artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
プレビュー:作家ドラフト2012 潘逸舟「海の形」展/小沢裕子「ある小話」展
会期:2012/02/04~2012/02/26
京都芸術センター[京都府]
さまざまな分野で活躍する専門家を審査員に招き、若手美術家の発掘・支援を目的に行なう公募プログラム。今回は劇作家・小説家でチェルフィッチュ主宰の岡田利規を審査員に迎え、115件の応募のなかから選ばれた潘逸舟と小沢裕子の作品を展示する。2人の作品はともに「私」というかたちを再発見する試みだが、岡田いわく、「コンセプトが明瞭で説得力があるもの」と、「それがユーモアかどうかさえ果てしなく微妙な、その分魅了されずにはいられないセンス」の並置になるという。対照的な両者の競演から何が生み出されるかに注目が集まる。
2012/01/20(金)(小吹隆文)
プレビュー:ノモトヒロヒト写真展 LIFE
会期:2012/02/03~2012/02/25
TEZUKAYAMA GALLERY[大阪府]
大阪在住の写真家ノモトヒロヒトが、東日本大震災の津波の被災地を取材した2つの新作シリーズを発表する。ひとつは《Facade》で、被災地の建物を真正面から客観的に撮影したもの。もうひとつは《Debris》で、被災地で大量に発生し、素材ごとに分類された瓦礫を撮影し、コンピューター上で繋ぎ合わせたものだ。両シリーズに共通するのは、事象から距離を置き、冷静な観察者に徹した写真家の視線である。震災で失われた人間の営み=LIFEが永遠に記憶されるべきものであることを、ノモトの新作は示している。
2012/01/20(金)(小吹隆文)
プレビュー:解剖と変容:プルニー&ゼマーンコヴァー チェコ、アール・ブリュットの巨匠
会期:2012/02/04~2012/03/25
兵庫県立美術館[兵庫県]
パリのabcdの所蔵品により、2人のチェコ人アール・ブリュット作家を紹介する展覧会。ルボシュ・プルニー(1961〜)は、小学校卒業後さまざまな職を経験し、その傍らで幼い頃から興味があった解剖図を思わせる身体の絵を描くようになった。本展では絵画30点などを紹介する。アンナ・ゼマーンコヴァー(1908〜1986)は、25歳で結婚して4人の子どもを育てた後、子離れによる不安の代償として絵を描き始めた。1960年代前半から最晩年までの60作品を展覧する。また、abcdの創立者ブリュノ・ドゥシャムが2009年に制作した長編ドキュメンタリー映画『天空の赤』上映と、そこに登場する6作家の作品展も。
2012/01/20(金)(小吹隆文)
感じる服 考える服:東京ファッションの現在形
会期:2012/01/14~2012/04/01
神戸ファッション美術館[兵庫県]
アンリアレイジ(森永邦彦)、ミナ ペルホネン(皆川明)、シアタープロダクツ(武内昭、中西妙佳、金森香)など、活躍中の10組のデザイナーの仕事を通じて日本のファッションを可能性を探る展覧会。マネキンに服を着せたり吊るしたりというファッション展にありがちな演出を控え、エッセンスを抽出することに重きを置いた展示が光っていた。建築家の中村竜治が展示空間を担当したことも影響しているのであろう。こういう攻めの姿勢が伝わる展覧会はおおいに歓迎。ファッション美術館の存在意義が伝わる展覧会だった。
2012/01/15(日)(小吹隆文)
松谷武判 展 円環を越えて
会期:2012/01/07~2012/01/22
LADS GALLERY[大阪府]
画廊の2室のうち、手前の大部屋では大作を中心とした展示が行なわれ、奥の小部屋では主に小品が並べられた。見応えがあったのはやはり前者。《流れ Mercuri Paris》、《円 26-11-2009》、《流動 LADS》といった大作が素晴らしかった。また、彼にしては珍しい星空のイメージを描いた作品もあった。聞けば、大作の一部は昨年に神奈川県立近代美術館で行なわれた個展の出品作とのこと。同展を見逃していただけに、嬉しさもひとしおだ。
2012/01/12(木)(小吹隆文)