2019年07月15日号
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artscapeレビュー

田代一倫「はまゆりの頃に 2012年 冬」

2013年06月15日号

会期:2013/05/02~2013/06/02

photographers' gallery / KULA PHOTO GALLERY[東京都]

田代一倫が東日本大震災直後の2011年4月から撮り始めたのが「はまゆりの頃に」のシリーズ。東北各地を歩き回り、そこで出会った人たちに声をかけ、カメラに正対したポーズでシャッターを切る。被写体の周囲の状況をなるべく取り入れ、画面の中央に全身像をおさめるスタイルは、最初からまったく変わっていない。60×50.8センチのサイズにプリントし、展覧会の会場に並べられた写真には、撮影した日付と場所のデータが添えられているだけだが、同時に制作されるポートフォリオブックには、田代と交わした会話や彼の感想などの短いコメントが付されている。このテキストと写真との微妙な関係のあり方も、ずっと同じ形で続いてきている。
photographers' gallery とKULA PHOTO GALLERYで、季節を追って開催されてきた展覧会も回を重ね、撮影したモデルの数も1,100人を超えたそうだ。ずっと写真を見続けていると、田代の被写体との向き合い方が少しずつ変わってきたように思えてくる。震災の被災者だけではなく。前回くらいから、以前はあえて避けてきた「風俗」関係の店で働く人たちにもカメラを向けるようになった。今回は福島県福島市、いわき市、南相馬市などで撮影した写真が並んでいるが、KULA PHOTO GALLERYの展示はすべて「東京電力・福島第一原子力発電所作業員」のポートレートだ。青いビニールの作業衣を身につけた男たちが、時には満面の笑顔を見せて写っている。田代の撮影の姿勢が、より柔らかで広がりを持つものになり、写真とテキストの説得力も増してきているのだ。
写真シリーズとして、ほぼ完成されてきたのではないかと思っていたら、田代自身もそろそろ写真集にまとめたいという気持ちでいるようだ。秋に刊行予定で、もう編集作業に入っているという。1,000人以上のポートレートをすべておさめるには、相当無理をしなければならないかもしれないかもしれないが、彼のまっすぐな写真がもつ気持ちのよさを、しっかりと伝えてくれる写真集になってほしいと思う。

2013/05/21(火)(飯沢耕太郎)

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