artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
20世紀日本建築・美術の名品はどこにある?
会期:2012/07/09
彦坂尚嘉が企画するアート・スタディーズの最終回をついに迎えた。20世紀の100年を5年ずつ区切って、全20回で建築と美術を横断する連続シンポジウム+2回の特別編である。2004年11月に第1回が始まり、ついに大団円だ。最終回は豊川斎赫らを迎え、丹下健三とアートについて討議した。これは複数のコメンテーターが登壇するリノベーション・スタディーズのスタイルを継承するシンポジウムの形式をとりながらも、じつは彦坂による壮大なアート・プロジェクトだったと思う。
2012/07/09(月)(五十嵐太郎)
建築巡回展「3.11ー東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」
会期:2012/07/05~2012/07/22
ソウル歴史博物館[韓国・ソウル]
筆者が企画した「3.11──東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展は、韓国では4カ所巡回するが、ソウルでは歴史博物館で開催された。リーフレットやパネルはすべてハングルのバージョンをつくり、パリやロシアなど、他の巡回先に比べて、しっかりとした展示デザインになっている。今回、5日のオープニングにあわせてレクチャーを行ない、館長でもある元副市長との会食後、もう一度、博物館に戻り、リニュアルされた展示スペースを見学した。
2012/07/05(木)(五十嵐太郎)
《ソウル新市庁舎》ほか
[韓国・ソウル]
2年ぶりのソウルは、市庁舎の背後にあるガラス棟の増築がほぼ完成していた。筆者が初めてソウルを訪れたのは20年前だったから、旧朝鮮総督府が残っていた風景を覚えており、街の激しい変化がよくわかる。また東大門のザハ・ハディドによる巨大なデザイン・プラザも、工事中とはいえ、ヴォリュームの全容が見えてきた。ただし、現地の建築関係者からの評判は悪い。公開部分は前の訪問時と同じで、ちょうど『星の王子さま』の展覧会を開催していた。川辺の漢江ルネサンス物件は完成している。しかし、新しい市長になり、箱もの事業が減って、風向きは変わったらしい。午後、建築家、アーティストのハン・ウンスクの設計したコンテナを活用したギャラリーを訪問し、不要品を再活用する、これまでの彼の作品について紹介してもらう。
写真:上から、《ソウル新市庁舎》、サハ・ハディド《東大門デザインプラザ&パーク》、ハン・ウンスク設計のコンテナ
2012/07/04(水)(五十嵐太郎)
江戸東京博物館開館20周年記念特別展「日本橋 描かれたランドマークの400年」
会期:2012/05/26~2012/07/16
江戸東京博物館 1階企画展示室[東京都]
江戸東京博物館にて開催中の「日本橋 描かれたランドマークの400年」展を見ると、江戸時代から、日本橋の界隈は本当にさまざまな絵図で登場しており、重要なランドマークだったことがよくわかる。そのなかでも対象に超接近する歌川広重の構図がもっとも大胆で前衛的だ。展示の内容は、近代以降も続くが、やはり首都高が上にかかる時代で終わっている。とはいえ、かつての美しい景観を創る会のような、首都高速を破壊すれば、古き美しい江戸の情緒が甦るといったイデオロギーはなく(そもそも現在の日本橋は江戸時代の木造の橋を壊した後につくられたもの)、その良し悪しについては中立的な立場をとっていたことは興味深い。
2012/07/01(日)(五十嵐太郎)
台日建築新鋭交流展 Coming of Age 系列活動「當代日本/台灣建築現象談議」
府都建築文化会館(白鷺灣建築文化館)[台湾・台南市]
台南の府都のホールにおいて、日本と台湾の若手建築家が参加した「日台新鋭建築家交流展 自然系建築」に連動したシンポジウムが開催された。藤本壮介のレクチャーに続き、筆者は「21世紀のモニュメント」と題して、彼がコンペで勝利した台湾タワーに関するコメントを行なった。これは高さや垂直性を志向する塔ではない。実際、細長いプロポーションではなく、横方向にも伸びている。かといって、最大の床面積を得るべく、フロアを積層させた高層ビルでもない。なぜならば、内部は空っぽであり、吹抜けの下に大きな広場を抱えている。すなわち、藤本の提案は、タワーそのものの概念を変えてしまう、オルタナティブ・モダンの建築なのだ。もはや「タワー」に代わる言葉が必要だろう。
写真:藤本壮介の台湾タワーの模型を上からのぞく
2012/06/30(土)(五十嵐太郎)