artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

中銀カプセルタワービル 住宅カプセル

会期:2011/09/17~2012/01/15

六本木ヒルズの敷地内[東京都]

森美術館の「メタボリズムの未来都市」展にあわせて、黒川紀章による中銀カプセルタワーのユニットが六本木ヒルズの屋外に設置された。しかし、若手建築家との「メタボリズムのDNA」シンポジウムの打ち上げで、会期が終わった後に行く先がないと聞き、同じく黒川が設計した埼玉県立近代美術館につないだところ、無事に受入れが決まった。アスベストの問題もあり、中銀カプセルタワーが残るかどうかわからない状態であるが、思いがけず、現代建築の部分保存に貢献することができた。

2011/12/15(木)(五十嵐太郎)

南相馬市プロジェクト「塔と壁画のある仮設集会所」塔の完成

会期:2011/12/12~2011/12/13

南相馬市[福島県]

塔の建設を見届けるべく、南相馬市の仮設住宅地を訪れた。11月に建設資材は運び込み、基礎のコンクリートと中央の支柱はすでに完成していたので、この日はクレーンで三角形の木のフレームを持ち上げ、積んでいく作業が始まった。鮮やかに着彩されたユニット群が垂直に立ち上がっていく。彦坂尚嘉が和歌の形式にならって、5、7、5、7、7のパターンで色を塗り分けているが、高くなるにつれて、色の組み合わせ効果も見えてきた。機能をもたない純粋な塔は、幾何学的な抽象彫刻である。集会所の内部を見ると、さまざまな飾り付けが増えていた。天井から吊り下げられた折り紙群、カラオケ大会の記念写真、標語などである。三角形のユニットは、微妙にズレながら、回転しつつ空に向かう。近隣の仮設住宅地の人たちからも、ここに何ができるか、大きな関心をもたれているようだった。全部で90段を積み、8mの高さに到達する予定だったが、日が暮れるのが早く、初日は全体の1/3程度で切り上げ、翌日に完成した。そして後日、これを「復活の塔」と命名する。また12月23日には、NHK BSの番組「地球テレビ:エル・ムンド クリスマス・スペシャル」において現場から中継された。

2011/12/12(月)(五十嵐太郎)

五十嵐太郎研究室『山田幸司作品集 ダイハード・ポストモダンとしての建築』

発行日:2011/11/20

2009年に亡くなった建築系ラジオの創設メンバー、山田幸司の作品集+追悼文集である。名古屋工業大学の北川啓介研で集めた資料を引き継ぎ、東北大学五十嵐研(担当は平野晴香)の編集によって、2年かけてようやく完成した。彼の卒計、SDレビュー入選作、代表作の《笹田学園》を含む実作、幻の自邸計画などのアンビルドを収録し、強度あるポストモダンを味わうことができる。なお、装幀もヤマダ・グリーンを基調としたブックデザインとした。

2011/12/05(月)(五十嵐太郎)

ライブラリーセミナー 著者が語る、建築本の楽しみ方ーサバイバル住宅編ー第2回ダンボールハウス

会期:2011/12/03

ハウスクエア横浜 住まいの情報館3階ライブラリー[神奈川県]

『ダンボールハウス』(ポプラ社、2005)の著者、長嶋千聡は、実は筆者が中部大学で教鞭をとっていたときの最初の卒論生である。ほかの先生がダンボールハウスを研究テーマと認めず、引き受けることになった。しかし、それぞれの住人と知り合いになってから調査を始める今和次郎の考現学風スケッチによる観察と分析が評判を呼び、卒論がとうとう書籍になった。ダンボールハウスが決してユートピア的な「0円ハウス」ではなく、ここでもお金を介在するリアリティのうえに成立していることを明らかにした労作である。

2011/12/03(土)(五十嵐太郎)

南相馬市プロジェクト「塔と壁画のある仮設集会所」ワークショップ

会期:2011/11/27~2011/11/28

南相馬市[福島県]

南相馬市の仮設住宅地にて、ワークショップとゼミ合宿を行なった。彦坂尚嘉による巨大壁画のある集会所の基本設計を、東北大の五十嵐研が担当したが、引き続き、学生らが大工の協力を得て、ベンチを制作した。2つのタイプがあり、ひとつは「南相馬市民のうた」のサビの楽譜を取り込んだもの、もうひとつは6個で1ユニットとなり、台形のピースをつなぐと、六角形になるタイプである。また塔を建てるプロジェクトも動きだし、その部材の運び込みと塗装を行なった。12月中に塔も完成する予定である。

2011/11/28(月)(五十嵐太郎)