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建築に関するレビュー/プレビュー

東北大学工学部講義「建築設計CI」 最終講評会

会期:2014/11/22

東北大学青葉山キャンパス人間・環境系教育研究棟[宮城県]

3年生の設計課題「金沢21世紀美術館補完計画」が終了した。開館後、想定をはるかに上回る来場者を迎える施設をサポートする機能を提案するもの。完全な形態の円を使う傑作に対し、どのような態度をとるか、既存の文脈をどう読み、それにどうデザインで応答するかが鍵である。今回はとくに、幾何学をベースとした建築的な形態をつくるブラジルからの留学生二名と、建築を消去しようとする日本人の違いも興味深かった。

2014/11/22(土)(五十嵐太郎)

住吉台の家

[宮城県]

研究室の博士課程でもある宇都宮の建築家、星裕之が仙台で手がけた《住吉台の家》(2014)を見学する。場所は新興住宅地の角地であり、隣は公園だが、賑やかすぎるために、まわりの視線を避け、外に対して閉じる。が、内部に入ると、上部の窓から四方の空がよく見え明るく、開放的な構成だ。キッチンからデッキの中庭まで、段々にレベルを上げつつ、ゆるやかに各個室と接続する。施主は室内で犬を飼っていると聞き、空間の見え方も変わった。

2014/11/20(木)(五十嵐太郎)

全国設計行脚

会期:2014/11/16

東北大学青葉山キャンパス人間・環境系教育研究棟[宮城県]

日本各地の学部3年生が1年かけて2025年の建築を設計する課題にとりくむ、全国設計行脚の企画に講師として参加した。メンバーは大阪、広島、東京をめぐり、今回は東北大学を訪問し、小学校、ホスピス、ポスト百貨店、築地市場の再開発など、それぞれのエスキスとレクチャーを行う。5分の発表に対し、15分のエスキスを13セットである。こちらは1人で全部対応するので大変だった。来年3月に設計を終了し、展覧会を開くという。

2014/11/16(日)(五十嵐太郎)

《起雲閣》、「高須英輔展 ─ 輾てん轉 ─ in 起雲閣」

会期:2014/10/03~2014/11/25

起雲閣[静岡県]

熱海の《起雲閣》(1919)も、かつての豪邸であり、後に旅館に転用され、文学者に愛された。したがって、それぞれの文豪の展示が各部屋でなされている。とくに「玉姫」「玉渓」の部屋(1932)は、ステンドグラスも動員する、和洋亜の折衷ぶりが凄まじい。日向邸も、ある意味ではタウトというフィルターを媒介した折衷の建築だが、こちらはベタな併用で、一般の観光客にもわかりやすい。ちなみに、全然ローマ的ではないと思うが、「ローマ風浴室」も興味深い。増築部分では、ちょうど高須英輔展「輾てん轉」を開催しており、古材を再活用した構成の作品群が並ぶ。


起雲閣

記事左上:ローマ風浴室

その後、熱海銀座、中央町、清水町のあたりを散策する。今年、3月に混流温泉文化祭で訪れた際にもまわったが、昭和の建物が多く残っていたり、坂の地形と壁が隣接する小建築群がかもしだす風景は独特の雰囲気をもつ。いまは単に古いと思われるかもしれないが、今後残れば、貴重になるはずだ。

熱海

2014/11/15(土)(五十嵐太郎)

水/ガラス

[静岡県]

前回、日向邸の隣にある隈研吾による《水/ガラス》(1995)は堅く門を閉じ、外からしか眺めることができなかったが、現在は用途が変更し、宿泊に使えるようになり、エントラスの内側くらいまで入ることができた。が、それでは海に溶け込むあの有名なシーンは見えない。

2014/11/15(土)(五十嵐太郎)