artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
木洩れ陽の宇宙II 山本修司 作品展
会期:2013/06/08~2013/07/14
尼信会館[兵庫県]
山本が近年精力的に発表している《木洩れ陽》シリーズを中心に、約25点の作品が出品された。その多くは、これまでに画廊で見たことがある作品だが、美術館並みの空間に並べてみると、やはり新たな感動がある。彼の作品は、木洩れ陽から敷衍して宇宙的スケールにまでイマジネーションが飛躍する。それゆえ広大な展示空間で本領を発揮するのだ。ユニークだったのは床置きされた1点の新作。雪見障子のごとく低位置に設置された窓に合わせた、サイトスペシフィックな作品だ。ただ、千変万化の天然光には山本も手を焼いたらしい。私が訪れた時間帯は発色が沈んで見え、少々残念だった。
2013/06/14(金)(小吹隆文)
EXIF Hideo Anze 2013
会期:2013/06/12~2013/06/25
DMO ARTS[大阪府]
カラフルな紙(タント紙)を絵具代わりに用いて写真作品を制作する安瀬英雄が、2年ぶりの個展を開催した。前回は室内の一隅と思しき空間をつくり上げ、絵具の垂れや飛沫といったペインタリーな要素も表現していたが、本展では白い箱状の空間に紙を配置するシンプルなスタイルに移行。ミニマルアートにも通じる静謐な世界をつくり出すことに成功した。また、紙の断面の重なりや、丸めた紙の組み合わせによる動的な作品もあり、バリエーションも豊かだった。ちなみに展覧会タイトルの「EXIF」とは、デジタル写真の撮影時に、画像データと共に記される撮影時のさまざまな付属情報とのこと。ペーパークラフトがアート作品へと生まれ変わる際のソースコード的な意味合いで名付けたのであろうか。
2013/06/13(木)(小吹隆文)
いつかいた場所 酒井咲帆 写真展
会期:2013/06/12~2013/06/23
iTohen[大阪府]
兵庫県出身で、現在は福岡県を拠点に活動する写真家・酒井咲帆の個展。2001年に富山県氷見市女良で4人の子どもたちと出会った彼女は、その後も彼ら彼女らと交流を続け、年に一度同地に出かけては写真を撮り続けた。本展では、2001年から12年までの作品を編年体で展示するとともに、4人から届いた手紙なども紹介した。当たり前のことだが、子どもにとっての10年は長い。最初は小さな小学生だったのがいつしか成人となり、4人が通った小学校は過疎化で閉校となった。その過程を綴るのに、写真ほど適した媒体はないだろう。ひとつの出会いを大切に温め、長期間のシリーズ作品にまで育て上げた作者に感心した。
2013/06/13(木)(小吹隆文)
すいこみ はきだし ひろがる 小出麻代 展
会期:2013/05/25~2013/06/09
LABORATORY[京都府]
京都市内の繁華街にある小さな路地の一角、焼肉屋のビルの3階という意外なスペースで、小出が魅力的なインスタレーションをつくり上げた。素材は、糸、ガラス、紙、樹脂、押しピン、回り灯籠など。糸をガイドに視線を泳がせていくと、素材が織りなす繊細な造形がメロディやリズムを奏で、見る者を作品世界へと没入させる。そして見終わった後には、自分が爽やかな余韻に包まれていることに気付くのだ。その感触は、美術作品というよりも詩の読後感に近い。ここまで浸り切れるインスタレーションに出会えたのは久々だ。見逃さなくてよかった。
2013/06/01(土)(小吹隆文)
金光男 個展 CONTROL
会期:2013/06/01~2013/06/30
eN arts[京都府]
金の作品は、パラフィンを塗った紙、キャンバス、パネルに日常風景の写真をシルクスクリーンでプリントし、イメージの一部を熱で溶かして歪ませたものだ。前回の個展では、床置きした作品に電球を密着させてイメージが変容する様を見せていたが、本展では複数の作品を重ねて展示したり、同一イメージの2点のうち1点を歪んだイメージで提示するなどの手法が取られた。彼の作品を見ていると、現実世界までもがいつしか歪みはじめるような不安感に襲われる。そうした精神作用を持つことが彼の作品の特徴なのだ。個展のたびに新たな展示方法の実験を繰り返すことで、作品の強度は順調に増している。
2013/06/01(土)(小吹隆文)