artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

《野外博物館 北海道開拓の村》(1983)

[北海道札幌市厚別区]

北海道の近代建築を移築し、集めた野外博物館の《北海道開拓の村》を散策した。ヴァナキュラーな建築群からは強い地域性が感じられ、明治村、民家園、江戸東京たてもの園とは違う雰囲気をかもしだしている。特にいわゆる様式建築に所属しない、開拓小屋、旧平造材部飯場、炭焼小屋などは、スタイルの呪縛が一切ない分、せざるをえなかった素材や構造による造形が圧倒的にユニークだ。もうひとつの近代を目撃したような感じがする。

写真:上=開拓小屋、下=旧平造材部飯場

2013/09/05(木)(五十嵐太郎)

西村浩《岩見沢複合駅舎》(2009)

[北海道]

西村浩が設計した岩見沢の駅舎へ。デザインは思っていた以上にシャープな現代建築だった。が、何よりも駅と共同体の記憶を継承しつつ、しかもさまざまなアクティビティを誘発しながら、市民にちゃんと使われてる実態が素晴らしい。写真ではよさがすべて伝わらないが、グッドデザイン賞の大賞や日本建築学会賞(作品賞)も納得である。各地の駅舎が少しずつでもこうした空間の質を獲得すると、日本はもっと豊かになるだろう。

2013/09/05(木)(五十嵐太郎)

五十嵐研ゼミ旅行3 安藤忠雄の《水の教会》(1988)ほか

[北海道]

3日目は、灘本幸子が温室をリノベーションした《十勝ヒルズ》(2013)のエントランス施設、テクスチャーが強い存在感を放つ象設計集団による《森の交流館・十勝》(1996)と《北海道ホテル》(1995/2001)を訪れた。安藤忠雄の《水の教会》(1988)と《渡辺淳一文学館》(1998)も見学したが、前者はさすがウェディングチャペルならではの空間的な仕かけに感心した。本物の教会ならば、大きなガラス窓が横にスライドして全開する飛び道具は必要ないだろう。最後のイサム・ノグチによる《モエレ沼公園》(2005)は、ランドスケープとアートが融合したものだが、日本らしくないスケール感のデカさが圧倒的だった。なにしろ小山がつくられている。建築ではなかなかできない空間の体験だ。

写真:左上=《十勝ヒルズ》、左中=《森の交流館・十勝》、左下=《北海道ホテル》、右上=《水の教会》、右中=《渡辺淳一文学館》、右下=《モエレ沼公園》

2013/09/04(水)(五十嵐太郎)

五十嵐研ゼミ旅行2 毛綱毅曠の建築めぐり

[北海道]

合宿2日目は釧路に移動し、毛綱毅曠の建築めぐりを行なう。《釧路フィッシャーマンズワーフMOO》(1989)、《釧路キャッスルホテル》(1987)、《釧路市立博物館》(1984)、《幣舞中学校(旧・釧路市立東中学校)》(1986)、《反住器》(1972)、《釧路市湿原展望台》(1984)、《釧路公立大学》(1987)など、子どものときから大人になっても、生涯毛綱建築とつきあえる街だ。筆者が学生の頃、最盛期を誇ったポストモダンの建築群であり、ようやく実見することができた。シンボリズムを語り、堂々と合理性や経済性から逃れることを言えた時代だ。それをまた発注者側も許容していたのが、すごい。現在のご時世だと絶対に無理だろう。釧路市立博物館では、あの異形の建築そのものが顔になったゆるキャラが存在していた。

写真:左上=《釧路フィッシャーマンズワーフMOO》、左下=《釧路市立博物館》、右上=反住器》、右下=《釧路市湿原展望台》

2013/09/03(火)(五十嵐太郎)

五十嵐研ゼミ旅行1 札幌市内の建築めぐり

[北海道]

今年は日本建築学会大会の開催に合わせ、東北大の五十嵐研ゼミ旅行は北海道だった。札幌駅に集合し、初日は小ぶりでかわいらしいレーモンドの《札幌聖ミカエル教会》(1960)と原広司による巨大な《札幌ドーム》(2001)を見学した。後者はサッカーと野球を両方開催するという日本的な文脈が生みだした複合ビルディングタイプである。ゆえに、変形するトランスフォーマー型の建築だった。京都駅や大阪の梅田スカイビルに通じる未来的なデザインが彩りを添える。ちなみに、屋内は市民のランニングコースにも使われているという。
夕方は街の中心に戻り、坂倉準三の《札幌パークホテル(旧・ホテル三愛)》(1964)へ。いま見ると、ポツ窓的な手法の先駆けのようにも見えるデザインが施されているのだが、名古屋にも同事務所のそうした物件がある。久しぶりに訪れたナイジェル・コーツの《ノアの方舟》(1988)は、店が変わっても建物名称は同じままだった。それだけこのデザインがインパクをもっているからだろう。高松伸の小さいながらも目立つ《FIVE FOX 札幌タトゥー》(1989)も残っていた(ただし、現在は光っていない)。

写真:上から《札幌聖ミカエル教会》《札幌ドーム》《札幌パークホテル(旧・ホテル三愛)》《ノアの方舟》

2013/09/02(月)(五十嵐太郎)