artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
田中真吾 個展「す あ。ラ 火 ─ 見 極」
会期:2014/10/03~2014/10/31
eN arts[京都府]
炎を題材あるいは素材にした作品で知られる田中真吾の新作展。着色した合板をラフに引きちぎる、炎で炙るなどした後、それらと焼け焦げた角材、炎で溶かされたビニールなどを組み合わせて構築した作品を発表した。これまでの彼の作品は主に紙を素材にしており、色合いも白と黒(焼け焦げた痕跡)の2色だった。色彩を得ると同時に立体コラージュのような様相を呈した新作は、多くの人に驚きをもって迎えられるだろう。筆者はこれまでに何度も彼の個展を見てきたが、失望を味わったことがない。展覧会のたびに着実な進化を遂げる田中は、野球でいえばイチローや青木宣親のようなアベレージヒッターと言えるだろう。
2014/10/03(金)(小吹隆文)
無人島にて「80年代」の彫刻/立体/インスタレーション
会期:2014/09/26~2014/10/19
京都造形芸術大学 ギャルリ・オーブ[京都府]
1980年代の関西では「関西ニューウェーブ」と称される一群の美術家たちが台頭した。その一方、流行とは一線を画し孤高の表現を保った作家もいたわけで、本展が取り上げるのは後者である。すなわち、上前智祐、笹岡敬、椎原保、殿敷侃、福岡道雄、宮崎豊治、八木正の、彫刻、立体、インスタレーションを再評価するのが本展の意図である。興味深いのは、本展を企画したのが1988年生まれの新進インディペンデントキュレーター、長谷川新であることだ。当時をリアルタイムで知らない世代により作品の読み替えや価値観の更新が行なわれるのだから、興味を持つなという方が不自然である。聞くところによると、入場者数や会期中のトークイベントに対する反応も上々だったらしい。地域の直近の美術史を振り返る機会が少ない関西で、このような企画展が行なわれたことは賞賛にあたいする。
2014/09/30(火)(小吹隆文)
窓の外、恋の旅。──風景と表現
会期:2014/09/27~2014/11/30
芦屋市立美術博物館[兵庫県]
芦屋とゆかりが深い美術家である小出楢重、吉原治良、津高和一、村上三郎、ハナヤ勘兵衛に、詩人の谷川俊太郎、若手の下道基行、林勇気、ヤマガミユキヒロという、ユニークなラインアップで行なわれた企画展。テーマは風景であり、異なる時代、異なるメディアを用いる作家たちの共演が、美術館をみずみずしい感動で満たした。例えば、小出と吉原の絵画作品と、林とヤマガミの映像作品の対比、津高の絵画と谷川の詩の交感、谷川と下道による、詩と写真というジャンルの違いを超えたナラティブな表現の並置など、見所はあまりにも多い。しかし、それ以上に印象的だったのは、本展が醸し出す日常的な空気感だ。会場には、現代美術に不慣れな人でもスーッと溶け込めるような、リラックスした空気が満ち溢れていた。この雰囲気をつくり出したことが、本展キュレーターの最大の功績である。
2014/09/27(土)(小吹隆文)
プレビュー:鉄道芸術祭vol.4「音のステーション」
会期:2014/10/18~2014/12/23
アートエリアB1[大阪府]
京阪電車の駅コンコース内にあるアートエリアB1が毎年開催している、鉄道の創造性に着目した芸術プログラム。過去には、西野達、やなぎみわ、松岡正剛がプロデューサーを務めたこともあるが、今回はプロデューサー制を取らず、「音」をテーマにした作品展示やパフォーマンス、コンサート、ワークショップなどを開催する。ゲストは、有馬純寿、伊東篤宏、宇治野宗輝、江崎將史、鈴木昭男、野村誠、藤本由紀夫、八木良太などの面々。彼らがつくり上げる、ジャンルや業態の枠を超えた“音のステーション”がいまから楽しみだ。
2014/09/20(土)(小吹隆文)
プレビュー:第8回中之島映像劇場 ジョナス・メカス カメラ、行為、映画
会期:2014/10/18~2014/10/19
国立国際美術館[大阪府]
「美術と映像」をテーマに多様な映像作品を紹介するプログラムの第8弾。日記映画という独自の形式を創り上げたジョナス・メカスの世界を紹介する。作品は、1950年代のブルックリン、1971年のリトアニア、ドイツの収容所跡とウィーン訪問の3パートからなる『リトアニアへの旅の追憶』(1971~72)と、ケネス・ブラウン戯曲、リビング・シアター上演による舞台をルポルタージュ風に記録した『営倉』(1964)の2作。作風がやや異なる2作品を通して、映画とは何か、表現するとはどういうことかについて考える。
2014/09/20(土)(小吹隆文)