2020年07月01日号
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artscapeレビュー

民都大阪の建築力

2011年09月01日号

会期:2011/07/23~2011/09/25

大阪歴史博物館[大阪府]

大阪歴史博物館の開館10周年を記念して、大阪の近代建築を図面や写真、関連什器等により紹介する展覧会。大阪の近代建築についてはこれまで多数の学術書や書籍が刊行されており、展覧会も幾度となく開催されている。それほどポピュラーであるだけに愛好者の目も厳しいテーマだが、本展では建築家ごとに作品を見せるという定番のやり方ではなく、大阪の学区制度と学校建築との関連性、ゼネコンが独自に作成した透視図、現存建築のオーナーや現代美術家によるユニークな保存活動といった新たな視座からこのテーマに取り組んでいる。これらの学際的な視座から提示される興味深い事実は、この分野がけっして研究し尽くされたものではないことを再認識させた。だが、切り口がユニークなだけに、一つひとつのコーナーがもう少し掘り下げた内容であればなお良かっただろう。一般に普及し、専門家も多いテーマだけに、誰にでもわかる展示という博物館の慣例を破ってしまっても良かったのではないか。大阪育ちではない筆者にとって多少残念だったのは、本展には作品の場所を記した地図や、現存する建物であるか否かについての情報が見当たらなかったことだ。東京と異なり、現存する近代建築が少なくない大阪の街は、外部の人間から見ればすこぶる魅力的だからである。数はけっして多くないものの、ガラスの1枚1枚に意匠が施された旧鴻池本店の豪奢なステインドグラスや生駒ビルヂングの日本版アールデコの照明器具、村野藤吾のデザインによるカフェの什器等、工芸・デザインの展示品も興味深かった。[橋本啓子]


《旧鴻池本店ステインドグラス》大正3年(1914年)株式会社鴻池組蔵

2011/08/15(月)(SYNK)

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