artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
プレビュー:リサーチ☆パラダイス 潜水と浮上
会期:2013/05/18~2013/06/09
ARTZONE[京都府]
ブブ・ド・ラ・マドレーヌと山田創平が、2010年から大分・別府で地域住民へのインタビューや地域の歴史・文学などをリサーチして制作したインスタレーションを、ARTZONEバージョンとして展示する。ほかには、京都という地域をカメラで調査する「キョート・サーヴェイ・プロジェクト」に参加した、穐山史佳、金田奈津美、早瀬道生らの写真作品、ファッション業界のルールを越えて服づくりを楽しむ市井の人々をリサーチした、中川めぐみの「野生のデザイナー」などを展示。社会に沈潜している諸々をリサーチすことで、無限に広がる創造の原野を開拓する。
2013/04/20(土)(小吹隆文)
KYOTO STUDIO 17のスタジオと88人のアーティスト
会期:2013/04/13~2013/05/19
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]
美大の集積率が高い京都では、複数の若手作家たちがスペースを共有して作品制作を行なう共同スタジオ(アトリエ)が30軒以上あると言われている。本展ではそれらのうち17軒が現場の再現あるいはインスタレーションを行ない、88作家による100点以上の作品が展示された。京都では近年、共同スタジオによるオープンスタジオが活発化し、話題を集めるようになっていた。本展はその動向を踏まえたものであり、時機を逃さず開催したことは評価されるべきである。また、会期中に共同スタジオを巡るツアーが4種類も企画され、展覧会場と現場を結ぶ導線を確保したのも優れたアイデアだった。
2013/04/16(火)(小吹隆文)
KYOTO GRAPHIE international photography festival
会期:2013/04/13~2013/05/06
高台寺塔頭圓徳院、京都文化博物館別館、大西清右衛門美術館、有斐斎弘道館、西行庵、誉田源兵衛 黒蔵、アンスティチュ・フランセ関西、ARTZONE、虎屋京都ギャラリー、ASPHODEL/富美代、二条城二の丸御殿台所、ハイアットリージェンシー京都[京都府]
京都市内の二条城や高台寺といった観光名所をはじめ、町家、美術館、博物館、ギャラリーなど12カ所を会場に行なわれた大規模な写真フェスティバル。出品作家は、細江英公、小野規、高谷史郎、大西清右衛門、ニコラ・ブーヴィエ、ケイト・バリー、マリック・シディベなど多岐にわたり、なかにはクリスチャン・ポラックが収集した幕末・明治の日本を撮った写真という変わり種も。また、サテライトイベントも市内35カ所で同時開催された。しかし、その規模と内容に比して、このフェスティバルの知名度はお世辞にも高いとは言えない。広報の開始が遅く、限定的だったためだ。きちんと広報を行なっていれば、今頃相当な話題となっていたであろう。本当にもったいない限り。来年も開催予定だと聞いているが、次回は広報を劇的に改善すべきだ。
2013/04/12(金)(小吹隆文)
五十嵐英之 Live with Drawing~多角的な視点から~
会期:2013/04/06~2013/05/02
自閉症の少年との間で20年にわたって続けられたドローイングによるコミュニケーションの作品と資料、中西夏之とのコラボレーション、そして自身の新作絵画を出品。点数と展示面積から言えば、自閉症の少年との作品・資料がメインを占めていた。五十嵐の個展はこれまでに何度か見たことがあるが、これほど多様な活動を行なっていたとは。日頃ギャラリーや美術館で見ているアーティストの仕事が、実はその人の一部にすぎないという事実を改めて思い知った。
2013/04/09(火)(小吹隆文)
田附勝 写真展「東北」
会期:2013/04/06~2013/04/21
FOIL GALLERY[京都府]
第37回木村伊兵衛写真賞を受賞した「東北」の作品群に、昨年11月に岩手県釜石市で東日本大震災後初めて行なわれた鹿猟を題材にした「その血はまだ赤いのか」を加えた約40点で構成。「東北」は東北の習俗から滲み出る土俗性やアニミズム的パワーが濃密に感じられる作品だが、対象を真正面から見据えた静的な構図が多い。それに対し「その血は~」は狩猟の現場を捉えており、臨場感や時間の推移を意識しているように思われた。東日本大震災以後、同じ場所で同じものを撮っても以前と同じではいられないのだとしたら、田附の東北への関心は今後どこに向かうのだろう。そんなことを考えながら作品を見た。
2013/04/09(火)(小吹隆文)