artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

《静岡県舞台芸術公園》

本部棟、野外劇場「有度」、屋内ホール「楕円堂」、稽古場、研修交流宿泊棟など[静岡県]

SPACの建築出身のスタッフに、静岡の舞台芸術公園を案内してもらう。21haという広大な山間に野外劇場、屋内ホール、稽古場、宿泊棟、本部棟が地形に寄りそうように点在している。磯崎新+鈴木忠志コンビだが、《グランシップ》よりも先に始まった施設だ。平地にそそり立つモニュメンタルな《グランシップ》と比べると、強いかたちを前面に見せない、控えめなデザインが対照的である。ほとんどの劇場は傾斜地を利用し、下に降りるかたちでの動線をもつ。磯崎好みのテアトロ・オリンピコの舞台形式を組み込む、楕円堂の演劇空間は、実に個性的である。

2011/11/18(金)(五十嵐太郎)

「建築、アートがつくりだす新しい環境─これからの“感じ”」展

会期:2011/10/29~2012/01/15

東京都現代美術館[東京都]

ヴィム・ヴェンダースによる立体映像、金獅子賞のバーレーン、銀獅子賞のスタジオ・ムンバイなど、ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展2010で紹介された多くの作品を展示していた。同じ長谷川祐子が両方の企画に関わっているからだろう。しかし、造船所跡のアルセナーレの赤茶けた空間においてカッコ良かった作品たちが、東京都現代美術館のホワイトキューブに持ち込まれ、規模や仕様が変更されると、相当のインパクトを失うのは残念だった。一方、屋外の平田晃久による制作パヴィリオンは、1/1の建築であり、実際の空間を楽しめる。

2011/11/13(日)(五十嵐太郎)

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《ソニーシティ大崎》

[東京都]

竣工:2011年3月

《ソニーシティ大崎》の見学会に参加した。駅前の140m四方に及ぶバイオスキンのファサードでは、多孔質な陶器製管内を雨水がめぐり、打ち水効果で都市を冷やす。悪者扱いされがちだが大きな建築だからこそできることを逆に考えたという。しかも、それによって多くの樹木を都市に植えたような効果をもたらす、オフィスビルである。内部は《ポンピドーセンター》のように無柱の大空間が広がっている。

2011/11/12(土)(五十嵐太郎)

シンポジウム 次世代の表現と可能性5「アジアに飛びだす建築家が提示する新しい造形」

会期:2011/11/11

建築会館ホール[東京都]

年末に行なう恒例のシンポジウムの第5回。今度はグローバリズムに絡めて、アジアをテーマとした。高雄などの国際コンペで前衛的な造形を提示する平田晃久、台湾と日本、あるいはデジタルとリアルを行き来する豊田啓介、上海に拠点を置く佐伯聡子=KUUらがその活動を語る。現在の日本にはない、新しいチャンスがあるアジアの建築界を知るよい機会となった。

上:豊田啓介《GRAVITY-FIELDS》
下:KUU《マイナスKハウス》(上海)

2011/11/11(金)(五十嵐太郎)

谷尻誠 展覧会「Relation」

会期:2011/10/25~2011/11/13

ビームスジャパン B GALLERY[東京都]

建築を浮かせたら、ということで、そのイメージによるインスタレーションの作品。一般の人にもわかりやすい、空中都市の模型である。部屋に入り、おお、どうやって浮かんでいるのかなあと見ていると、中央の微小なたわみと、小さな支持体が目にとまり、逆説的に重力の強さを感じる展示でもあった。

2011/11/11(金)(五十嵐太郎)