artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
花塚愛 展
会期:2012/01/07~2012/01/22
ギャラリー器館[京都府]
花塚愛は過剰装飾のデコラティブな陶器を制作する作家だ。作品は、紐作りで成形したボディに造形したピースを貼り重ねていく方法で制作されている。目玉、鱗、植物、縄目模様、蛙の卵のような粒々などで埋め尽くされ、カラフルに着色された表面からは、匂い立つようなエロティシズムや呪術的なパワーが感じられる。アール・ブリュットとの類似性を指摘する人もいるのではなかろうか。しかし、実物を見れば、彼女の作品とアール・ブリュットの違いは一目瞭然だ。装飾の造作は細部まで隙がなく、着色にも緻密な計算が感じられる。むしろ日本人特有の細密工芸への偏愛という観点から評価すべきかもしれない。
2012/01/10(火)(小吹隆文)
プレビュー:京都・京町家ステイ・アートプロジェクト vol.1─アートと暮らす出会う京町家2012─「アート町家作品展」
会期:2012/01/21~2012/01/27
和泉屋町町家、筋屋町町家、石不動之町町家、美濃屋町町家[京都府]
京都の四条河原町に程近い4軒の町家を舞台に、地元ゆかりの4作家がそれぞれの表現方法で空間自体をつくり上げる。4名の作家とは、陶芸の近藤高弘、映像の大西宏志、日本画の畠中光享、染色の福本潮子である。また本展の後、会場は「町家ステイ」としてそのまま宿泊施設となる。京都では町家での展覧会自体は決して珍しくないが、それがリノベーションや宿泊という事業と一体化して展開されるのは珍しい。極めて地域的かつ可能性が感じられる試みだけに要注目である。
2012/01/10(火)(小吹隆文)
プレビュー:LOVE POP! キース・ヘリング展─アートはみんなのもの─
会期:2012/10/21~2012/02/26
伊丹市立美術館[兵庫県]
本展のリリースで、久々にキース・ヘリングのことを思い出した。彼が日本で話題になったのは1980年代半ばのこと。当時、美術とは無縁だった私にも、雑誌やテレビの記事を通して彼の活躍は伝わっていた(テレビ番組は『11PM』で、今野雄二さんの語りだったと思う)。しかし、いまの日本で彼の名が挙がることはことは滅多にない。なぜ今彼の個展なのか? その辺りを考えながら本展を見たいと思う。
画像=《Best Buddies》1990年、シルクスクリーン
� Keith Haring Foundation、中村キース・ヘリング美術館蔵
2012/01/10(火)(小吹隆文)
窓の表面 スロー&テンス アトモスフィア2011
会期:2011/12/15~2012/01/29
雅景錐[京都府]
写真家でクリエイティブ・ディレクターのアマノ雅景が、オルタナティブスペース「雅景錐」を開設。今年3月の正式オープンを前にプレ企画展を開催した。その内容は、アマノ、有元伸也、ニック・ハネス、平久弥、ヴァンサン・フルニエの5組による写真&絵画展で、世界の諸相を、作品という窓を通して覗き込むというものだ。ニューヨークの同時多発テロ現場近くで、行方不明者を探す張り紙を見つめる人々、旧共産主義国家の廃れた施設、現実離れした宇宙開発基地などを捉えた写真などが並んでいる。本展はアマノが2009年から10年計画で取り組んでいるプロジェクトの第2弾であり、2月には規模を拡大して大阪のフランダースセンターにも巡回される。京都ではここ数年、さまざまなタイプのオルタナティブスペースが産声を上げており、新たなアートシーン形成の可能性を秘めている。雅景錐もそのひとつとして要注目だ。
2012/01/07(土)(小吹隆文)
風景の逆照射
会期:2012/01/06~2012/01/21
京都精華大学ギャラリーフロール[京都府]
風景(自然、環境、世界などの総称)と人間の相関関係を問い直し、現在のわれわれに根付いた西洋近代的な思考そのものを見直そうという、壮大なテーマに基づいた企画展。テーマがあまりにも巨大なのと、「風景」という言葉の扱いに戸惑ったのだが、美術家、建築家、俳人、科学者、哲学者が参加し、全員が作品という形態で発表を行なったのは興味深かった。また、本展の図録では個々の文章だけではなく、クロスジャンルの往復書簡も掲載されており、企画意図を知るうえで非常に役立った。出品者は、柏原えつとむ、木下長宏、杉浦圭祐、坪見博之、森川穣、林ケイタ、濱田陽、安喜万佐子、山中信夫、RADの10組。
2012/01/07(土)(小吹隆文)