artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
大畑公成 展
会期:2011/03/08~2011/03/13
gallery morning[京都府]
京都造形大を卒業後、長らくウィーン応用美術大学で学び、昨年に帰国した大畑。その作品は、密林を思わせる密度の濃い空間に人や動物を描した、鮮やかで生命力に満ち溢れたものだ。30代までじっくりと研鑽を積んできただけに、まだまだ沢山の引き出しを持っていそう。今後の活躍が楽しみだ。
2011/03/08(火)(小吹隆文)
風穴 もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから
会期:2011/03/08~2011/06/05
国立国際美術館[大阪府]
西洋美術史の文脈とは異なる視点から、現代の日本やアジアで活動するコンセプチュアルな作風のアーティストたちをピックアップした展覧会。1960年代から関西を拠点に活動しているプレイ、ダンスとも喧嘩ともつかないパフォーマンスで知られるcontact Gonzoをはじめ、島袋道浩、木村友紀、ヤン・ヘギュ、ディン・Q・レーら9組の作家が紹介された。どの作品にも、かつてのコンセプチュアル・アートにありがちな上から目線の難解さや近寄り難さは感じられない。むしろわれわれと同じ目線、同じ言葉で語りかけてくるので、スムーズに作品の世界へと入っていけるのだ。担当学芸員は本展を読み解くキーワードとして、スピードの遅さ、ローカリティー、日常との緩やかなつながり、を挙げていた。とても風変わりな企画展だが、本展のような機会が増えれば、現代アート展は今までよりずっと身近なものになるだろう。
2011/03/07(月)(小吹隆文)
玉本奈々 個展
会期:2011/03/05~2011/03/16
ギャラリー島田[兵庫県]
キャンバスや板の上に、布を張り、糸を縫いつけ、ペインティングを施すなどした平面作品で知られる玉本奈々。その作品は、美醜を超えて人間の生理に訴える生々しさに特徴がある。しかし、本展における彼女の作品は、過去に何度も見たことがある旧作が多数含まれているにもかかわらず、なぜか今までよりも洗練されていた。会場との相性がよほど良いのだろうか。空間により、これほど作品の印象が変わるとは驚きだ。それでいて作品本来の魅力は失われず、より広い層に受け入れられる展示が行なわれていた。私が今までに見た彼女の個展のうち、最上であった。
2011/03/05(土)(小吹隆文)
橋本雅也 殻のない種から
会期:2011/02/05~2011/03/13
主水書房[大阪府]
鹿の骨を削ってつくられた花や植物のオブジェが、会場に点在していた。どれも驚くべき繊細さで、思わずため息がこぼれる。技術的にもハイレベルで、独学でマスターしたとは到底思えない。素材の鹿の骨は、以前は山で拾っていたが、今回は彼自身が狩猟に随伴し、制作のために1頭を仕留めたとのこと。解体と下処理も自分で行ない、その過程で残った肉や出汁は食事用にストックしているそうだ。今まではアクセサリーをつくっており、彫刻はこれが初制作。個展も今回が初めてだという。いやはや、凄い人が埋もれていたものだ。
2011/02/27(日)(小吹隆文)
現代芸術創造事業 Breaker Project 絶滅危惧・風景
会期:2011/02/26~2011/03/21
大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室[大阪府]
通天閣で知られる大阪・新世界を中心とする下町エリアで、2003年から続けられている「ブレーカー・プロジェクト」。今回は、初めて本拠地を離れて心斎橋の美術館で開催された。地元を離れることで本来の持ち味が薄れるのを危惧したが、今回のゲストである西尾美也と下道基行が良質な展示を行ない、過去の参加者であるトーチカ、パラモデル、藤浩志の作品も見応えがあった。ちなみに、西尾の作品は、子ども時代の写真と同じ場所・服装で改めて記念写真を撮る《家族の制服[新世界編]》と、かつて新世界で行なわれていた仮装行列を再現する《新世界・節分仮装行列》の2点。下道は、市井の人々が芸術意識を持たずにつくった造形物を取材・紹介する《Sunday Creator》だった。
2011/02/27(日)(小吹隆文)