artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
安喜万佐子 展 Absence of Light──歩行と逆光
会期:2011/04/05~2011/04/16
ギャラリー16[京都府]
瞼を閉じて暗闇を見つめると、不可思議な光や模様が眼前に映る。見ようとすればするほど捉え難いその情景。安喜万佐子の作品を見ていると、そんな体験を思い出さずにいられない。基本的に風景をもとに描いている安喜だが、彼女の狙いは再現的な情景描写ではない。記憶と現実を往来し、残像とでもいうべきものをなんとかして画面に定着させようと格闘しているのだ。近年は金箔を用いてソラリゼーションのような効果を狙った作品も発表。着実に自己の世界を深化させている。
2011/04/05(火)(小吹隆文)
伊藤文化財団設立30年記念 寄贈作品の精華
会期:2011/03/26~2011/07/03
兵庫県立美術館[兵庫県]
1981年の設立以来、兵庫県立美術館に対し、作品や図書の寄贈、展覧会、コンサートへの援助を続けてきた伊藤文化財団。その設立30年を記念して、代表的な寄贈作品からなる展示が行なわれた。絵画、素描、立体など約160点が展示されたが(会期中に展示替えあり)、大作ばかりでなく、安井曾太郎と小出楢重の素描集など小品にも見るべきものが多かった。企業や富豪が財団を設立して地元文化を支えるのは、米国ではごく一般的だが、残念ながら日本では根付いていない。この国内では稀有な関係を顕彰する意味で、たとえ常設展示の一部とはいえ、本展には大きな意味があったと思う。
2011/03/29(火)(小吹隆文)
安慶田渉 渦巻く思考と溶ける彫刻
会期:2011/03/16~2011/04/02
MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w[京都府]
鉄線を渦巻き状に加工したピースからなる巨大な人体像、球体が溶解したかのような石彫、石彫と同様の形態をした樹脂製の小品などが大量に並び、さらには制作に用いる道具類も演出として展示されていた。広大なスペースを持つ会場を相手に、まるで自身の全ポテンシャルを注ぎ込んだかのような情熱的な個展だった。これが初個展だと聞き2度驚いたが、だからこそここまでやれたのかも。このまま燃え尽き症候群に陥らないことを切に願う。
2011/03/26(土)(小吹隆文)
モトコー ART train
会期:2011/03/12~2011/03/27
元町高架通商店街[兵庫県]
JR元町駅から神戸駅にかけての高架下にある元町高架通商店街(通称モトコー)の空き店舗を舞台に、グループ展が開催された。出品作家は、水垣尚+岡本和喜、國府理、森田麻祐子、国谷隆志、WAKKUN、松井コーヘー、内藤絹子、早川季良の8組。この場所は今年秋に行なわれる「神戸ビエンナーレ2011」の会場にも選定されており、本展にはその予行演習的な意味合いもあるのだろうか。展示スタイルやジャンルはさまざまだったが、高架下ならではの暗がりを生かした国谷隆志、力士の顔を描いたタブローに胴体部分を壁画でジョイントさせた松井コーヘーなど、場の特性に応じた展示には好感が持てた。昨今は空き店舗が目立つモトコーだけに、いっそこのまま美術展会場ないしはアトリエとして大々的に売り込んでみるのも悪くないのでは。
2011/03/24(木)(小吹隆文)
プレビュー:VISUAL SENSATION vol.4
会期:2011/04/03~2011/04/23
Gallery Den mym[京都府]
1995年から2009年まで大阪市内で活動し、2010年に京都府南山城村へ移転したGallery Den(移転後にGallery Den mymと改称)。その後、住居でもある古民家をコツコツ改修していたが、ついに本格始動に至り開催されるのがこの「VISUAL SENSATION」だ。vol.4とあるとおり、大阪時代に3度開催された企画展で、今回も画廊オーナーの目に適った若手作家6名が紹介される。都会のビルの片隅とは違う、大自然の真っただなかで、若き6つの個性がどのような煌めきを見せるのかに注目したい。
2011/03/20(日)(小吹隆文)