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建築に関するレビュー/プレビュー

シンポジウム「ベネッセアートサイト直島における建築とは」

会期:2012/06/10

ベネッセハウス・パークホール[香川県]

ベネッセハウスパークのホールにて、「生成」建築鑑賞&シンポジウム「ベネッセアートサイト直島における建築とは」が開催された。直島に安藤忠雄が設計したホテルと美術館が登場してから、今年で20年目にあたるという。また意外なことに、直島で建築に特化したシンポジウムを行なうことは初めてだという。筆者がコーディネーターとなり、西沢立衛、妹島和世、三分一博志の三者に、島々の第一印象、他の仕事との違い、建築とアートについて語ってもらう。敷地やプログラムの制約が通常の美術館に比べて、かなり自由であることから、それぞれの建築家の個性もより増幅されている。実際、犬島アートプロジェクト《精錬所》に続き、《豊島美術館》が国内最高の建築賞である建築学会賞(作品)を受賞した。2年連続でベネッセ関連の建築が選ばれていることは特筆すべきだろう。

2012/06/10(日)(五十嵐太郎)

「ARCHITEKTONIKA 2」展

会期:2012/04/05~2013/01/13

Hamburger Bahnhof[ドイツ・ベルリン]

HAMBURGER BAHNHOFの「ARCHITEKTONIKA 2」展は、建築とアートを架構する作品をまとめて紹介する興味深い展覧会だった。実際、アーキグラムの未来都市計画からダン・グラハムの建築的なプロジェクトまで、さまざまな回路で2つのジャンルは結びつく。

写真:ダン・グラハムのパビリオン計画

2012/06/03(日)(五十嵐太郎)

トポグラフィー・オブ・テラー、ピーター・アイゼンマン《ホロコースト・メモリアル》

[ドイツ・ベルリン]

ベルリンへの訪問は2001年の9月11日の同時多発テロの日に入って以来、11年ぶりである。そのときはちょうどダニエル・リベスキンドの《ユダヤ博物館》が一般オープンした日だったが、今回はその後に完成したトポグラフィー・オブ・テラーやピーター・アイゼンマンの《ホロコースト・メモリアル》を訪れた。ベルリンでは、60年以上前の戦時下の記憶が、今なお現代建築として立ち上がる。《ホロコースト・メモリアル》は、慰霊空間であると同時に、遊びを誘発する場だった。晴れた日中は子どもたちが走ったり、かくれんぼができる。だが、地下に降りて展示を見ると、その空間デザインは地上の直方体が林立するランドスケープとシンクロし、忌まわしい記憶を想起させるものだった。

写真:上=トポグラフィー・オブ・テラー、下=ピーター・アイゼンマン《ホロコースト・メモリアル》

2012/06/03(日)(五十嵐太郎)

CIRCULER: VILLE, MOBILITÉ ET ARCHITECTURE(循環する 都市、移動、建築)

会期:2012/04/04~2012/08/26

建築・文化財博物館[フランス パリ]

シャイヨー宮の建築博物館へ。今回は収蔵の時期を注意深く見ていくと、壁、扉、彫刻など、中世の教会の部分移築は19世紀から行なわれており、建築模型はパリ万博時の制作が多い。また壁画の模写は、第二次大戦の頃にも行なわれている。言うまでもなく、一夜にしてそろったコレクションではない。過去を保存していくことへの情熱が脈々と続いているのだ。企画展は交通の変化と建築・都市の関係に焦点をあて、こちらも興味深い。

2012/05/28(月)(五十嵐太郎)

ラ・トリエンナーレ(La Triennale: Intense proximité)

会期:2012/04/20~2012/08/26

パレ・ド・トーキョー[フランス パリ]

あいちトリエンナーレ2013の業務として、約2週間、キュレータ・チームとともに、ヨーロッパ各地の作家を訪問したり、国際展をめぐることになった。パリでは、パレ・ド・トーキョーのパリ・トリエンナーレ2012を見る。さらに改造し、面積が3倍くらいに増えたために、新作は少ないものの、膨大な作品数だった。もともとラカトン&ヴァッサルがデザインしたパリで一番好きなアート・スペースだったが、驚くべきことに、もっとカッコよくなっている。下にまだこれほどの場所が隠されていたとは。当初、モダニズムへの反動としてつくられたデザインだが、無駄に空間が大きいことや天井の高さなどは結果的に現代美術が要求するスペックにとても合う。パレ・ド・トーキョーは、かつての重厚な壁をとり払い、近代的な構造の軽やかさがむきだしになった。しかし、未完成的、あるいは廃墟的なリノベーションの空間は、日本ではなかなかできないだろう。

2012/05/28(月)(五十嵐太郎)