artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

小島徳朗 展 tableau / sculpture

会期:2011/04/19~2011/05/01

アートライフみつはし[京都府]

絵画と彫刻を出品。絵画は、漢字の部首や平仮名の一部を思わせる線や点が画面に点在する抽象的なもので、見ようによっては風景画や書の一種として観賞することもできる。彫刻は、細い鉄線を組み合わせており、やはり文字をモチーフにしているかのようだ。タイトルにも特徴があり、熟語ではない2文字または3文字を組み合わせた独特のもの。造形と直接的な関連はないが、見ている方が自然と両者を結びつけて想像をたくましくする。絵画、彫刻、タイトルの響き合いが心地よいハーモニーを奏でる個展だった。

2011/04/19(火)(小吹隆文)

小谷真輔「無重力サーキット」

会期:2011/04/12~2011/05/07

MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w[京都府]

自身の内面に宿る妄想的世界を描いてきた小谷だが、元々は映像作品でキャリアをスタートさせたのだという。ということは、映像とインスタレーションと絵画をミックスした本展の構成は、彼にとってバック・トゥ・ルーツ的な意味合いがあるのかもしれない。映像は、カラフルな影絵のような作品と、飼い猫を撮った2点。その周囲に映像の世界から抜け出してきたようなインスタレーションが施され、壁面には絵画が展示されている。室内の照明は落とされており、絵画は備え付けのペンライトを使って見ることになる。また、ペンライトでインスタレーションを照らすと映像作品と相似のシチュエーションを再現することもできる。ある意味、本展は、彼の絵画世界を3次元に拡張したものと言える。身体ごと作家の脳内にダイブしたような気分になれる、ユニークな個展だった。

2011/04/12(火)(小吹隆文)

没後150年 歌川国芳 展

会期:2011/04/12~2011/06/05

大阪市立美術館[大阪府]

没後150年を記念し、420点が揃う大展覧会ということで、さすがに見応えがあった。過去の国芳展ではさほど大きく扱われてこなかった美人画も十分な点数があったし、初公開作品、版下、同じ版を流用した作品など珍しいものも沢山見られた。また作品のコンディションが良好なのも満足度を高めた。しかし、残念な点がひとつある。点数が多いため、一度にすべてを展示できず、前半と後半でほとんどの作品が入れ替えられるのだ。熱心なファンなら二度通うのも構わないだろうが、一般的にはどうだろう。二度行けば大人で計2,600円という、美術展としては高額な出費になってしまう。今後大規模な展示替えを行なう展覧会の主催者は、チケットの半券を提示すれば2度目は半額になるとか、あらかじめ2枚綴りの割引チケットを発売するなどのサービスを是非検討してほしい。

2011/04/11(月)(小吹隆文)

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新野洋 展「いきとし“いきもの”」

会期:2011/04/09~2011/05/07

YOD Gallery[大阪府]

新野は、自宅近辺の山中で四季の植物を採集し、それらからインスパイアされた架空の昆虫を制作している。植物から型を取り、成形したシリコンを組み合わせた作品は、まるで植物の精のよう。今までに見たどの作品とも似ておらず、まったく新たな体験に軽い興奮を覚えた。また、採集した植物を春夏秋冬に分類し、そのなかに擬態のように作品を紛れ込ませる展示方法も秀逸だった。四季の移ろいに合わせて制作されるため、点数が限られるのが難点だが、それを補って余りある魅力的な作品だった。

2011/04/09(土)(小吹隆文)

梅田哲也 個展『はじめは動いていた』

会期:2011/04/02~2011/04/24

VOXビル(art project room ART ZONE)[京都府]

ありふれた道具や雑貨を組み合わせて、可動型のオブジェを制作する梅田哲也。しかも彼の作品は、「風が吹けば桶屋が儲かる」的にひとつの動きが他に次々と波及する点に特徴がある。そういう意味では、ビル一棟を使って大規模な仕掛けを行なうのは、彼ならではの試みと言えるだろう。実際、迷路のような空間を縦横に行き来するのは楽しい体験だった。ただ、作品の連動性という点では少々不満も。全体にもっと有機的な統一性を持たせることができれば、さらにワンランク上の感動を与えられただろうに。

2011/04/05(火)(小吹隆文)