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平良美樹 個展「イキモノ譚(ばなし)」

2012年04月15日号

会期:2012/03/03~2012/04/01

東京画廊[東京都]

これは一風変わった作品。熊の毛皮が人の姿のようにいくつか立っていて、その足下には漢字の書かれた古い紙がたくさん積まれている。なにかよくわからないけどフォークロアの匂いがする。奥のコーナーでは、トカゲとヒョウタンを足して2で割ったようなかたちの人形の表面にも漢字が書かれ、花咲か爺さんや鶴の恩返しのような昔話が壁に貼られている。この昔話が荒唐無稽でつい読みふけってしまう。かつて人と自然が不可分だった時代、いとも簡単に人間は動物に、動物は人間に変身していた。そんなプリミティブな世界観のもとに日本各地に伝わる口承文芸を集め、それを文字化、立体化しているらしい。美術作品として見ると「つたないインスタレーション」かもしれないが、そこに漂う気配は久しく現代美術に欠けていたなにかを感じさせる。作者はまだ20代の書家で、GEISAIで銀賞などを受賞しているという。

2012/03/12(月)(村田真)

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