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建築に関するレビュー/プレビュー

京都国立博物館 平成知新館

京都国立博物館[京都府]

京都国立博物館にて、谷口吉生が設計した建築群を見る。まず最初に出迎える現在のエントランスとカフェは、ある意味で本家ヨーロッパ以上に美しいモダニズムだが、平成知新館(2013)も手前に水面をおく、必勝パターンの空間デザインである。室内にもいい感じで、ゆらめく光のリフレクションが入り、ルイス・カーンのキンベル美術館を想起させる。展示空間は、互い違いに彫刻や絵画の吹抜けを積む明快な構成だ。谷口建築としての新発見はなかったが、安定のクオリティと言えるだろう。ただ、東京の国立博物館は、所蔵品の撮影OKなのに、なぜここはNGなのか。

2015/01/23(金)(五十嵐太郎)

ホテル・オークラ東京

[東京都]

建替えになるということで、久しぶりにホテル・オークラ東京を訪れた。夜間は特別のライトアップをやっており、光と影の効果が想像以上に建物の美しさをひきたてる。本館(1962)、別館(1973)とも、ロビーを谷口吉郎が設計しているが、金沢で多く見てきた作品群とやはり共通するテイストであり、モダンながら、どことなく和を感じさせる空間だ。また現在からは、昭和の懐かしさも伴っている。


左:大倉集古館 右:新館ロビー


2015/01/21(水)(五十嵐太郎)

東京駅開業百年記念 東京駅100年の記憶

会期:2014/12/13~2015/03/01

東京ステーションギャラリー[東京都]

資料、模型、絵画、映像、実物、インスタレーションなどを駆使して、その歴史を振り返る。東京駅周辺の変化を示す3つのジオラマを比較すると、改めてその激変ぶりに驚かされる。鈴木博之先生が最終講義の最後に、空から見る東京駅の画像をだして、中心部がこんなに変わった都市は他にないと指摘していたのを思いだす。ともあれ、やはり辰野金吾のデザインはあまりこなれていない気がする(西欧の様式建築に比べて)。このエリアだと、村野藤吾の銀行が一番カッコいい。また展覧会では、もとのドームを復元したばかりなので、軽んじられているかもしれないが、戦後の姿をもたらした設計の経緯をもう少し詳しく知りたかった。


東京駅模型

2015/01/15(木)(五十嵐太郎)

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プレビュー:神村恵『わける手順 わすれる技術 ver. 2.0』

会期:2015/01/18

SNAC[東京都]

神村恵は間違いなく尊重されるべき日本の振付家の1人だ。それは、彼女の考えていることには、ともかく耳を傾けるべきだということを意味する。彼女の10年を超えるキャリアは、必ずしも新しい観客にはフォローが容易ではないかもしれない。そうかと思って私は昨年「ダンスを作るためのプラットフォーム」BONUSにて、動画コンテンツ「神村恵入門」を制作した。ぜひこれを一度見て、彼女のこれまでの軌跡をフォローしておいて欲しい。あらかじめ公開されているこの公演に向けてのテキストに「私たちが観客と共有したいもの」は「隠蔽の反対。幻惑の反対。ウェルメイドの反対。完了形の反対。全体の反対」と記されている。あるいはそのテキストでは「プロセス」という言葉も目立つ。これはきっと観客にとって「挑戦的」な上演になるだろう。そして、簡単に観客が感動することを許さない作品だろう。そこに神村が賭けるのならば、それに応じてみるべきだろう。それはきっとダンスではない。だからこそ、未来にダンスと呼ばれるなにかでありえるのだし、本作はきっとそのなにかの発端とのちに語られる試みとなるだろう。

2015/01/14(水)(木村覚)

六甲の住居

[兵庫県]

島田陽さんが設計した六甲の住居(2011)を見学する。1階が鉄骨スケルトンの透明な直方体で、その上に家型のヴォリュームが浮かぶ家だが、一体どうやって暮らすのかと思いきや、急傾斜の階段が続く、突き当たりの特殊環境ゆえに導かれた形式で、なるほど、見事に成立している。内部は、什器は少ないが、モノが多く、倉庫のようだ。二階の間仕切りには、神戸ビエンナーレ2011で島田さんがインスタレーションで用いたのと同じ素材を使っている。外周のバルコニーが構造を兼ねており、空間は軽やかである。

2015/01/11(日)(五十嵐太郎)