artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
いわき平競輪場
[福島県]
公共建築賞の審査で、日本設計によるいわき平けいりんを見学したが、初めて体験するビルディングタイプだった。工期を短縮すべく、プレキャストのコンクリートによって、複雑な曲面を描く走路バンクを建設し、内側からも自転車の競技を間近に見ることができる場を設けている。縦に積んだ直線のメインスタンドから、傾斜した巨大なガラス越しに、街とバンクを見下ろす眺めが素晴らしい。透明感もあり、空港のように明快な空間だ。バンクの内側、バックスタンド、別棟の集会所は、地域の住民にイベントで開放し、明るいイメージをもつ現代的な競輪の施設だ。震災直後も防災の拠点として活躍している。
2014/01/29(水)(五十嵐太郎)
神奈川県立音楽堂、神奈川県立図書館
[神奈川県]
久しぶりに、前川國男による神奈川県立音楽堂と神奈川県立図書館を訪れた。この頃のモダニズムのデザインは、心を洗われるようで、見ていて清々しい。遠くに巨大な横浜ランドマークタワーが見えるのが、対照的だ。開館当時の60年前は、そう感じられなかったのかもしれないが、いまの大型施設やビルに比べて、スケールも小さくてかわいらしい。いまも現役で活躍しているが、将来も是非ちゃんと残して欲しいモダニズム建築である。
2014/01/28(火)(五十嵐太郎)
仙台文学館
[宮城県]
『S-meme』の次号で取り上げる仙台文学館を訪れる。ネオタイド建築計画による池を跨ぐゲート、あるいはブリッジ的なヴォリュームと、円形の吹抜けが、空間の大きな特徴だ。楽天優勝もあり、井上ひさしと野球の企画展を開催中だった。常設展示では、近代から現代までをたどる。文学館は美術館と違い、空間性を生かした作品の展示が難しいが、仙台文学館も展示デザインのテイストをもっと揃えられると、カッコよくなるはずだ。
2014/01/22(水)(五十嵐太郎)
武蔵野美術大学建築学科建築祭2014 第一部 第10回芦原義信賞・竹山実賞 表彰式
武蔵野美術大学 8号館308講義室[東京都]
武蔵野美術大学にて、審査委員長を担当した芦原義信賞(建築の卒業生を対象とする)の授賞式に出席した。第10回では、伊坂道子と鈴木紀慶が受賞した。この日は、いつも卒業設計や修士設計の展示が行なわれている時期で、上下の同窓生がつながるいい機会になっている。全学でも修了制作展を開催中で、とにかく美大はにぎやかだ。以下に総評を抜粋する。「今回は伊坂道子と鈴木紀慶が著作を軸とした業績で選ばれた。鈴木は住空間に関わる編集と執筆を長く継続し、特に『日本のインテリアデザイン史』は、これまでほとんど通史的に語られることがなかったインテリアデザインの分野にとって画期的な本である。……また伊坂は増上寺旧境内の調査と景観の保存活動を粘り強く手がけ、博士論文をもとにした研究書を刊行した。二名とも以前から芦原賞に応募していただいたが、2013年はそれぞれにメルクマールとなる仕事を成し遂げ、今回が受賞すべき絶好のタイミングだと思われる」。
2014/01/18(土)(五十嵐太郎)
カタログ&ブックス│2014年1月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
人間のための建築──建築資料にみる坂倉準三
2013年11月27日から2014年2月23日まで、国立近現代建築資料館にて開催された、「人間のための建築──建築資料にみる坂倉準三」展図録。坂倉研究所やフランス国立アーカイブ等の協力を得て集められた貴重な資料を全頁カラーで掲載。バイリンガル。第一部:パリ万国博覧会日本館[1937]、第二部:戦前から戦後復興期の作品、第三部:神奈川県立近代美術館[1951]、第四部:日本の都市風景となった作品群。
ドキュメント|14の夕べ||パフォーマンスのあとさき、残りのものたちは身振りを続ける
閉館後の美術館で繰り広げられたアートの饗宴、再び
2012年夏、東京国立近代美術館にて14夕連続で開催された「14の夕べ」。演劇、音楽、ダンス、朗読、美術など多ジャンルに渡る実験的イベントは大きな反響を呼び起こした。本書は「14の夕べ」とは何であったかの記録であると同時に、「記録」の新たな方法論を提示するものである。
主な出演者:谷川俊太郎、福永信、古川日出男、一柳慧、大友良英 one day ensembles、小杉武久、奥村雄樹、東京デスロック、手塚夏子、小林耕平、神村恵カンパニーほか(順不同)
[青幻舎サイトより]
シェアをデザインする──変わるコミュニティ、ビジネス、クリエイションの現場
場所・もの・情報の「共有」で何が変わり、生まれるのか。最前線の起業家やクリエイターが、シェアオフィス、ファブ・ラボ、SNS 活用等、実践を語る。新しいビジネスやイノベーションの条件は、自由な個人がつながり、変化を拒まず、予測できない状況を許容すること。ポスト大量生産&消費時代の柔軟な社会が見えてくる。
[学芸出版社サイトより]
2014/01/15(水)(artscape編集部)