artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
ヴェネチア・ビエンナーレ第13回国際建築展(2012)-Common Ground-
会期:2011/08/04~2012/11/25
[イタリア・ヴェネチア]
今年もヴェネチアを訪れた。美術か建築のビエンナーレのどちらかだけなら、2年に一度ですむのだが、両方見るために、毎年の恒例行事である。ジャルディーニの国別パヴィリオンをまわると、日本館は、震災という特殊事情を差し引いても、ほかの展示と全然違う。杉の丸太が地上のピロティからスラブをつきぬけ、天井にまで届くようなインスタレーションのなかに模型が点在する。そして畠山直哉による陸前高田の現在の風景写真のパノラマが囲む。やはり彼が入ったことは、絶大の効果を生みだした。ほかに国別の展示で印象に残ったのは、ITを使うSF的展示と冷戦時の科学都市を紹介するロシア館、ペトラ・ブレーゼの動くカーテンで空間が変容するオランダ館だった。全体テーマがコモングラウンド(共通基盤)だったため、アルセナーレは社会派の堅実なプロジェクトが多い。
写真:上から、日本館、ロシア館、オランダ館
2012/09/01(土)(五十嵐太郎)
「Arts & Life:生きるための家」展
会期:2012/07/15~2012/09/30
東京都美術館 ギャラリーA・B[東京都]
東京都美術館「生きるための家」展を見る。コンペの最優秀になり、実物大の模型がつくられた山田紗子案は応募作のなかでもっとも力強い建築だった。模型の方がスラブの傾斜がきつく、さらに前衛的である。ともあれ、吹抜けにインスタレーションされることを考えると、屋根や壁で塞がれない状態のデザインは相性がよい。応募作を一覧すると、さまざまな若手の亜流と言える作品が並び、本当に今の日本建築の流行をよく反映している。
2012/08/16(木)(五十嵐太郎)
カタログ&ブックス│2012年8月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
3.11/After 記憶と再生へのプロセス
2012年3月仙台と、フランス・パリで開催された建築展「3.11──東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」の展覧会採録と、東北大学せんだいスクール・オブ・デザイン特別講義「復興へのリデザイン」でのレクチャーを基にまとめられた。巻頭対談として隈研吾と五十嵐太郎「After 3.11 を生きるということ。」、巻末「[ブックレビュー]震災を読む25冊」など。
インタラクションデザイン/RCAデザイン教育の現在 神戸芸術工科大学レクチャーシリーズII……5
イギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)で行われている最先端の「インタラクション・デザイン」の研究と教育メソッドを紹介する。RCAのアンソニー・ダン教授へのインタビューやRCAのデザイン・インタラクション学科で学んだスプツニ子! の大学特別講義を収める。他に学生などによるプロジェクト作品を紹介。[新宿書房サイトより]
パリの運命
ル・コルビュジエがパリの運命を託したのは、人と生が輝く都市であり、すまいだった。ル・コルビュジエの《輝く都市》の入門書にして、その核心『パリの運命』。[彰国社サイトより]
NAOSHIMA NOTE 2012.6 建築でみるベネッセアートサイト直島
1992年のベネッセハウス以来のそれぞれの建築家の思想を反映しつつ、場の特性を深く読み込んだ空間をもち得た、周囲の環境、自然、そしてアート作品と一体になっている建築が建設されてきた。ベネッセアートサイト直島のアートや自然と同様に、建築の重要性を常に考え、島の風土や歴史を尊重し、瀬戸内海の光や空気、海や木々に溶け込んだ建築を建築家と共に目指してきた直島、豊島、犬島の建築を通して、これまでのベネッセアートサイト直島を振り返る。「ベネッセアートサイト直島20年建築史」、五十嵐太郎による「建築と美術と風景が融合し、世界のどこにもない場所をつくる」掲載。
インタラクションデザイン KDU, RCA, MAU, IAMASジョイントワークショップ2012報告
神戸芸術工科大学にて2011年度共同研究「情報化社会における大学のデザイン導入教育に関する研究」の研究教育プログラムの一環として、ロンドンRCAからデザイナーのフィオナ・レイビイ氏を招聘、武蔵野美術大学情報科学芸術大学院大学、神戸芸術工科大学の三大学ジョイントによるデザインワークショップの記録。1日のうちのコアタイムはすべて英語でコミュニケーションを行なうなかでの、学生らのアイデアあふれるプロジェクト提案、プレゼンテーションでの活発な討議が行なわれた。
ねもは003
東北大学大学院有志が制作する建築雑誌。今号の特集は「建築のメタリアル」と題し、現代の情報と物質の関係を明らかにすることで、ジャンルの対立を越えたこれからの建築の「現実」の有り様をかたどる。早稲田大学芸術学校校長である鈴木了二氏や、慶應義塾大学環境情報学部准教授である田中浩也氏のインタビューを掲載。
http://nemoha.blog.fc2.com/
2012/08/15(水)(artscape編集部)
あいちトリエンナーレ2013開幕1年前イベント「けんちく体操」ワークショップ
会期:2012/08/10
愛知芸術文化センター 2階大ホール前[愛知県]
あいちトリエンナーレの1年前イベントとして、けんちく体操を行なう。話題になった書籍を通じてよく知っているプログラムで、とうとうドイツのバウハウスにまで呼ばれているが、生で目の前で見るのは初めてだった。ひとりの簡単な模倣から、だんだんと人数が増え、難易度を上げていく。複雑さを増すほど、多様な表現となり、同じ建物で人によって解釈が違うのが興味深い。ラストは10人近い人で、なんと名古屋城。これは壮観だった。
2012/08/10(金)(五十嵐太郎)
オカムラデザインスペースR第10回企画展「Flow_er」
会期:2012/07/24~2012/08/10
オカムラ・ガーデンコート・ショールーム[東京都]
ニューオータニのOKAMURA DESIGN SPACE Rにて、建築家の平田晃久とガーデンプランナーの塚田有一がコラボレーションした「Flow_er」展を見る。透明なアクリルの面が三次元的に分節しながら、ひだ状に展開していく。明快な内部も外部もない。平田による幾何学の世界のあちこちに植物が置かれる。そして上から水が落ち、分岐しながら全体を流れていく、新しい感覚の庭。意外だが、なかなか魅力的な組み合わせとなっている。
2012/08/08(水)(五十嵐太郎)