artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

さすらいの日本画展

会期:2013/05/20~2013/05/25

吉田町画廊[神奈川県]

タイトルから察するに、一匹狼の無頼派による根無し草的な展示かと思ったら、ぜんぜんそんなことはなく、女子多数の日本画小品展だった。「さすらい」とは銀座の画廊へ巡回するかららしい。もっと各人しっかりさすらってほしい。

2013/05/23(木)(村田真)

伊東宣明“芸術家”

会期:2013/05/21~2013/06/02

Antenna Media[京都府]

かつて就職した企業でスパルタ研修を受けた経験がある伊東が、その記憶をもとにつくった作品を発表した。会場1階には美術史に名を残す巨匠10名が残した金言と、彼らの代表作をトレースした平面作品が並んでいる。そして傍らには、海岸の岩場に立ち金言を絶叫する伊東を捉えた映像作品が。続く2階では、伊東が教官になり、女性アーティストを精神的に追い込みながら先ほどの金言を教え込んでいた。伊東によると、こうした企業研修は外側から見ると異常さが際立つが、実際に体験すると達成感や満足感で得も言われぬ感動に満たされるそうだ。また、人間を型にはめる点では、方法論こそ違えど企業も美術大学も同じだという。制度と人間の関係を問う、非常に考えさせられる作品だった。

2013/05/21(火)(小吹隆文)

田代一倫「はまゆりの頃に 2012年 冬」

会期:2013/05/02~2013/06/02

photographers' gallery / KULA PHOTO GALLERY[東京都]

田代一倫が東日本大震災直後の2011年4月から撮り始めたのが「はまゆりの頃に」のシリーズ。東北各地を歩き回り、そこで出会った人たちに声をかけ、カメラに正対したポーズでシャッターを切る。被写体の周囲の状況をなるべく取り入れ、画面の中央に全身像をおさめるスタイルは、最初からまったく変わっていない。60×50.8センチのサイズにプリントし、展覧会の会場に並べられた写真には、撮影した日付と場所のデータが添えられているだけだが、同時に制作されるポートフォリオブックには、田代と交わした会話や彼の感想などの短いコメントが付されている。このテキストと写真との微妙な関係のあり方も、ずっと同じ形で続いてきている。
photographers' gallery とKULA PHOTO GALLERYで、季節を追って開催されてきた展覧会も回を重ね、撮影したモデルの数も1,100人を超えたそうだ。ずっと写真を見続けていると、田代の被写体との向き合い方が少しずつ変わってきたように思えてくる。震災の被災者だけではなく。前回くらいから、以前はあえて避けてきた「風俗」関係の店で働く人たちにもカメラを向けるようになった。今回は福島県福島市、いわき市、南相馬市などで撮影した写真が並んでいるが、KULA PHOTO GALLERYの展示はすべて「東京電力・福島第一原子力発電所作業員」のポートレートだ。青いビニールの作業衣を身につけた男たちが、時には満面の笑顔を見せて写っている。田代の撮影の姿勢が、より柔らかで広がりを持つものになり、写真とテキストの説得力も増してきているのだ。
写真シリーズとして、ほぼ完成されてきたのではないかと思っていたら、田代自身もそろそろ写真集にまとめたいという気持ちでいるようだ。秋に刊行予定で、もう編集作業に入っているという。1,000人以上のポートレートをすべておさめるには、相当無理をしなければならないかもしれないかもしれないが、彼のまっすぐな写真がもつ気持ちのよさを、しっかりと伝えてくれる写真集になってほしいと思う。

2013/05/21(火)(飯沢耕太郎)

プレビュー:國府理 展 未来のいえ

会期:2013/06/22~2013/07/28

西宮市大谷記念美術館[兵庫県]

國府理は、ナンセンスな乗り物や環境問題をテーマにしたメカ型・装置型立体作品で知られる中堅作家だ。昨年発表した作品《水中エンジン》では、自動車のエンジンをプールに沈め、水中で強引に起動させることにより、福島第一原発の事故を想起させる情景をつくり出した。以前から関西では確固たる評価を確立していた彼が、ついに美術館で大規模な個展を開催する。初期から近年の作品が勢揃いする本展で、その魅力を味わってほしい。メカ好き工作少年が紡いだ夢に、SF的テイストとエコロジー思想を散りばめた作品は、美術への理解の有無に関係なく、幅広い層にアピールするはずだ。

2013/05/20(月)(小吹隆文)

プレビュー:Art Shower 2013 ─summer─

海岸通ギャラリー・CASO[大阪府]

会期:2013/06/18~2013/07/07(公開制作)、
2013/07/09~07/21(展覧会)
公開制作と作品展示を一体化したユニークな公募展が、今年も開催される。会場は6つの展示室を有し、小さな美術館並みの展示空間を誇るギャラリー。参加者はその一角を占有し、約3週間の公開制作の後、同じ場所で作品展示を行なう。その目的は、完成品だけでなく制作プロセスまでも可視化することにより、観客とアーティストとギャラリーの新たな関係性・可能性を模索することだ。まだ2回目ということで未整備な部分もあるが、大きな可能性に賭ける主催者の心意気を評価したい。

2013/05/20(月)(小吹隆文)