artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

プレビュー:淀川テクニック個展「はやくゴミになりたい」

会期:2012/06/16~2012/07/08

art zone[京都府]

大阪、淀川の河川敷をおもな活動場所として、捨てられたゴミや漂流物を用いて作品制作を行なっているアートユニット、淀川テクニック(柴田英昭、松永和也)。彼らが扱うゴミという“モノ”と、ゴミという素材を扱うという“コト”に注目し、展示や参加型のイベントを通して、ゴミの問題やわれわれの生き方について考えようという展覧会。淀川テクニックと一緒に鴨川へゴミ拾いに行き、写真などの記録を取りながら、それらが辿ってきた時間を想像して「ゴミの履歴書」を作成するというワークショップが面白そう。6月17日(日)と7月1日(日)の2回開催される。

2012/05/13(日)(酒井千穂)

プレビュー:ゆらめきとけゆく──児玉靖枝×中西哲治展

会期:2012/06/16~2012/07/13

京都芸術センター[京都府]

ベテラン作家と若手作家とが向き合い、互いに触発し合うことから、現代美術の抱える問題を提起するという「新incubation」の第4回目。今回は児玉靖枝と、2011年に京都市立芸術大学を卒業した中西哲治の作品が展示される。静謐の時間のなかに立ち現われるような、存在の気配を感じさせる児玉の絵画に対し、力強いストロークで描かれる鮮やかな色彩と絵の具の濃厚な質感が印象的な中西の作品。描く対象やアプローチは異なるが、二人の作家はともに深い空間のなかにゆらめく気配を引き出そうとしている。展覧会初日のアーティスト・トークをはじめ、7月7日には中西哲治と厚地朋子(美術作家)、7月8日には児玉靖枝×木下長宏(美術史家)の対談も開催される。

2012/05/13(日)(酒井千穂)

草間彌生 永遠の永遠の永遠

会期:2012/04/14~2012/05/20

埼玉県立近代美術館[埼玉県]

草間彌生の近作を見せる展覧会。《愛はとこしえ》シリーズと《わが永遠の魂》シリーズからあわせて80点あまりが一挙に展示されたほか、南瓜をモチーフとした立体作品や巨大なバルーンの作品、鏡と水によって光を無限反射させる《魂の灯》なども発表された。
たしかにエネルギーに満ち溢れてはいる。むしろ以前にも増して横溢しているかのようだ。だが、それを的確に感じるには、少々会場が狭すぎた。団体展のような二段がけの展示方法はともかく、一つひとつの絵をじっくり鑑賞させるための適度な距離感が満足に確保されていないため、絵のなかの息が詰まるような圧迫感や何かに追われるような焦燥感はよく伝わってくるものの、草間絵画の真骨頂ともいえる抜けるような解放感はあまり感じられなかった。この美術館の天井の低さが、そのような印象を強くしていたことはまちがいないだろう。
「永遠の永遠の永遠」と言うのであれば、もっと広大な空間でその無限反復を見せるべきだったように思う。

2012/05/12(土)(福住廉)

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ロバート・プラット展─幻小屋と飾りの隠者

会期:2012/05/05~2012/05/27

ハイネストビル[京都府]

自然と人工物の対比を、デジタル画像のピクセルを思わせる描法で表現していたロバート・プラット。本展では、ヨーロッパの森の隠者と東洋の禅画をもとにした絵画作品を発表した。また、会場中央にはテントと稲藁を用いた小屋が設置されており、その内部ではカメラ・オブスキュラで作品が見られるようになっていた。さらに、会場内はスモークが立ち込めていて、まるで薄い霧のなかで作品を見ているかのようだった。これらは、絵画を「見る」行為を再考するための積極的な演出であろう。彼は前回の個展後に英国に帰国したので、今後作品を見る機会は滅多にないと思っていた。それがわずか2年で再会できたのだから嬉しい限りだ。聞けば、現在はアメリカのミシガン大学で教鞭を執りつつ制作しているとのこと。今後も日本で継続的に個展を行なってほしい。

2012/05/12(土)(小吹隆文)

都築響一 presents「妄想芸術劇場・ぴんから体操」

会期:2012/04/30~2012/05/12

ヴァニラ画廊[東京都]

1990年代初めから現在まで、20年にわたって写真投稿雑誌のイラストページに自作を投稿し続けているアーチスト「ぴんから体操」氏。アイコラ、モノクロのペン画、色鉛筆によるカラーのイラストなど、長いあいだに表現のスタイルも、描かれるものも変化していますが、ジャンルとしては「春画」、テーマは「エロ」と「グロ」と「スカトロ」です。イラストばかりではなく、妄想の物語が付されているところは、ヘンリー・ダーガーを彷彿とさせます。どのような作品なのかは事前に知っていましたが、実物のインパクトは想像以上のもので、ヴァニラ画廊を出たあとクラクラと眩暈がしました。描かれたテーマのインパクトもありますが、作品から溢れ出る生々しいエネルギーにあてられた感じです。エロでもグロでもスカトロでも、数枚ならいいでしょう。しかし、すさまじいヴォリューム。編集部が保存していた膨大な作品が壁面いっぱいに貼りめぐらされ、両面にコラージュされた印刷物が天井から吊された透明なシートに展示されています。20年間、途中中断もあるものの、多いときには月産30点もの作品を投稿しているのだとか。趣味というレベルではありません。これらの作品、作品づくりはぴんから体操氏の日常生活そのものなのです。世間でアートといわれるものは、たとえ生理的な欲求が主題にあっても、それはなにか別のものの形をまとって表現され、それゆえに分析や批評が存在するのだと思うのですが、この空間ではまるでつくり手の脳みその中に飛び込んだかのよう。押し寄せてくる直接的なイメージの洪水に溺れそうになります。おどろいたことに、投稿雑誌界にはぴんから体操氏と同様に長期にわたって作品を送り続ける投稿者が他にも多数いるのだそうです。そうした「アーティスト」たちも「作品」も、「こちら側」に出てくることはなかなかありませんが、現実に社会を構成している文化のひとつであるという事実もまた無視することはできません。優れたアウトサイダーを掘り起こしてくる都築響一さんの情熱にも、いつもいつも驚嘆させられます。[新川徳彦]

2012/05/12(土)(SYNK)