artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

三瀬夏之介 個展 だから僕はこの一瞬を永遠のものにしてみせる

会期:2011/02/04~2011/02/26

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]

1階の@KCUA1では、全幅20メートルにも及ぶ《だから僕はこの一瞬を永遠のものにしてみせる》や、サイズ可変の超大作《奇景》をはじめとする作品6点と資料が、2階の@KCUA2では、水墨画21点が展示された。関西での彼の個展としては、過去最大の規模であろう。展示を見終えて感じたのは、受容体としてのアーティストの姿。自身の記憶や経験、環境、社会など、感知するあらゆるものを呑み込み、作品へと昇華させていく。果てしない混沌の先にどんな世界が現われるのか、あるいはゴールなど存在せず、もがき続ける過程そのものに意味があるのか。いずれにせよ、三瀬への関心がますます高まったことだけは確かだ。

2011/02/23(水)(小吹隆文)

佐竹龍蔵 展

会期:2011/02/22~2011/02/27

アートスペース虹[京都府]

薄く溶いた岩の絵具を点描で積層させた、独自の画風で知られる佐竹龍蔵。以前は自画像を描いていたが、新作ではクローズアップの女性像へと画題が変わった。光を閉じ込めたかのような画肌の魅力は以前と同じだが、なぜ女性像を選んだのか、その理由はよくわからなかった。主題の必然性について、納得できるまで聞いておくべきだった。反省。

2011/02/23(水)(小吹隆文)

プレビュー:パウル・クレー展─おわらないアトリエ

会期:2011/03/12~2011/05/15

京都国立近代美術館[京都府]

パウル・クレーは、生涯に制作した作品約9,600点をリストアップし、それらの制作方法を正確に記述していた。同時に「特別クラス」と名付けた重要作品を手元に置き、常にそれらを反芻しながら新たな制作に取り組んでいた。本展では、「特別クラス」の作品を含む約170点により、彼の作品がどのようなプロセスを経て制作されたのかを明らかにする。過去に開催されたどのクレー展よりも、制作の秘密に踏み込んだ内容となりそうだ。

2011/02/20(日)(小吹隆文)

プレビュー:松井沙都子 展 PHANTOM HIDES ON THE WALL

会期:2011/03/08~2011/03/27

neutron kyoto[京都府]

既視感のあるモチーフの断片が繋がって、見る者をもどかしさに満ちた不安定な感覚へと導く松井沙都子の作品。その作風は、パソコンを用いた編集作業とカッティングシートでの出力という手法を確立することで、一層磨きがかかってきた。これ見よがしな演出は一切ないのに、割り切れない居心地の悪さを感じさせる、なんとも不思議な感触を持つ世界は彼女ならではのものだ。

2011/02/20(日)(小吹隆文)

プレビュー:風穴 もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから

会期:2011/03/08~2011/06/05

国立国際美術館[大阪府]

1960年代、70年代とは異なる文脈、方法論でコンセプチュアルな傾向を持つアーティストたちが、アジアから現われているのではないか。そんな文脈を軸に、現在活躍中のアーティストを紹介する。出品者は、プレイ、木村友紀、contact Gonzo、島袋道浩、ヤン・ヘギュ、アラヤー・ラートチャムルーンスックら9組。個々の作家がどのような作品を見せてくれるのかはもちろん、国籍、世代、ジャンルなどを異にする作家たちをどうまとめるのか、美術館のキュレーションにも注目したい。

2011/02/20(日)(小吹隆文)