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建築に関するレビュー/プレビュー

第8回芦原義信賞・竹山実賞表彰式

会期:2012/01/21

武蔵野美術大学[東京都]

審査委員長を務めた第8回芦原義信賞の表彰式に出席した。今回は、不動産とデザインの新しいシステムを組み立てるブルースタジオの大島芳彦と、蓄光性の塗料を床の傷にすりこむ若手の戸井田雄が選ばれた。同窓会自体はどこの建築学科にもあるが、同日は竹山賞の表彰式や卒計講評会も開催され、大学の縦のつながりを確認できるイベントは、意外にほかではないと思う。武蔵野美術大学の卒計展示を見ると、模型が大きいこと、美大ならではの表現があり、目を楽しませる。同大の建築学科にアーティストの土屋公雄が教えるようになって、彼のスタジオでは1/1の卒計をつくるようになったらしいが、屋外にて展開した地面をめくり上げるようなインスタレーションが印象に残る。

2012/01/21(土)(五十嵐太郎)

長谷川豪 展 スタディとリアル

会期:2012/01/14~2012/03/24

TOTOギャラリー・間[東京都]

思い切りがいい、作品構成だった。大きなテーブルの端にさまざまなスケールでプロジェクトの模型を置く。とくに興味深いのは、この展覧会を東日本大震災で被害を受けた石巻の幼稚園に建物を寄贈するプロジェクトに活用したことだ。屋外に1/1の鐘楼を建設し、会期が終わったら、現地に移築する。通常、建築展は、作品が商品化され、市場に流通するアートとは違い、終了後に多くの展示物が廃棄されてしまうが、このリサイクルは素晴らしい。

2012/01/20(金)(五十嵐太郎)

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御厨貴先生退職記念シンポジウム─権力の館をめぐって─

会期:2012/01/18

東京大学[東京都]

御厨貴の『権力の館を歩く』をテーマとした最終講義と座談会が行なわれたが、同書は各節がそれぞれ論文に発展しそうな一大鉱脈を発掘した本である。一般的に政治と権力の結びつきが弱いとされる日本において、どのような現場で空間と政治が結びつくかを読み込む。かといってフーコーのようなアノニマスな権力でもない。例えば、由比ケ浜の鎌倉文学館はかつて佐藤栄作首相の鎌倉別邸に使われた。三島由紀夫「春の雪」にも描かれた折衷的な洋館ではあるが、欧米の基準から見ると、これは超豪邸とは言えない。日本建築の権力表象は興味深いテーマだ。

2012/01/18(水)(五十嵐太郎)

ヴァレリオ・オルジャティ展

会期:2011/11/01~2012/01/15

東京国立近代美術館[東京都]

駆け込みで最終日に訪れた。スイスの建築家、ヴァレリオ・オルジャティは、とても知的な展示を行なっている。高台の1/33の模型群と、床に配した図面、映像、実物(部分)、そして彼を触発してきたイメージ。東京都現代美術館の建築展が提示する「これからの感じ」という雰囲気を見せるタイプとは大きく違う。ジョセフ・コスースのコンセプチュアル・アートをほうふつさせるような仕かけが、われわれの思考に「建築」を喚起させる。

2012/01/15(日)(五十嵐太郎)

玉置順/玉置アトリエ《成田山東京別院 深川不動堂》

[東京都]

見学したときは日曜で、現地は大にぎわいだった。なるほど、ここは宗教が生きていると実感できる場所である。既存部分の本堂を壊さず、むしろうまくとりこみながら、増改築を行なう。梵字をベースにした装飾的な外皮と、舞台装置としてつくられた内部空間を意図的に分離したデザインは、ポストモダン的と言えるかもしれない。変化が嫌われる神社に対し、進化を続ける仏教建築の現在形として興味深い試みだ。室内で行なわれる炎の護摩/祈祷は、太鼓を連打してクライマックスを迎え、凄まじい迫力である。

2012/01/15(日)(五十嵐太郎)