artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
プレビュー:新野洋 展「いきとし“いきもの”」
会期:2011/04/09~2011/05/07
YOD Gallery[大阪府]
新野は、自然界には存在しない空想の“いきもの”を樹脂で制作している。複数の節足動物の部位や植物の部分などを組み合わせた造形は、自然界に存在する美しいものを「ただただ自らの手で表現したい」というシンプルな衝動に基づくものだ。今回は、日本の生物を題材に制作した作品群をインスタレーションのスタイルで展示する。
2011/03/20(日)(小吹隆文)
プレビュー:山口和也 写真展「プロボクサー小松則幸」
会期:2011/04/06~2011/04/13
HEP HALL[大阪府]
約6年間にわたってプロボクサー小松則幸を撮り続けたドキュメント写真を展示。リング上での拳によるコミュニケーション、試合前日に対戦相手と顔合わせをする時の空気感、控室での表情、プライベートショットなど、ひとりのボクサーの姿を赤裸々に捉えた作品が並ぶ。ちなみに小松は、亀田大毅戦を1カ月後に控えた2009年4月13日に滋賀県の滝壺で亡くなった。「チャンピオンになったら写真集を出す」という約束は果たせなかったが、ボクサーと写真家の6年間の交流は、展覧会というかたちで結実する。
2011/03/20(日)(小吹隆文)
大黒貴之 彫刻展~渡独以前 2000-2011~
会期:2011/03/20~2011/03/21
大黒邸[滋賀県]
木材、和紙、荒縄を用いた木彫作品を制作する大黒貴之が、滋賀県近江八幡市の実家で個展を行なった。この春からドイツに渡る彼にとって、離日直前の挨拶ともいうべき展覧会だ。田畑を持つ実家の周囲は、典型的な田園地帯。そして木造日本建築の母屋には、立派な仏間も備わっている。なるほど、彼の作品のルーツは生まれ育ったこの環境にあったのか。作品は、母屋と2軒の離れに10点を展示。同時に、彼の制作風景や考え方が伝わるドキュメント映像の上映も行なわれた。
2011/03/19(土)(小吹隆文)
流麻二果 展
会期:2011/03/11~2011/03/25
GALERIE Petit Bois[大阪府]
彼女の作品は具体的な情景をもとに描かれているが、一見したところは純然たる抽象画だ。色彩が流動しながら重なり合い、瑞々しい交響を奏でている。1点ものの大作もよいが、複数の小品によるアンサンブルも素晴らしい。過去に京都のアサヒビール大山崎山荘美術館での企画展と、大阪のPANTALOONでの個展で彼女の作品を見たことがあるが、オーソドックスな展示に徹した今回が、私にとっては最も印象深い。
2011/03/14(月)(小吹隆文)
パウル・クレー おわらないアトリエ
会期:2011/03/12~2011/05/15
京都国立近代美術館[京都府]
クレーの個展は今までに何度も開催されているが、本展は過去のものとは趣を異にする。いわゆる名品展ではなく、表現のエッセンスに迫ることを第一義としているからだ。それゆえ、「油彩転写」「切断」「再構成」など技法別の分類が行なわれたり、「特別クラス」と呼ばれアトリエに留め置かれた作品や、表裏両面に描かれた作品など、彼がどのような思考に基づいて制作を行なったかが窺える作品構成がとられた。また、展示も凝っていて、あえて空間に対して斜めに壁を配したり、引きのない路地のような空間が多数つくられていた。これは、観客を観賞から思考へと誘うための仕掛けであり、本展の大きな特徴となっている。
2011/03/11(金)(小吹隆文)