルファヴィル、土井一秀、井手健一郎)と北海道(五十嵐淳)が少しだけである。JIA東北住宅大賞の審査で毎年まわってると、東北にもけっこうがんばっている良い若手建築家はいるのだが、残念だ。

2011/04/22(金)(五十嵐太郎)