artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

Eureka《Dragon Court Village》

[愛知県]

竣工:2013年

Eurekaが設計した住宅地の《Dragon Court Village》へ。思っていたよりも大きく、7軒の賃貸集合住宅が中庭やデッキを通じて立体的に絡み合う。アジアの街並的空間のスケール感と地方都市の車社会のシステムを接続しつつ、コミュニティの生き生きとしたアクティビティを生む。訪れた日がちょうど月イチのマルシェで、近隣住民が見事に使い倒す、驚くべき状況に立会うことができた。

2016/09/25(日)(五十嵐太郎)

喫茶「丘」

[愛知県]

岡崎へ。喫茶「丘」にて、モーニングを食べる。在野の大竹伸朗とでも言うべき100均ショップの素材による目もくらむ内装と二重の音源が重なる空間は、ヘタなアート作品よりもはるかにインパクトがある。斜め前のMasayoshi Suzuki Galleryにて、鈴木正義氏から岡崎の状況を詳しくうかがう。前回のあいちトリエンナーレ2013に参加した藤村龍至が岡崎に出入りしていることもあり、今回のトリエンナーレ期間中も、ギャラリー前のEurekaの移動する家具、403architectureによる松本町の木造アーケードの櫓、studio velocityの川辺の作品など、若手建築家のプロジェクトがいくつか動いている。またリノベーション・スクールを通じて、岡崎のあちこちで再生された物件を鈴木氏に案内してもらう。前回のトリエンナーレ会場も解体されずに、活用されている事例があって嬉しい。狭い路地が蛇行する六供町エリアを探索する。「岡崎まち育てセンター・りた」の天野氏から、橋と川辺の活用について話をうかがう。岡崎はシビコの展示面積が減ったが、むしろ前回のトリエンナーレ以降、いま街中で実際に進行しつつある建築や都市のプロジェクトやリノベーションが熱い。

写真:左=喫茶「丘」 右=上から、移動する家具、岡崎まち育てセンター・りた

2016/09/25(日)(五十嵐太郎)

日吉台地下壕

[東京都]

この春、慶応のセンセーたちの飲み会で、日吉校舎の下にある地下壕の話題になって、毎月見学会が開かれているので見に行こうって話になった。見学会の主催は日吉台地下壕保存の会。この地下壕は第2次大戦末期の1944年9月から海軍連合艦隊司令部として使われ、特攻作戦や沖縄戦の命令はここから出されたという。次世代に伝えるべき戦争遺跡なのだ。参加者はわれわれ4、5人だけかと思ったら、なんと近所(たぶん)のじーちゃんばーちゃんを中心に50人ほど集まった。みんな関心が高いんだ。あいにくの雨のなか、慶応高校の横を通り、蝮谷体育館近くの鉄の扉を開けて地下壕に入る。最初は数十メートルの下り坂。洞窟みたいなワイルドな空間を想定していたが、床も壁も天井も(カマボコ型なので壁と天井の区別はないが)コンクリートで舗装?され、快適とはいえないまでもちゃんと整備されている。奥へ進むと機械室、電信室、司令長官室などがあるが、どれもカマボコ型のトンネルでドアも窓もないため見分けがつかない。内部には横道がたくさんあり、ひとりで入ったらさぞかし怖いだろうなあ。地上に出て、軍令部第3部(情報部)も使ったというチャペルや、巨大キノコみたいな耐弾式竪坑なども見学。戦争遺跡は身近に残っているのだ。

2016/09/24(土)(村田真)

河文

[愛知県]

夜は料亭の河文にて食事をいただく。有名な水鏡の間ではないが、その向かいの部屋で食事後に若女将による説明と案内をしてもらう。数年前、バリアフリーや結婚式に対応する工事などで内装が変わった部分も少なくないが、水鏡の間を設計した谷口吉郎と名鉄の関係、息子の谷口吉生に水を使うデザインが継承されたことを改めて感じる。ちなみに、流政之は自ら庭への作品の設置を申し出たという。

2016/09/24(土)(五十嵐太郎)

studio velocity《まちに架かる6枚屋根の家》

[愛知県]

竣工:2016年

studio velocityが名古屋で設計した《まちに架かる6枚屋根の家》を見学する。彼らとしては、これまでにやったことがない傾斜屋根+軒が出る新しい形態操作を行ないつつ、凹凸のある平屋のプランで全方位的に開放性を獲得する。塀がないことや隣の敷地が空っぽであることで、開放的な空間がより強調される。これは住宅だが、屋根の重なる街のような風景が室内から得られる。彼らの作品《都市にひらいていく家》を見た施主が、この仕事を依頼したらしい。

2016/09/24(土)(五十嵐太郎)