artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
プレビュー:あいちトリエンナーレ2013 揺れる大地──われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活
会期:2013/08/10~2013/10/27
名古屋地区、岡崎地区[愛知県]
都市型現代アート・イベントの雄「あいちトリエンナーレ」がいよいよ開催。今年は五十嵐太郎(都市・建築学)を芸術監督に迎え、東日本大震災後を強く示唆するテーマのもと、現代美術75組、パフォーミング・アーツ18組が参加、そしてオペラ公演も行なわれる。また、岡崎市が会場に加わり、エリアが拡大したのも今年の見所だ。前回から3年の月日が経ち、いまや日本各地で地域型アート・イベントが大流行している。それらの先輩格であり、都市型イベントの先駆者でもある「あいちトリエンナーレ」が、一体どんなビジョンを見せてくれるのか。テーマから察するにメッセージ色の強い作品が大挙して押し寄せる可能性もあり、その成否には注目せざるをえない。
2013/07/20(土)(小吹隆文)
プレビュー:永井博 作品展 サマー・マッドネス
会期:2013/08/07~2013/08/27
DMO ARTS、digmeout ART & DINER[大阪府]
1980年代に青春時代を過ごした人なら誰もが知っている、大瀧詠一の名盤『ロング・バケーション』。そのジャケットワークで知られる永井博が、大阪のキタとミナミで大規模な個展を行なう。プール、白いパラソル、ヤシの木、どこまでも青い空……。永井が描き出した楽園風景を、21世紀のいま改めて見直してみるのも一興だ。もちろん旧作だけでなく、最新作も展示される予定。また、本人によるトークとDJパーティーも予定されており(8/10)、夏の夜を華やかに彩ってくれるだろう。
2013/07/20(土)(小吹隆文)
プレビュー:dreamscape──うたかたの扉
会期:2013/08/03~2013/09/16
京都芸術センター[京都府]
毎年夏休みに、子どもから大人までを対象にした啓蒙的な企画展を行なう京都芸術センター。しかし、夏休み企画だからといってわかりやすさ一辺倒に走るわけではない。今回は大西康明(画像上)と松澤有子(画像下)の2人を選出し、展示空間全体を飲み込んでしまうようなインスタレーションの世界を紹介する。大西はポリエチレンシートを用いて日常のなかで起こる目に見えない現象を可視化し、松澤は土地や風土の性質を生かしてその場に生命が宿ったかのような非日常空間をつくり出す。公開制作や子ども向けワークショップなど多彩なイベントも予定されており、美術ビギナーが現代美術の面白さを体感できる機会になりそうだ。
2013/07/20(土)(小吹隆文)
ART OSAKA 2013
会期:2013/07/20~2013/07/21
ホテルグランヴィア大阪 26階[大阪府]
関西を代表する現代美術のアートフェアとして知られる「ART OSAKA」。今年は国内外の52画廊が参加し、例年どおりビギナーからコレクターまでをフォローする過不足のない仕上がりとなった。また今年は、具体美術協会の第2世代の作家たちに迫るグループ展や、フランスの歴史ある公募展から選抜された若手作家のグループ展、ホテルグランヴィア大阪と京都市立芸術大学によるプロジェクトなどの企画展も充実しており、催しに深みを持たせることにも成功していた。こうした積極的な展開は、実行委員の世代交代(若返り)が上手く機能している何よりの証拠であろう。関西のアートマーケットは首都圏に比べると小さいが、国内でアートフェアが成立する数少ない地域のひとつである。地元の芸術文化の灯を絶やさぬためにも、「ART OSAKA」には今後も励んでほしい。
2013/07/20(土)(小吹隆文)
大竹伸朗 展「ニューニュー」「憶速」「女根/めこん」
[香川県]
ニューニュー:2013/07/13~11/04(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)
憶速:2013/07/17~2013/09/01(高松市美術館)
女根/めこん:2013/07/20~2013/09/01、2013/10/05~2013/11/04(女木島)
大竹伸朗の展覧会が、香川県の3カ所で同時開催されている。これだけ大規模な機会は「全景」展(2006年、東京都現代美術館)以来だ。3つの会場は以下のように性格分けされている。女木島の《女根/めこん》(画像)は「瀬戸内国際芸術祭2013」の出品物であり、すでに春から展示されている。しかし、その後も大竹が手を入れ続け、春とはすっかり異なる様相になってしまった。この作品は永遠に未完成と言っても差し支えなく、今後も変化し続けるであろう。丸亀の個展は2010年以降の作品を集めた近作・新作展で、2012年の「ドクメンタ」に出品した《モンシェリー:自画像としてのスクラップ小屋》や、1階エントランスの巨大なボーリングピンの立体《時憶/美唄》をはじめとする立体と、大量のドローイングやコラージュで構成されている。以上2展が大竹のいまと近年を表わしているのに対し、高松の「憶速」展は、大竹の過去を「記憶」と「速度」をキーワードに再編したものだ。出品数は534点。ジャンルやシリーズではなく、キーワードに準じて作品選定を行なっているのが興味深い。また、1977年から現在までのスケッチブック96冊を一挙に展示しており、非常に見応えがあった。今年は大竹が宇和島に移住して25周年にあたる。また、高松市美の開館、瀬戸大橋の開通も25周年であり、奇しき縁が大竹と香川を結びつけたと言えるだろう。3会場とも驚くべき密度とテンションに貫かれており、この夏見ておくべき展覧会である。
2013/07/18(金)(小吹隆文)