artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

森村泰昌 なにものかへのレクイエム─戦場の頂上の芸術

会期:2011/01/18~2011/04/10

兵庫県立美術館[兵庫県]

東京、愛知、広島を巡回し美術ファンの注目を集めてきた本展が、遂に(やっと)関西で開催。待たされた分だけ期待は膨らんだが、森村の作品はこちらが勝手に上げたハードルを楽々と超えてきた。「時代」という得体の知れないものに真正面から向き合って、堂々たる見解を示したその手腕に感服! また、映像作品の比重が高まっていることから、今後の森村の展開へも思いを馳せることができた。全43点の作品のうち、私が特に注目したのは、《烈火の季節/なにものかへのレクイエム(MISHIMA)》と、《海の幸・戦場の頂上の旗》の2作品。共に映像で、これまでの森村では考えられないほどメッセージ性の強い作品だ。この2点を見られただけでも、本展は価値があると思う。

2011/01/22(土)(小吹隆文)

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プレビュー:山本太郎 展「古典─the classics─チェリー」

会期:2011/02/12~2011/03/19

イムラアートギャラリー[京都府]

関西では3年ぶりとなる山本の個展。昨年に謡曲をテーマに制作した大作《桜川》と《隅田川》を展示するほか、源氏物語をベースにした《花下遊楽図(仮)》をはじめとする新作の小品も数点出品する。本展は昨年に名古屋、東京、金沢を巡回した展覧会シリーズの一環だが、上記の新作が含まれている分だけ特別感があり、関西の観客のモチベーションが上がりそうだ。

2011/01/20(木)(小吹隆文)

プレビュー:三瀬夏之介「だから僕はこの一瞬を永遠のものにしてみせる」

会期:2011/02/04~2011/02/26

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]

若手日本画家のなかでも飛び抜けた存在感を放っている三瀬が、母校のギャラリーで個展を開催する。展示は2部構成で、第1部の「だから僕はこの一瞬を永遠のものにしてみせる」では、幅20メートル以上の大作を中心に、第2部「水墨考」では、近年の旺盛な活動意欲が見てとれる作品群が出品される予定。ますますスケールアップしているであろう彼の作品を楽しみにしている。

2011/01/20(木)(小吹隆文)

大野浩志「在り方・現れ方」

会期:2011/01/15~2011/02/05

CAS[大阪府]

大野の作品は、木の板や棒などに焼きを入れたり、一色の絵具を塗るという、シンプルな方法で制作されている。シンプルと言っても決してイージーではない。《since》と題されたシリーズでは、表現性を排除して均一に塗る行為を、制作年から現在までずっと継続しているのだ。長年塗り重ねられた表面には、盛り上がり、波打ち、ストライプなど、人為を超えた表情が現われる。そのたたずまいは、まさに本展のタイトル通り「在り方・現れ方」と呼ぶしかないものだ。地元大阪で6年ぶりに開催された個展では、《since 1997〈無限柱〉》が出品された。そして壁面には、現在まで継続されている全シリーズの写真資料も。聞けば、昨年香川県のソフトマシーン美術館で行なわれた個展で《since》シリーズの全作品が展示されたとのこと。その情報を知らなかったことが悔やまれる。次に同様のチャンスがあれば是非とも見に行きたい。

2011/01/17(月)(小吹隆文)

京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程展 第2期

会期:2011/01/15~2011/01/30

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]

年末年始に行なわれた「第1期」に続く展覧会。第2期は、五十嵐英之、柳澤顕、馬場晋作が参加した。五十嵐は、紙(キャンバス?)上の絵具の飛沫をフォトリアリズム的に表現した油彩画と、風景をピンボケや逆光で描いた油彩画の大作計8点を出品。柳澤は、油彩、プリント、カッティングシートを用いた複雑な画面構成の平面作品5点と、壁面まで浸食したカッティングシートにより、平面表現のインスタレーションをつくり上げた。馬場は、ステンレスの支持体に油彩やインクでイメージを描いた作品17点だった。3人とも非常に見応えがあり、彼らの過去の発表と比べても最上レベルの展示ではなかろうか。出かけた甲斐ありだった。

2011/01/15(土)(小吹隆文)