artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

日本橋の家

会期:2016/11/18

[大阪府]

大阪へ。安藤忠雄が設計した日本橋の家を見学する。造り付けの家具、フローリングを外し、もともと取り外し可能としていた一部の床をなくすことによって、かつて住まいだったとは思えないほど、抽象的なギャラリーの空間に変容していた。間口は、以前見学した住吉の長屋よりも細い。施主は近くに引っ越し、ここを建築好きのために開放するという。その幕開けとして、各部屋を使いながら、日本建築設計学会による関西の12組の「建築家の住宅模型」展が開催されていた。今後、どのように使われるか楽しみである。

写真:左=上から、日本橋の家、宮本佳明、遠藤秀平 右=上から、日本橋の家、竹山聖、3階から4階への階段

2016/11/18(金)(五十嵐太郎)

岡山大学 Junko Fukutake Hall

会期:2016/11/17

[岡山県]

SANAAによる岡山大学のJunko Fukutakeホールは、近代建築に隣接して、大きく傾いた屋根を何枚か並べて、その下にガラスにおおわれた空間を生み出す。視線が貫通する開放的かつ透明感あふれる建築だ。もっとも、あまりここで佇んだり、入り口周辺にいることが歓迎されず、運用がそれほど開放的でないのは残念だった。

2016/11/17(木)(五十嵐太郎)

岡山芸術交流 Okayama Art Summit 2016

会期:2016/10/09~2016/11/27

林原美術館ほか[岡山県]

岡山芸術交流へ。リアム・ギリックがディレクターということもあるのだろうが、必ずしも新作でないにせよ、海外の作家が多く、日本人が少ない。いわゆる日本の若手枠や地元枠もなさそうだ。なので、西欧の国際展を鑑賞しているような感じである。「地域アート」に迎合せずということか。会場は岡山市の文化ゾーンの建築群に集中しているおかげで、分散型のさいたまトリエンナーレに比べて、とてもまわりやすく助かる。なお、建築の観点からは、該当エリアで前川國男のクラシックなモダン、岡田新一の重厚な建築(オリエント美術館や岡山県立美術館など)、芦原義信のホールほか、いくつかの近代公共施設群に立ち寄ることができる。屋外展示では、神戸大の槻橋研、京都大の平田研、東大の千葉研が手がけた屋台的なパビリオンのほか、ジャン・プルーヴェの建築なども楽しめる。

写真:左=上から、サイモン・フジワラ、神戸大の槻橋研、オリエント美術館 右=上から、前川國男、ジャン・プルーヴェ、芦原義信

2016/11/17(木)(五十嵐太郎)

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小高の鈴木邸/南相馬ワークショップ事前調査・ヒアリング

会期:2016/11/12

[福島県]

南相馬へ日帰り。3.11後、しばらくは道路が封鎖されていたために、いつも仙台から南下して訪れていたが、今回は郡山から6号線を経由し、北上して向かう。途中は自動車による通過はできるけど、止まって、立ち入りすることは禁止のエリアが続く。それゆえ、道路に面した家屋や建物の門にことごとくバリケードが設置されている。立ち止まることが許されない、刺々しい無人の風景がいまも残っている。
南相馬の仮設住宅から帰還する自治会長、小高の鈴木邸は、はりゅうウッドスタジオが設計に関与し、使わなくなった2階の床を外して減築することによって、天井が高い、集会所的に使える空間を生み出した。ここでせんだいメディアテークの清水建人と北野央によるレクチャーを開催し、震災と記憶、アート、そして志賀理江子の展覧会をめぐる議論を行なった。また仮設住宅地の経験や今後の居住についてのヒアリング調査も行なう。東北大五十嵐研で手がけた塔と壁画のある集会所についてのアンケートの予備調査を通じて判明したのは、新しい生活を始める人たちがこれを移設したいとか、部分だけでも欲しいといった反応があるらしく、思っていた以上に仮設住宅地において合理性や機能性からは生まれない意味を獲得していたことだった。

写真:小高の鈴木邸

2016/11/12(土)(五十嵐太郎)

開館80周年記念展 壺中之展

会期:2016/11/08~2016/12/04

大阪市立美術館[大阪府]

大阪市立美術館の開館80周年を記念し、約8400件の館蔵品から名品約300件を選んで展示した。構成は、館の歴史を振り返る第1章、作品の形態を重視した鑑賞入門としての第2章から始まり、日本美術、中国美術、仏教美術、近代美術と続く。同館の主軸は日本・東洋美術であり、阿部コレクション、カザール・コレクション、住友コレクション、山口コレクション、田万コレクションなど、個人コレクターの寄贈や寺社の寄託が中心となっている点に特徴がある。それらの名品を約300点も一気に見るのは大変で、約半分を見終えた時点ですっかり疲れてしまった。しかし、日本の美術館でこれだけ充実した館蔵品展が行なわれる機会は滅多にない。この疲労感はむしろ心地良いものだと思い直して歩を進めた。欧米の美術館に比して日本の美術館は常設展示が貧弱だ。普段からこれぐらいのボリュームで館蔵品を見られれば良いのにと、心から思う。ちなみに本展の展覧会名は、中国の故事「壺中之天」によるもの。壺の中に素晴らしい別世界が広がっていたというお話で、壺を美術館に置き換えるとその意味がよく分かる。

2016/11/07(月)(小吹隆文)

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