artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

DIAプロジェクトほか

[ベトナム・ホーチミン]

10数年ぶりに訪れたホーチミンには、以前はなかった超高層ビルが出現しており、そのスカイデッキから展望すると、都市計画が整然としていることがよくわかる。市内の庁舎や劇場などの様式建築を見学した後、郊外に向かい、リチャード・ストレイトマター・トランのアトリエ、DIAプロジェクトを訪問した。さまざまなアイデアをもつアーティストであり、部屋には楽器も並んでいた。美術以外に建築やポストモダン系の理論書が多いだけではなく、動植物を育てており、不思議な実験室というおもむきだった。

写真:上=スカイデッキからの眺め、下=DIAプロジェクト

2012/03/12(月)(五十嵐太郎)

山口晃「望郷──TOKIORE(I)MIX」

会期:2012/02/11~2012/05/13

メゾンエルメス8階フォーラム[東京都]

分厚いガラス窓に囲まれた天井の高いフォーラムに、絵画の展示には不向きなこの空間に、絵師山口晃はどのように対処するか、そこが楽しみだった。しかしまさかこんな「解」を出してくるとは思わなかった。黒々とした電信柱を5、6本立てたのだ。その電信柱には山口の絵に出てくるようなゴチャゴチャとしたものが付随していて、そのうちの1本の下には便器までついている。この電信柱のシルエットはなつかしく、「三丁目の夕日」のような昭和の香りがする。その向かいの、いつもは壁に閉ざされた空間は床に少し斜めに角度がつけられ、そこにドローイングを展示。また、もう一方の部屋では、立て看のようなパネルに大きな東京の図を制作中だ。英語のタイトルは「TOKIOREMIX」で、Eの上にIが重ねられ、「東京リミックス」とも「ときおりミックス」とも読める。遊び心に満ちた展覧会。

2012/03/12(月)(村田真)

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ロトチェンコ「彗星のごとく、ロシア・アヴァンギャルドの寵児」

会期:2012/03/02~2012/03/27

ギンザ・グラフィック・ギャラリー[東京都]

革命前後のロシア/ソ連を代表するアーティスト、ロトチェンコによるポスター、コラージュ、写真、ドローイングなどの展示。やはり赤が主体で、ロシア語と図像の組み合わせがいま見ても斬新だ。壁にも赤や黒でロシア語や矢印などの記号が大きく書かれ、展示内容を強調しているが、ちょっとやりすぎの感がしないでもない。監修に奇才・矢萩喜從郎が加わっている。

2012/03/12(月)(村田真)

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平良美樹 個展「イキモノ譚(ばなし)」

会期:2012/03/03~2012/04/01

東京画廊[東京都]

これは一風変わった作品。熊の毛皮が人の姿のようにいくつか立っていて、その足下には漢字の書かれた古い紙がたくさん積まれている。なにかよくわからないけどフォークロアの匂いがする。奥のコーナーでは、トカゲとヒョウタンを足して2で割ったようなかたちの人形の表面にも漢字が書かれ、花咲か爺さんや鶴の恩返しのような昔話が壁に貼られている。この昔話が荒唐無稽でつい読みふけってしまう。かつて人と自然が不可分だった時代、いとも簡単に人間は動物に、動物は人間に変身していた。そんなプリミティブな世界観のもとに日本各地に伝わる口承文芸を集め、それを文字化、立体化しているらしい。美術作品として見ると「つたないインスタレーション」かもしれないが、そこに漂う気配は久しく現代美術に欠けていたなにかを感じさせる。作者はまだ20代の書家で、GEISAIで銀賞などを受賞しているという。

2012/03/12(月)(村田真)

鈴木紗也香 展

会期:2012/03/05~2012/03/17

ギャラリーQ[東京都]

パステルカラー主体の明るい色彩で身近なものや空間を描いている。直線で仕切られたフラットな部分とフリーハンドによる筆触を強調した薄塗りの部分があり、両者の異質な要素の組み合わがじつにうまい。ただこのテの絵は最近とても多いので、いかに差異化を図るかが今後の課題だ。

2012/03/12(月)(村田真)