artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
2012・仙台アンデパンダン展/せんだい春のアート散歩/picnica hentecos. 3 今回は4人にお願いしました展

[宮城県]
2012・仙台アンデパンダン展がスタートした。むろん、東京や名古屋などに比べると、現代美術のギャラリーは決して多くはないが、こうしたかたちで市内6つのアートスペースが同時連携するのは初めてらしい。主に宮城県、ときどき関東圏の作家が入っている。大学近くのギャラリー・ターンアラウンドとart room Enomaに立ち寄る。前者はカフェも併設し、所狭しと作品が並ぶ。また、この日は「せんだい春のアート散歩」の期間中でもあった。仙台の美術カフェ、PICNICAの展示法が興味深い。同一作家とは思えない画風がばらばらの小作品がランダムに配置されている。「picnicahentecos.3 今回は4人にお願いしました」展では、実は麻生日出貴、伊東千紘、芳賀一彰、本田崇の絵をシャッフルして混ぜていたのである。しかし、本当にひとりだったら、すごいかもしれない。
写真:ターンアラウンド
2012/05/22(火)(五十嵐太郎)
ZOKEI賞選抜作品展

会期:2012/05/14~2012/06/02
東京造形大学付属美術館[東京都]
造形大では毎年「ZOKEI展」を開き、優秀作品に「ZOKEI賞」を与えているが、今回は受賞作品のなかから選抜した絵画、彫刻、デザイン、映像など19人の作品を展示。絵画だけに絞ると、さまざまな「うなじ」をクローズアップして描いた上田裕子のリトグラフがよかった。画面のほぼ上半分を黒(髪の色)が占め、下3分の1ほどが肌色におおわれ、よく見るとウブ毛や陰影も描かれているけれど、遠目にはモノクロームの色面抽象に見えなくもない。ペインティングではありそうな図像だが、大判の版画ならではのフラットな感じがよく出ている。一方、安達裕美佳の作品は「五美大展」で見たときは冴えなかったが、ここでは湯浅加奈子の絵画ともども色彩が映えている。こうした鮮やかな色づかいはこの世代特有のものなのか、それとも個性に由来する天然ものなのか……。
2012/05/21(月)(村田真)
フジイタケシ展

会期:2012/05/15~2012/05/20
GALLERY SUZUKI[京都府]
以前からも建物や構造物の「壁」をモチーフに作品を制作していたフジイタケシの個展。素材にはダンボールも使われているのだが、錆び、崩れ、朽ちていく構造物のありさまを表現する作品には静謐な趣きがあり、時間と物質の関係を思わせて想像を掻き立てる。穏やかな画面に多くの物語が潜んでいるような、重厚感のある佇まいや色も印象的。今回は久しぶりの個展だったようだがまた次の発表も楽しみだ。
2012/05/20(日)(酒井千穂)
廣田美乃 展

[京都府]
大学在学中に初個展を開催してから3回目の発表となる廣田美乃の個展。日常の些細な感情や出来事をモチーフに、少年や少女をシンプルな色彩で描いたその作品は、どこか寂寞とした雰囲気もあり気持ちにひっかかる。同時開催中だったもうひとつの個展会場は古書店だったのだが、壁面に並んでいた小さな作品は、ホワイトキューブの空間で見るのとはまた異なる印象だったので少し驚いた。色や筆致は平坦なのだが、テクニックやタイトルの魅力が以前よりも増して、繊細な感情の振れ幅が感じられるものに仕上がっていた。
ギャラリーモーニング:http://gallerymorningkyoto.com/2012exhibition/hirotayoshino2012.html
会期:2012/05/15~2012/05/27
レティシア書房:http://book-laetitia.mond.jp/
会期:2012/05/08~2012/05/20


展示風景
2012/05/20(日)(酒井千穂)
笹岡啓子「久万山真景」

会期:2012/05/08~2012/05/20
photographers' gallery/ KULA PHOTO GALLERY[東京都]
久万高原町は愛媛県中南部に位置し、平均標高800メートルという山間の町だ。笹岡啓子は町立久万美術館で2009年に開催された萱原里砂、高橋あいとの3人展「歸去來兮(かへりなんいざ)」のため、2008年にこの町の風景を撮影した。そのときの作品を再構成して展示したのが、今回photographers’ galleryとKULA PHOTO GALLERYで開催された個展「久万山真景」である。
笹岡の6×6判のフォーマットの写真は、例によって痒い所に手が届くように、細やかに山や河や岩の多い久万の眺めを写しとっている。自然だけではなく、農地や山を切り崩す工事現場などにもカメラを向ける。タイトルの「真景」というのは、江戸時代末期に旅の絵師、遠藤広実が描いた全3巻の絵巻物「久万山真景絵巻」を踏まえているようだ。やはり久万美術館に収蔵されているこの絵もまた、久万の風景を丁寧に、その細部にまで目を凝らして描き出したものだ。笹岡はこの絵巻物の描法を意識しつつ、写真特有の公平で滑らかな視線を活かし切って作品化した。ただ、展示作品はすべて2008年、つまり4年前に撮影されたものだけなので、この仕事が完成したものなのか、それとも続きがあるのかがよくわからない。もう少し長いスパンで撮影していくことで、さらに厚みのあるシリーズに成長していくのではないかと思う。
2012/05/19(土)(飯沢耕太郎)


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