artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

riya個展「11」eleven

会期:2012/02/01~2012/02/21

DMO ARTS[大阪府]

着色した紙を即興的な感覚で切り抜き、人間、動物、星、雲、炎、波、眼などのモチーフを組み合わせたグラフィカルな平面作品。洗練された現代性とスピリチュアルな世界観をナチュラルに融合させているのが興味深い。DMO ARTSでは、オリジナル作品を15部限定のジークレー版画にして9,800円で販売する初心者向きカテゴリー「MY FIRST ART」を展開しているが、そこでも彼女の作品は好調なようだ。本展で初めてオリジナル作品を見て、なるほどこれは売れるはずだと納得した。

2012/02/01(水)(小吹隆文)

第60回東京藝術大学卒業・修了作品展

会期:2012/01/29~2012/02/03

東京藝術大学大学美術館ほか[東京都]

今年の東京芸大の卒展はなかなか秀作が多かったように思う。それは、作品の平均値が高かったからだとも言えるが、その一方で「つくる」ことと同時に「見せる」ことにも関心を払った学生が多かったからだ。寺木南の《純粋大衆芸術》は、人体がまぐあう性愛のシーンを描いた皿を壁面に展示した作品だが、一部の皿にプロジェクターで動画を投影するなどの工夫をして、食と性、生と死の問題を多面的に表現していた。豊永恭子の《地を愛でる》は、彫像作品だが、来場者に提灯を手渡し、暗い室内に置かれた彫像をその弱い明かりで照らし出して見せた。暗闇の中から浮かび上がる彫像はなんともエロティックだった。同じく彫刻の宮原嵩広は、階段の脇にあるデッドスペースを巧みに使用した作品で度肝を抜いた。狭い空間に入ると、コンクリートの壁面が円状に大きく凹んでいる。壁面全体をコンクリートで厚みを持たせ、その中央に凹部を設けたわけだ。なるほど、うまい具合に考えたものだと感心していたら、それだけではなかった。対照的な位置にある、もうひとつの階段脇の空間に入ると、そこにあったのは凸部のコンクリート。同じ要領で、対照的な場所に、凹凸をそれぞれ作りだした発想と技術が抜群にすばらしい。

2012/01/31(火)(福住廉)

中山玲佳「Sleeping diary──楽園へ」

会期:2012/01/21~2012/03/10

MORI YU GALLERY KYOTO[京都府]

昨年VOCA賞を受賞した中山玲佳の個展。鳥や動物、植物などのモチーフは見たことがあったのだが、今展で展示されていた新作には、教会などの建築彫刻や宗教絵画に登場する天使や使者のような人物のモチーフも描かれていた。唐草模様のようにうねりながら画面に広がる鮮やかな色彩と無数の繊細な鉛筆の線、それをいっそうドラマチックに印象づける闇のような黒い色面。圧倒的な迫力も感じる中山ならではの物語性にあふれた作品世界は、さらに神秘性を増して、なおかつ逞しい生命感にも溢れていた。3月には京都市立芸術大学ギャラリー @KUCAで開催される「New Contemporaries」 展(3月3日~25日)にも出品の予定だという。楽しみにしている。


会場風景

2012/01/31(火)(酒井千穂)

北野謙 展 our face project:Asia

会期:2011/11/26~2012/01/29

MEM[東京都]

目に焦点を合わせて周囲がぼやけた肖像写真、のように見えるが、じつは数十人分の肖像写真のネガを1枚ずつ目の位置を合わせて焼き付けていった、いわば集団肖像写真なのだ。今回は、東京の反戦デモに参加した若者たち、滋賀県の高校の野球部員、ガンジス川で沐浴するヒンドゥー教徒、バリ舞踊のダンサー、天安門広場を警備する兵士たちなど、アジア各地で撮ったさまざまな集団の「群像」を展示している。このまま拡大していって、たとえばインド人全員の顔とか、全世界の政治家の顔とか、全人類の顔とか焼き付けたら、はたしてどんな顔になるんだろう。それはムリでも、たとえば卒業写真などクラス全員この方式で撮れば、だれがブスだったとかだれがデブだとかいわれなくなるし、差別もなくなるはずだ。なわけないか。ところで、ギャラリー内には梱包材が置いてあるし、テーブルの上には荷物が積み上げてあるし、なんか雑然としてるなあと思ったら、展覧会はすでに終わっていたのでした。失礼しました。

2012/01/31(火)(村田真)

行きつ戻りつ つくり つくられること

会期:2012/01/12~2012/02/12

ナディッフギャラリー[東京都]

佐野陽一、久村卓、山極満博の3人展。だが、ギャラリーの壁には佐野の写真が10点かかっているだけなので、不注意な人は佐野の個展と勘違いするかもしれない。が、ギャラリーの入口の螺旋階段の下に目をやれば、そこには小さな小さなプチギャラリーが店を開いているし(山極)、奥の倉庫をのぞけば密かにビデオショーをやってるし(久村)、床にゴミがたまってるのかと思ったら硫黄岳の土だったりして(久村)、あっちこっちに作品があることに気づく。階上の本屋にも、作品運搬用の箱の内部をプチギャラリーに見立てたり(山極)、在庫本用の引き出しの内部がプチアトリエになってたり(山極)、台の上に石みたいな石鹸(石鹸みたいな石かも)を置いたり(久村)、数カ所に作品が隠されている。サービス精神旺盛な楽しい展覧会。

2012/01/31(火)(村田真)