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建築に関するレビュー/プレビュー

丹下健三生誕100周年プロジェクト「丹下健三 瀬戸内から世界へ」2日目[第1部]丹下健三とは誰か[第2部]瀬戸内から世界へ

会期:2013/08/18

アルファあなぶきホール(香川県県民ホール)[香川県]

日本最大(?)の小ホール(800人収容!)で開催された香川県民ホールでシンポジウムの第一部「丹下健三とは誰か」は、松隈洋さんが司会、丹下のもとにいた槇文彦さんと谷口吉生さん、藤森照信さん、豊川斎赫さんが語る。海外でのふるまい、過去にこだわらないこと、対立する要素の止揚など、人間としての丹下に迫る内容だった。続く第2部の「瀬戸内から世界へ」では、五十嵐が司会、伊東豊雄さん、藤本壮介さん、松隈さん、北川フラムさんがスコープを広げて語る。近代以降の重文建築の多くが瀬戸内に集中していること、国家の枠組を逃れ、地域と世界につながる仕事の環境、重層的に建築が残っていることなどが指摘された。

2013/08/18(日)(五十嵐太郎)

瀬戸内国際芸術祭2013丹下健三生誕100周年プロジェクト「丹下健三 伝統と創造 瀬戸内から世界へ」展

会期:2013/07/20~2013/09/23

香川県立ミュージアム[香川県]

名古屋から高松へ。香川県立ミュージアムの「丹下健三 伝統から創造へ 瀬戸内から世界へ」展を見る。丹下が高校生のときに感化されたル・コルビュジエのソビエトパレスから始まり、卒計、広島の計画、そして香川県庁舎を含む瀬戸内の仕事を図面や精巧な模型で伝える。そして最後は同時代の瀬戸内建築や現代も紹介する内容だった。これでようやく丹下の没後に大きな展覧会が開催されたことになる。

2013/08/18(日)(五十嵐太郎)

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国際シンポジウム「現代ケンチクの日本」/オープニングシンポジウム「『カタストロフ』という機会─The Opportunity of Catastrophe─」

会期:2013/08/11

愛知芸術文化センター 12階アートスペースA[愛知県]

11日は二連続で国際シンポジウムが行なわれた。「現代ケンチクの日本」はモデレータの渡辺真理さんが、「ARCHITECTURE」の訳語としての「建築」ではなく、いまは世界に発信していく日本独自の「ケンチク」が生まれているのではないかという興味深い仮説を提示したが、時間が足りず、あまりこの議論を展開できなかったのは残念だった。もっとも、アメリカ、ヨーロッパ、アジアから見る日本建築の状況を知ることはできた。
続いて、同じ会場では、ミハイル・カリキスのボイス・パフォーマンスを挟んで、あいちトリエンナーレのテーマに絡めた「カタストロフという機会」のシンポジウムが開催された。筆者はカタログに寄稿する内容を軸に、今回のコンセプトについて語る。連続的に数字を次々に見せる、ジャーによる詩のようなプレゼンテーションはカッコいい。またシンポジウムのプレゼンテーションを通じて、宮本佳明さんの今回の福島第一さかえ原発と、阪神大震災後のゼンカイハウスの共通点に気づいたのも収穫だった。後者は壊れた木造に鉄骨のフレームを挿入、前者も愛知芸術文化センターに原発を転送している。つまり、いずれも異なる建築形式を重ね合わせている。

2013/08/11(日)(五十嵐太郎)

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あいちトリエンナーレ2013 揺れる大地 われわれはどこに立っているのか 場所、記憶、そして復活

会期:2013/08/10~2013/10/27

名古屋エリア、岡崎エリア[愛知県]

芸術監督に建築学の五十嵐太郎を迎え、東日本大震災後を強く意識させるテーマを掲げた「あいちトリエンナーレ2013」。このテーマを最も体現していたのは、愛知県美術館8階に展示されていた宮本佳明の《福島第一原発神社》だった。本作は昨年に大阪の橘画廊で発表され大きな注目を集めたが、今回はそれを何倍にもスケールアップさせ、インパクトのある提案をさらに加速させていた。また、宮本は愛知県美術館の吹き抜け部分と福島第一原発建屋のスケールがほぼ相似であることに着目して、美術館の床や壁面に原発の図面をテープでトレースする作品も発表しており、今回の主役ともいうべき活躍を見せていた。名古屋エリア全体でいうと、愛知県美術館と納屋橋会場の出来がよく、地震や被災といったテーマ直結の作品だけでなく、コミュニティの境界や分断、明日への希望を掲げた作品など、質の高い表現がバリエーション豊かに出品されていた。また今回新たに会場に加わった岡崎エリアでも、岡崎シビコでの志賀理江子をはじめとする面々による展示が力強く、とても見応えがあった。そんな今回のトリエンナーレにあえて注文を付けるとすれば、会場間の移動をよりスムーズに行なえる方策を考えてほしい。導入済みのベロタクシーに加え、レンタサイクルを実施すれば歓迎されるのではないか。次回に向け是非検討してほしい。

2013/08/09(金)・10(土)(小吹隆文)

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藤森照信「空飛ぶ泥船ワークショップ」

名古屋市美術館付近[愛知県]

あいちトリエンナーレでは、名古屋市美術館の横に藤森照信による空飛ぶ泥船を展示するが、今回は安全性をより高く設定すべく、これを両側から吊るための柱を木ではなく、鉄としたため、みんなで柱に杉皮を巻くワークショップが開催された。藤森自らも参加し、休憩時間にショートレクチャーが行なわれた。卒業設計で描いた未来的な吊り橋が、この空中茶室の着想につながっていたことは興味深い。ただし、当時影響を受けていたアーキグラムなどの未来志向はやめて、デザインのベクトルは原始人に向かったという。

2013/07/28(日)(五十嵐太郎)