artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

Unknown Life

会期:2012/08/23~2012/09/05

アユミギャラリー+アンダーグラウンド+早稲田スコットホールギャラリー[東京都]

藍画廊とギャラリー現でも「UNKNOWNS」という展覧会やってたし、アート界で「アンノウン」は流行なんだろうか。50すぎのオヤジは「アンノン族」を思い出すが。こちらは昨年8月にカトウチカの呼びかけで始まったシリーズ展で、今回が3回目。3.11以降の予測できない未知の世界に踏み出していこうとの思いが込められているようだ。今回は神楽坂と早稲田の3カ所を会場に計18人が参加。会場ごとに「Body 身体」(アユミギャラリー)、「Travel 旅・変容・変化」(アンダーグラウンド)、「View 視界」(早稲田スコットホールギャラリー)とテーマを分けている。どこも民家だったりホールだったり、もともとアートスペースではない点が展示の難しいところであり、またおもしろいところでもあるのだが、壁をはうツタをプリントしたカーテンを窓に設置した石井香菜子を除いて、場所性を意識した作品は意外に少なかったなあ。わりとキマジメな作品が多いなか、キャンバス上辺の余った布を耳のように突き出した《いかり猫》や、キャンバスから布を上半分脱がせて木枠を滑らかに削った《ヌード2012》などの「絵画」を出した原游は、「シュポール/シュルファス」もズッコケるほどスットボケている。

2012/08/28(火)(村田真)

福山竜助「薄明かりの風景」

会期:2012/08/04~2012/08/26

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

影絵のような作品。薄く溶いた絵具を虹色に地塗りし、その上から黒い絵具で植物や動物や波のような装飾模様を描いていく。よく見ると、錯視の図形のように子どもの姿が浮かび上がってくるものもある。10点ほどの作品はすべて同様のパターンで、額縁もシンプルな黒に統一してある。オリジナル度は高いが、こればっかり見せられてもなあ。

2012/08/26(日)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00018097.json s 10053731

齋藤春佳「思い出せる光景と思い出せない光景を見た地球から見える星も見えない星も公転しあっている、地球含め」

会期:2012/08/04~2012/08/26

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

幅1メートルほどの長ーいロール紙に人物やら草花やら身近なものどもを、ときに重ね合わせながらカラーペンで色分けして描き、床に立てている。なんだろうこれは。ヒントはたぶん長ったらしいタイトルにありそうだ。たとえば星座というものは、それを構成する星たちが近くに固まって存在するわけではなく、互いに遠く離れていながらも地球からは見かけ上近く感じられるだけだということ。つまり物事は近くにあるように見えても実は遠かったり、なんの関係もなかったりするものだと。さまざまなものがランダムに描き込まれたこのドローイングもそのように見ることができる。

2012/08/26(日)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00018097.json s 10053730

村上佳苗「うみやまのあいだ」

会期:2012/08/04~2012/08/26

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

やまと絵の遊楽図とボッスの《快楽の園》を足して2で割ったような連作絵画。技法的には西洋画だが、須弥山のような山が現われたり、獅子舞の獅子が顔をのぞかせたり、画面に霞がかかっていたり、絵の世界観(宇宙観というべきかも)は東洋的だ。各画面にはたくさんの人が描かれているが、絵と絵のあいだの壁にもまるで聖地を巡礼するかのように人の姿が直接描かれているのがおもしろい。これは労作。

2012/08/26(日)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00018097.json s 10053729

長谷川義朗(オル太)「刺し身処 五右衛門」

会期:2012/08/04~2012/08/26

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

長谷川は、物量と泥臭さと力仕事で勝負するオル太のメンバーのひとりだが、今回はソロショー。ギャラリー中央には豊漁を願う魚介類満載の巨大熊手が立ち、壁には幅5メートルはありそうなテント地に「刺し身処五右衛門」の看板絵がペンキで描かれている。この「刺し身処 五右衛門」は長谷川の故郷である福井県小浜市に実在する海鮮料理屋で、この看板絵も店主に依頼されて制作したもので、実際にお店に飾られているらしい(よく見ると「おばま」つながりで現アメリカ大統領の肖像も)。かたわらのモニターには、この看板絵を担いで国会前の反原発デモに参加したときの映像が流れている。そういえば小浜市は“原発銀座”ともいわれる若狭湾に面した街で、現在唯一稼動している大飯原発から20キロ圏内に位置するという。なるほど、刺身~小浜~大飯原発~反原発デモと芋づる式につながっているのだ。これは明快でわかりやすい。

2012/08/26(日)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00018097.json s 10053728