artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

The Responsive Eye

会期:2013/04/30~2013/05/12

海岸通ギャラリー・CASO[大阪府]

「The Responsive Eye」とは、1965年にニューヨーク近代美術館で開催され、オプアートの存在を知らしめた重要な展覧会だ。それと同名の本展では、関西を中心に活動する5作家を紹介。彼らの作品は、視覚効果のみならず、人間の生理、記憶、関係性、現実と現象の狭間などがテーマとされており、多様な視点から今日的なオプ・アートを提示する試みとなった。出品作家は、君平、ふなだかよ、水城まどか、本郷仁、笹岡敬。なかには本当にオプ・アートの範疇に入れるべきなのか疑問に思う作家もいたが、作品のスケールと完成度、展示の美しさには目を見張るものがあった。質の高い企画展として記憶にとどめたい。

2013/05/04(土)(小吹隆文)

池本喜巳 写真展“素顔の植田正治”

会期:2013/05/02~2013/05/19

Bloom Gallery[大阪府]

鳥取生まれで、砂丘を舞台にした傑作で知られる写真家・植田正治。長年にわたり彼のアシスタントを務めた池本喜巳は、植田の仕事の傍らで植田の素顔や撮影の様子を捉えた写真を数多く残している。本展ではそんな珍しい作品が展示され、池本によるトークも行なわれた。作品のなかには、植田の代表作が別角度から見られるものや、特殊効果の種明かしなど、きわめてレアなものが多い。また、ひとつの展覧会で2人の写真家が交錯するという意味でも大変ユニークな機会だった。

2013/05/02(木)(小吹隆文)

歩く男

会期:2013/04/20~2013/05/11

CAS[大阪府]

主題や対象を外側から眺めるのではなく、作者自身が主体的に作品世界に飛び込むアーティストたちをピックアップした展覧会。出品作家は、林勇気、山村幸則、白石晃一の3名。キュレーターは東京造形大学准教授の藤井匡だ。林はテレビゲームを思わせる横方向のスクロールが印象的な映像作品と、2つの映像の組み合わせからなる新作を発表、山村は神戸牛の子牛に海を見せるべく神戸の市街地を山から海、海から山へと歩き回る近作を出品し、白川はレインボーカラーの洗濯バサミや結束バンド、スーパーボールでビル屋上にインスタレーションを構築した。正直、自分が企画意図を正しく理解できているのかは心もとない。しかし、単体でも見応えがある作家たちが3名も集結したのだから、それだけで十分満足だ。

2013/04/28(日)(小吹隆文)

オオサカがとんがっていた時代─戦後大阪の前衛美術 焼け跡から万博前夜まで─

会期:2013/04/27~2013/07/06

大阪大学総合学術博物館[大阪府]

戦後から1970年大阪万博前夜までの大阪の文化状況を、美術、建築、音楽を中心に振り返る企画展。出品物のうち、資料類は約70件。具体美術協会のものが大半を占めたが、パンリアル美術協会、デモクラート美術家協会、生活美術連盟の資料も少数ながら見ることができた。作品は約40点で、前田藤四郎、池田遊子、早川良雄、瑛久、泉茂、白髪一雄、嶋本昭三、元永定正、村上三郎、田中敦子、ジョルジュ・マチウ、サム・フランシスなどがラインアップされていた。具体美術協会に比して他の団体の割合が少ないのは、現存する資料の豊富さが如実に関係している。このことから、活動記録を残すことの重要性を痛感した。また、本展は大学の博物館で行なわれたが、本来ならこのような企画は地元の美術館がとっくの昔に行なっておくべきものだ。その背景には、美術館の活動が思うに任せない1990年代以降の状況があると思われるが、必要なことが行なわれない現状を嘆かわしく思う。

2013/04/27(土)(小吹隆文)

ニューシティー・アートフェアOSAKA

会期:2013/04/24~2013/04/28

阪急うめだ本店9階 阪急うめだギャラリー[大阪府]

日本の現代アートを紹介するアートフェアとして、ニューヨークや台北で行なわれてきた「ニューシティー・アートフェア」が、国内でも始動。東京、大阪、京都、金沢、札幌の17ギャラリーが出店し、それぞれのおすすめ作家たちの作品を展示・販売した。内容はオーソドックスなれど、交通至便な会場、ギャラリーや作家の質の高さなど、評価すべきイベントだったと思う。しかし、内容に比して反響が小さかったように思えるのはなぜか。その理由は広報の遅さ。ネットでの情報配信が主流となったいま、広報も直前の露出が増えている。しかし、広範な地域や人々に周知させたいなら、もっと早い時期からの広報が必要だ。また、百貨店でアートフェアを行なう以上、外商のお得意様を対象としたプレビューやパーティーなどは行なわれたのだろうか。私は真相を知らないので断言できないが、ちぐはぐな印象が拭えなかった。

2013/04/25(木)(小吹隆文)