artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
國府理 未来のいえ
会期:2013/06/22~2013/07/28
西宮市大谷記念美術館[兵庫県]
自動車、自転車、バイクなどをモチーフにした乗り物型作品や、環境問題に言及した装置型作品で知られる國府理。彼の作品の最大の特徴は実際に可動・機能することで、そのリアリティが作品に確かな存在感を与えている。本展では、自作の乗り物《電動三輪自動車》、転倒した自動車に苔を植えた《虹の高地》、念力(?)でプロペラを動かす《Mental powered Vehcle》、その姿が福島第一原発事故を想起させる《水中エンジン》など、初期から近作までの12点が紹介された。作品数が思いのほか少なかったのは、作品のサイズが大きいこともあるが、新作を制作するために旧作から部品を調達するという、現実的な事情も影響しているようだ。その事実は残念でならないが、やっと美術館で彼の個展が実現したことを素直に喜びたい。
2013/06/25(火)(小吹隆文)
プレビュー:大竹伸朗 展「ニューニュー」「憶速」「女根/めこん」
[香川県]
ニューニュー:2013/07/13~11/04、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
憶速:2013/07/17~09/01、高松市美術館
女根/めこん:2013/07/20~09/01・10/05~11/04、女木島
現在、ヴェネツィア・ビエンナーレの企画展に出品中の大竹伸朗が、7月に香川県で3つの展覧会を同時開催する。ひとつ目は丸亀市猪熊弦一郎現代美術館での個展「ニューニュー」。これは大竹の現在に焦点を合わせ、大型インスタレーションやペインティング等の新作を発表するものだ。二つ目は高松市美術館での個展「憶速」。こちらは「記憶」「移動」「速度」と創作の関連性を切り口に、新作、近作、未発表作を展示する。そして三つ目は「瀬戸内国際芸術祭2013」の女木島で展示されている《女根/めこん》が、さらにバージョンアップして登場する。これだけの規模で大竹の作品が見られるのは、2006年に東京都現代美術館で行なわれた「全景」展以来ではなかろうか。もちろん「瀬戸内現代芸術祭2013」夏会期も同時期に行なわれる。これはもう、真夏の香川県に行くしかないだろう。
2013/06/20(木)(小吹隆文)
プレビュー:堂島リバービエンナーレ2013“Little Water”
会期:2013/07/20~2013/08/18
堂島リバーフォーラム[大阪府]
2009年から始まった同ビエンナーレも、今年で3回目を迎える。初回は南條史生(森美術館館長)、2回目は飯田高誉(青森県立美術館チーフ・キュレーター)をアーティスティック・ディレクターに招いたが、今回その任に当たるのは、台湾出身のキュレーターでテート・ギャラリーのアジア太平洋購入委員会委員を務めるルディ・ツェンだ。彼が打ち出したテーマは「Little Water」。これは会場が大阪市内中心部を流れる土佐堀川沿いにあることと、アジアの多くの文明が川沿いで生まれ発展したことに因むものだ。水の意味を再考し、農業・文学・エコロジー・人間の感性などに占める水の役割を探究することがテーマとなる。出品作家は、ダグ・エイケン、藤本由紀夫、畠山直哉、石田尚志、ウィリアム・ケントリッジ、ヴォルフガング・ライプ、リー・ミンウェイ、杉本博司、チーム・ラボなど28組。この面々を見るだけでも、十分期待できることがおわかりだろう。
写真:ユェン・グワンミン《Disappearing Landscape-Passing II》
2013/06/20(木)(小吹隆文)
プレビュー:ART OSAKA 2013
会期:2013/07/20~2013/07/21
ホテルグランヴィア大阪 26階[大阪府]
今年で11回目を迎える、関西を代表するアートフェア。大阪・梅田のホテルのワンフロアを会場に、国内外の52画廊が出品する。ホテルという日常空間に近い環境で趣向を凝らした展示を行なうことにより、アートを買って楽しむファンをひとりでも増やすことが使命だ。今年は関連企画も充実しており、松谷武判、堀尾貞治、今井祝雄ら具体美術協会ゆかりの作家たちの展示や、フランスの公募展「ジュクレアシオン」から選出された若手フランス人アーティストの展示なども行なわれる。美術館とも画廊とも違うアートの楽しみ方を求めている人に、アートフェアをおすすめしたい。
2013/06/20(木)(小吹隆文)
稲垣元則 427 Drawings
会期:2013/06/15~2013/07/13
ギャラリーノマル[大阪府]
ギャラリーの4つの壁面は、大量のドローイングで埋め尽くされていた。作品のサイズはすべてB4。なかにはかなり日焼けしている作品もある。それもそのはず、本展は稲垣元則が21年前から日々描き続けている膨大な数のドローイングのなかから、427点を選んで展示しているのだ。作品は緩やかに年代順に展示され、同時に類似するイメージ同士が集合するように配置されている。説明文の類はないが、作品を見ていると一作家のイマジネーションの変遷が十分感じ取れる。なかには、稲垣自身はいまさら見せたくない作品も混じっていたが、展覧会の趣旨を尊重し、あえて出品したそうだ。見せ方はシンプルでも、コンセプトを徹底すれば展覧会は面白くなる(もちろん作品の質が保たれていることが前提条件だが)。本展はその見本である。
2013/06/15(土)(小吹隆文)