artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

「平成23年度七ヶ浜中学校建設基本・実施設計業務委託プロポーザル」2次審査会

会期:2012/02/05

七ヶ浜中学校[宮城県]

一次審査を通過した5人の建築家を招き、コンペの二次審査が行なわれた。それぞれのプレゼンテーションと質疑応答の後、審査では、教室群を集落のように散りばめ、振り切ったデザインの八重樫直人が議論の目玉になった。運営のプログラムとも関わることから、地元の教職員が受け入れ可能かを探るが、難しいことが判明。最終的にはもっとも美しく、かつ柔軟でアクティブなシステムをもつ乾久美子の案に決定した。リトルスペースと呼ぶ小空間がさまざまな場をつくるデザインである。次点となった遠藤克彦は、七ヶ浜のここにしかない風景を意識した提案だった。

写真:上=八重樫直人案、中=乾久美子案、下=遠藤克彦案

2012/02/05(日)(五十嵐太郎)

テラスモール湘南

テラスモール湘南[神奈川県]

昨年末にオープンしたテラスモール湘南を見学した。この手の施設としては閉鎖的になっておらず、連続する屋外テラスを特徴としつつ、隣接する低層棟のヴィレッジや病院建設まで一体化した新しい街再開発に驚かされる。ただし、モール空間のスペクタクルとしては、同じく駅前のラゾーナ川崎やイオンモール名取の方がインパクトがある。それにしてもクルマでしかアクセスできない郊外というイメージは完全に払拭された。駅の正面に立地し、公共交通機関でも簡単に訪れることができる。ラゾーナ川崎と同様、工場跡地を開発したものだが、これで完全に駅の表裏が反転するだろう。

写真:上・中=《テラスモール湘南》 下=《湘南ヴィレッジ》

2012/02/03(金)(五十嵐太郎)

現代美術展 in とよはし

会期:2012/01/17~2012/02/19

豊橋駅南口駅前広場、名豊ギャラリー、名豊ビル5階イベントホール、ギャラリー48、豊橋市公会堂前広場、豊橋公園、豊橋市美術博物館、愛知大学大学記念館、豊橋丸栄9階イベントスペース、こども未来館[愛知県]

続いて豊橋に移動し、「現代美術展 in とよはし」を見る。駅前や百貨店から公園、美術館、大学まで、街なかの各地にアートを展開していた。正直、微妙な作品も混ざっており、ばらつきがないわけではない。もっとも、公園の石を一列に並べ変えた味岡新太郎、図鑑の絵を切り抜く渡辺英司、音の出る木の彫刻でワンフロアをうめつくした石川理、不思議な学習日記×アメコミヒーローの杉山健司&浅田泰子など、バリーションに富む作品は、豊橋の街歩きとともに楽しめた。

写真=味岡新太郎(中)、渡辺英司(下)

2012/01/30(月)(五十嵐太郎)

New Creators Competition2012 展覧会企画公募 EXHIBITIONS

会期:2012/01/16~2012/02/18

静岡クリエーター支援センター 2Fギャラリー・3F[静岡県]

企画公募の審査を担当した静岡CCCの展覧会を見る。高野友美は雨を素材に用いて作品をつくり、音と映像によるインスタレーションを行なう。建築家の谷川寛は、計ることをテーマに、教室にさまざまなタイプの装置をおく。とりわけ川の分岐点をフィールドワークしたプロジェクトは労作である。そしてオフ・ニブロールの高橋啓祐は、暗闇の中で緊張感のある音と映像が絡む、小さな家型/巣箱が並ぶ空間を出現させていた。多くを語らないが、震災を含めて、多くのことを想像させる。新人とは言えないので、充分に巧い作品になるとは思っていたが、それ以上に圧倒的なクオリティだった。

写真=高橋啓祐《ウラヤマの鳥》

2012/01/30(月)(五十嵐太郎)

北川貴好「フロアランドスケープ──開き、つないで、閉じていく」

会期:2012/01/14~2012/02/05

アサヒ・アートスクエア[東京都]

あいちトリエンナーレ2010や横浜トリエンナーレ2011に出品した北川も、武蔵野美術大学の建築出身のアーティストである。穴、水、植物を使った、これまでの集大成的な作品だった。ただし、屋外だとラディカルな手法が、室内だと少し違う意味をもつように思えた。個人的には、2フロアを展示に使ったことで、おそらくバックヤードで普段は見られない階段を体験することができたのがよかった。それにしても、しばらく訪れていなかったが、スタルクのスーパードライホールは強力な存在感を放つ。背後に見える東京スカイツリーのように一番高くなくても、純粋にかたちと色だけで、一度見たら忘れられないインパクトをもっている。ここまできたら、バブル期の遺産として長く残って欲しい。しばらく、日本はこういうデザインをつくらなそうだし。

2012/01/27(金)(五十嵐太郎)