artscapeレビュー

小吹隆文のレビュー/プレビュー

プレビュー:林勇気 展「光の庭ともうひとつの家」

会期:2014/06/21~2014/07/13

神戸アートビレッジセンター[兵庫県]

自身で撮影した画像やインターネットを検索して集めた膨大な量の画像データを、切り抜き重ね合わせるなどしたアニメーション作品で知られる林勇気。本展で発表される新作《光の庭ともうひとつの家》では、一般から募集したアンケートをもとに林と建築家のNO ARCHITECTSが回答者(=施主)の理想の家を設計。林が画像データを用いて「光の庭」に小さな「もうひとつの家」を建築する。施主には500円で「もうひとつの家」を購入してもらい、「光の庭」の住人になってもらう。これはインターネットゲームでアイテムやコスチュームを購入する行為と同じであり、仮想空間と現実社会の関係性を問うことが本展のテーマである。

2014/05/20(火)(小吹隆文)

プレビュー:国際現代アート展なら2014:後期特別展 美の最前線・現代アートなら~素材と知の魔術~

会期:2014/06/14~2014/07/21

奈良県立美術館[奈良県]

奈良出身あるいは在住の7人の美術家──菊池孝、絹谷幸太、下谷千尋、竹股桂、ふじい忠一、森口ゆたか、三瀬夏之介──による現代美術展。古代・古典美術へのオマージュや、素材との交感がテーマに掲げられており、絵画、立体、映像など幅広い表現が見られる。会場の奈良県立美術館は近世・近代の企画展が主流で、現代美術が取り上げられるのは珍しい。しかし新たなファン層を開拓するためには、現代美術展を増やしていく必要があるだろう。本展の成否は今後の同館に少なからず影響するに違いない。

2014/05/20(火)(小吹隆文)

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プレビュー:杉浦康益 展 陶の博物誌─自然をつくる─

会期:2014/06/07~2014/08/03

西宮市大谷記念美術館[兵庫県]

植物をルーペで詳細に観察し、その内部構造に至るまで精緻に再現した《陶の博物誌》などで知られる陶芸家・杉浦康益。関西で彼の作品をまとめて見られる機会がやってきた。本展では、会場の西宮市大谷記念美術館が所蔵する《陶の博物誌》シリーズ27点を中心に、初期を代表する《陶の岩》、1994年から始めた《陶の木立》などのインスタレーションを展示し、杉浦の業績を紹介する。陶オブジェに興味がある人は見逃せない機会だ。

2014/05/20(火)(小吹隆文)

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プライベート・ユートピア ここだけの場所 ブリティッシュ・カウンシル・コレクションにみる英国現代美術の現在

会期:2014/04/12~2014/05/25

伊丹市立美術館[兵庫県]

本展は、ブリティッシュ・カウンシルが所蔵する英国現代美術コレクションを紹介する展覧会だ。チャップマン兄弟、コーネリア・パーカー、サイモン・スターリング、ライアン・ガンダー、グレイソン・ペリー、サラ・ルーカスなど1990年代以降に登場した作家が目白押しで、とても贅沢なラインアップだった。筆者自身が惹かれたのは、マーティン・ボイスの作品だ。彼はモダン・デザインの定番であるアルネ・ヤコブセンの椅子を解体してモビールを制作し、モダニズムの現状を皮肉った。しかし、本展の作品は彼のように読み解きやすいものばかりではない。英国の文化や社会的背景を前提にした表現が少なからずあり、ハードルの高さを感じたのも事実である。それでも自国の現代文化を積極的に海外に広めていく姿勢には共感を覚える。日本政府も同様の試みを戦略的に行なってほしい。

2014/05/18(日)(小吹隆文)

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冬耳 展「ミドリの光、アイイロの森」

会期:2014/05/09~2014/05/21

gallery near[京都府]

絵具を原色で用い、輪郭線のない色面だけで構成されたカラフルな絵画を制作する冬耳。その絵は一見ポップで、グラフィティー風でもあるが、真のテーマは自然や生命など根源的なものだ。また近年は、日本人の自然観に対する関心が増しているそうだ。地元京都では5年ぶりの個展となる本展では、横幅約5メートルの大作《ヘビの行進》をはじめとする約20点を展覧。それらのなかには激しい筆致やムラのある色面など、従来とは異なる要素が垣間見える作品が幾つかあり、彼が新たな段階に入ろうとしている気配が感じられた。

2014/05/13(火)(小吹隆文)