artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

Konohana's Eye ♯4 小出麻代 展「空のうえ 水のした 七色のはじまり」

会期:2014/06/06~2014/07/20

the three konohana[大阪府]

筆者にとって小出麻代の作品といえば、昨年に京都のLABORATORYで披露したインスタレーションが思い浮かぶ。鏡、紙、版画、鉛筆、待ち針などの、薄い、軽い、小さいものを、カラフルな糸や電気コードでつなぐことにより、繊細かつ起伏に富んだ空間をつくり上げたのだ。本展の新作でもその傾向は変わらず、構成力の高さも相変わらずであった。そして、各要素を繋ぐ糸の存在が、彼女の表現の核であることを実感した。また本展では、青写真の版画作品という新たな要素も加わっていた。これは、昨年に彼女が英国・マンチェスターに短期留学した際に身につけた新たな表現方法だ。単体でも魅力のある表現なので、今後の展開が期待できる。

2014/06/07(土)(小吹隆文)

西野康造 展「Space Memory」

会期:2014/06/07~2014/06/28

ARTCOURT Gallery[大阪府]

昨秋に、ニューヨークの4WTC(4 World Trade Center)のうち、槇文彦が設計した棟に直径約30メートルに及ぶ大型彫刻《Sky Memory》を設置した西野康造。本展は彼の初の作品集出版を記念して開催され、全長約28メートルに及ぶ《Space Memory》と、直径約6メートルのリング型作品(タイトルは同名)、4WTCの作品模型と設置工事を記録した映像などを展示した。巨大な《Space Memory》が、キャンティ・レバー方式により1点だけで支えられているのはマジカルな光景で、その構造美は圧巻と言うしかない。しかも本作は、空調の風に影響されてかすかに揺れるほど繊細なのだ。まさか画廊でこれほどの作品を見られるとは思わなかった。美術ファンはもちろん、建築関係者にも大きなインパクトを与えたのではなかろうか。

2014/06/06(金)(小吹隆文)

写真分離派展「日本」

会期:2014/05/23~2014/06/13

京都造形芸術大学 ギャルリ・オーブ[京都府]

写真家の鈴木理策、鷹野隆大、松江泰治と、批評家の清水穣、倉石信乃により、2010年末に結成された「写真分離派」。過去に東京と名古屋で活動を行なった彼らが、3度目の(そして最後の)展覧会を京都で行なった。今回のキーワードは「日本」。1964年の東京オリンピックを機に大きく変貌した東京の街並みをとらえた写真家・春日昌昭をゲストに招くことで、2度目のオリンピック開催を控え今後大きく変貌を遂げることが予想される日本と、デジタルカメラ以後の写真史をパラレルに扱う、読み解き甲斐のある展示空間が創出された。残念だったのは、事前の告知が十分とは言えず、本展の存在が周知されていなかったこと。筆者も偶然にその存在を知り、慌てて出かけた。

2014/05/27(火)(小吹隆文)

ノスタルジー&ファンタジー──現代美術の想像力とその源泉

会期:2014/05/27~2014/09/15

国立国際美術館[大阪府]

ノスタルジー(郷愁)とファンタジー(幻想)をキーワードに、横尾忠則、北辻良央、柄澤齊、棚田康司、淀川テクニック、須藤由希子、山本桂輔、小西紀行、小橋陽介、橋爪彩の仕事を紹介。展示形式は、作家ごとに空間を区切る個展の集合体だった。考えてみれば、本展のキーワードはあらゆる美術家が大なり小なり持つ要素であり、キュレーター次第でいかようにもアレンジできる便利な言葉と言える。展示方法も作家同士の世界が交わることがなく、展覧会全体よりも個々の展示に関心が向いたのは仕方ないだろう。実際、作家たちは力の入った展示を見せてくれた。特に、山本桂輔、小橋陽介(画像)、淀川テクニックはパワー全開で圧倒的された。彼らとは対照的に、あえて点数を絞り、密度の濃い空間をつくり上げた棚田康司も印象に残った。

2014/05/26(月)(小吹隆文)

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菅かおる「アクロス・ザ・ユニバース」

会期:2014/05/20~2014/06/01

Gallery PARC[京都府]

ギャラリーとしては比較的広大な空間には、16曲の屏風仕立ての作品がインスタレーション的に配置されていた。作品は表と裏にあるので計32枚の絵画から成る大作である。片面は夜もしくは闇のなかで展開されるミクロな生命の営みを描いているようであり、森林の情景にも見える。もう片面は透明感のある薄い赤と緑などを基調とした抽象的な画面やモノトーンの石庭を思わせる世界で、光に満ちた清澄な空間が描き出されていた。本作は、その規模と構成力において彼女の過去最大・最高の作品である。一作家のブレークスルーの瞬間を見られたことをうれしく思う。

2014/05/22(木)(小吹隆文)