artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

若手芸術家・キュレーター支援企画 1floor 2013 黄色地に銀のクマ∪(あるいは)スーパーホームパーティー

会期:2013/08/24~2013/09/16

神戸アートビレッジセンター[兵庫県]

神戸アートビレッジセンターの「KAVCギャラリー」と「1room」を舞台に、若手アーティストが展覧会やイベントを行なう「1floor」。展覧会実施までの各段階でアーティストが積極的に関与し、その過程をウェブで公開しているのが特徴だ。今回選ばれたのは、共に1980年代後半生まれの谷本真理と野原万里絵の2名。谷本は陶芸、木材、ビニール紐、食物などを駆使したインスタレーション、野原は平面作品によるインスタレーションを発表したが、会場は両者の境界がわからないほど一体的な空間に仕上がっており、まずそのことに驚かされた。次に、両名とも自分の意思ではコントロールできない偶然性の介入や、ある種のルールを設けることで表現の可能性を広げる点に特徴があり、プロセスを重視する姿勢や素材・手段に対する柔軟性が際立っていた。毎回興味をそそられる「1floor」だが、今年の出来栄えは頭ひとつ抜きん出ていたように思う。

2013/08/24(土)(小吹隆文)

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プレビュー:六甲ミーツ・アート 芸術散歩2013

会期:2013/09/14~2013/11/24

六甲ガーデンテラス、自然体感展望台 六甲枝垂れ、六甲山カンツリーハウス、六甲高山植物園、六甲オルゴールミュージアム、六甲山ホテル、六甲ケーブル、六甲ヒルトップギャラリーオテル・ド・摩耶(サテライト会場)[兵庫県]

神戸の六甲山上に点在する、さまざまな施設を会場に行なわれるアートイベント。都市に隣接しながらも豊かな自然環境が残る六甲山の魅力を、ピクニック感覚の山歩きとアート作品を通して再認識できるのが大きな魅力だ。4度目の開催となる今回は、開発好明、國府理、クワクボリョウタ、西山美なコ、袴田京太朗など35組のアーティストによる展示が見られる。また、新たに設置された公演部門で、明和電機、森山開次×ひびのこづえ×川瀬浩介など5組のパフォーマンス公演も行なわれる。年々評価が高まっているイベントだけに、4年目のさらなる飛躍を期待したい。なお、会場が山上ということもあり、気候の変化が大きいのも「六甲ミーツ・アート」の特徴。ご観覧の際は、暑さ、寒さ、雨への対策をお忘れなく。会期後半の紅葉シーズンにもう一度訪れるのもおすすめだ。

2013/08/20(火)(小吹隆文)

プレビュー:奈良・町家の芸術祭 HANARART2013

会期:2013/09/07~2013/11/26

会場:五條新町(9/7~16)、御所市名柄(9/14~16、一部作品は9/7~16)、八木札の辻(9/20~29)、今井町(9/27~10/6)、郡山城下町(10/12~20)、宇陀松山(10/20~27)、奈良きたまち(11/1~10)、桜井本町(11/16~26)[奈良県]

奈良県内に数多く残る伝統的な家並みや町家と斬新なアート作品を組み合わせる、まちづくり型現代アートイベント。今年も県内8カ所を会場に少しずつ時期をずらして開催されるが、その内容は昨年とは大きく異なる。まず、キュレーターを公募する企画展「HANARARTこあ」は、郡山城下町1カ所での開催となり、奥中章人、サラスヴァティ、銅金裕司の3組が選出された。ちなみに「こあ」の審査を行なったのは、中井康之(国立国際美術館主任研究員)である。次に、アーティストが自主的に参加し展覧会やイベントを行なう「HANARARTもあ」。こちらは昨年と同様だ。そして3つ目が、アーティストが会場に長期間滞在して制作と展示を行なう「HANARARTえあ」で、国内作家はもちろん、フランス、台湾、タイの作家も参加している。「HANARART」は日程と会場が分散しているため、すべてを見届けるのは難しい。その代わり、どのエリアに出かけてもアートと地域の魅力を体感するだろう。ちなみに筆者自身が注目しているのは、やはり郡山城下町である。

2013/08/20(火)(小吹隆文)

プレビュー:映画をめぐる美術─マルセル・ブロータースから始める

会期:2013/09/07~2013/10/27

京都国立近代美術館[京都府]

詩人として出発し、後に言語とイメージの関係を問う幅広い創作活動を行なったベルギー出身の芸術家マルセル・ブロータース(1924~1976)。本展では、彼と後進の作家たちの作品を通して、映画をめぐる美術家の多様な実践を紹介する。出品作家は、ブロータース、アンリ・サラ、シンディ・シャーマン、田中功起、アナ・トーフ、やなぎみわ、ミン・ウォンなど12名。彼ら彼女らの、フィルム、写真、ビデオ、インスタレーション作品が、「Still/Moving」「音声と字幕」「映画のある場」など5つのテーマに基づいて展示される。

2013/08/20(火)(小吹隆文)

新時代の「やきもの」への挑戦!

会期:2013/06/18~2013/09/23

滋賀県立陶芸の森陶芸館[滋賀県]

美術館と滞在型スタジオを兼ね備えたやきもの専門文化施設である滋賀県立陶芸の森。同所では1992年の開設以来、48カ国860人以上のアーティストが訪れたという。その取り組みの成果を、主に30~40代の作家を中心に振り返るのが本展だ。会場には54作家の作品が並び、4章に分けて展示されていた。ただし展示面積の半分以上は第1章「胎動と予感 気鋭の作家たち」であり、それが本展の羅列的性格を物語っていたように思う。海外作家を紹介する第2章はまだしも、現代美術作家の取り組みを取り上げた第3章、器作品を紹介する第4章は数的に物足りず、特に第3章で3作家しか取り上げられていないのは疑問である。ただ、やきものオブジェをこれだけ大量かつバリエーション豊かに見られる機会は少なく、その意味で本展は有意義だった。

2013/08/17(土)(小吹隆文)