artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

日韓交流展「Histrorical Parade; Images From Elsewhere」

会期:2013/01/09~2013/02/03

アートラボあいち[愛知県]

2階と地下の2フロアを使って日韓11作家の展示。それなりにキャリアを積んだ作家が多いせいか、チャラい作品は少なく、現実と真摯に向き合う姿勢が目についた。たとえばノ・スンテクはいわゆる光州事件を、高橋伸行はハンセン病をテーマにするなど社会問題に対する意識の高さがうかがえる。また、イ・ウォノはテニスコートやサッカーコートの白線をモチーフにすることで、おそらく韓国にとってもっとも切実な境界線(ボーダーライン)の問題を浮かび上がらせる。しかし日韓関係にまで踏み込む作品は少なかった。例外は、藤木正則の《日が昇る海/日が沈む海》という映像インスタレーション。これは日本側からと韓国側から撮影した海の映像を併置したもので、見た目に同じものでも見る角度や立場によってまったく正反対にとらえられることを示している。もう一歩進めて《日本海/東海》とか《竹島/独島》といった作品をつくって議論ができたら、日韓交流も別のステージに進めるかもしれない(し決裂するかもしれない)。

2012/01/26(土)(村田真)

ALA Ploject No.16 猪狩雅則

会期:2013/01/16~2013/02/17

アートラボあいち[愛知県]

今年2度目の名古屋。愛知芸文センターでの「アーツ・チャレンジ」に参加する前にあれこれ寄ってみた。まずアートラボあいちの1階では、100号大のペインティングがドーンと2点。ちょっとトボケていて捨てがたいセンスを感じるけど、第一印象は「いまどきありがち」な絵。ありがちな絵だから親しみやすく入りやすいともいえるが、なんだまたか、もっと見たことないような絵を見たかったとも思う。

2012/01/26(土)(村田真)

古賀絵里子「浅草善哉」

会期:2012/01/20~2012/02/20

EMON PHOTO GALLERY[東京都]

古賀絵里子の「浅草善哉」のシリーズは、浅草で長年喫茶店を営んでいた老夫婦を、2003年から撮り続けた労作だ。中村はなさん(旧姓平田)は1912年、中村善郎さんは1921年生まれで、1955年から西浅草二丁目で喫茶店「あゆみ」を経営していた。古賀が浅草三社祭で偶然二人にあったころには店は閉じられ、晩年は二人とも病気がちだった。2008年に義郎さん、2010年にはなさんが相次いで逝去。古賀が撮影した二人の写真が残された。このシリーズは、2004年に銀座・ガーディアンガーデンで一度展示されているが、今回青幻舍から同名の写真集が刊行されたのをきっかけに、リバイバル展が開催されたのだ。
古賀の写真には、この種のドキュメンタリーにどうしてもつきまとう「こう見なければならない」という強制力が感じられず、穏やかで、開放的な雰囲気が備わっている。いつも寄り添うように近くにいる二人の存在のかたちが、柔らかに定着されていて見ていてストンと胸に落ちる。また、昔の二人が写っているスナップ写真の複写が効果的に挿入されていて、過去と現在の時間がゆるやかに混じりあうのもいい。ただ、このシリーズはやはり旧作であり、むしろ古賀がこれから先どんなふうに作品を発表していくのかが気になった。その意味では、会場を区切って展示されていた「一山」という6×6判、カラーのシリーズが注目される。高野山の四季を2年半にわたって撮り続けているものだが、そろそろひとつのかたちにまとまっていきそうな気配を感じた。
展覧会の会場構成は、『魯山』店主の大嶌文彦が行なった。書、器、鏡、錆の浮き出た家具などを配置した趣味のいいインスタレーションだが、少し要素を詰め込み過ぎて、やや写真が見づらくなっているのが残念だった。

2012/01/25(水)(飯沢耕太郎)

MP1 Expanded Retina|拡張される網膜

会期:2012/01/21~2012/02/05

G/P GALLERY[東京都]

MP1は、エグチマサル、藤本涼、横田大輔、吉田和生という1982~84年生まれの4人の写真家たちと、批評家の星野太によるグループ。2011年秋に横浜トリエンナーレの関連企画として、横浜・新港ピアで開催された「新・港村」で「拡張される網膜」展を開催して本格的に始動した。2012年は本展をはじめとして、都内のいくつかのギャラリーやウェブ上で複数のプロジェクトを進行する予定だという。
正直言って、作風、経歴にそれほど重なり合うところのない彼らが、グループとして活動していく強い理由を見出すのは難かしい。ただ、写真家たちによる自主運営ギャラリーの活動もそうなのだが、異質な要素が触媒的に働くことで、メンバーの作品が思わぬ方向に伸び広がっていくということは大いに期待できる。例えば今回の展示では、かなり過剰に「表現主義」的な傾きが強かったエグチマサルの写真+ドローイング作品が、すっきりとしたミニマルな雰囲気の画面に変質していた。反対に吉田和生は、被写体のエレメンツをしつこく反覆・増殖していく傾向を強めている。このような化学反応を、むしろ積極的に触発していってほしいものだ。そこから星野の言う「写実的な外界の痕跡でもなければ、表現主義的な内面の吐露でもない」、ちょうどその中間領域とでも言うべき「網膜」の表層性に徹底してこだわる、彼らのスタイルが模索されていくのではないだろうか。
なお、展示にあわせて500部限定のコンセプト・ブック『Expanded Retina|拡張される網膜』(BAMBA BOOKS)が刊行されている。きっちりと編集されたクオリティの高い作品集だ。

2012/01/25(水)(飯沢耕太郎)

「水と土の芸術祭2012」プレス発表会

会期:2012/01/25

六本木アカデミーヒルズ スカイスタジオ[東京都]

3年前に新潟市で開かれた通称「みずっち」だが、今年ようやくトリエンナーレとして7月14日からの第2回展開催が決まった。事業はアートプロジェクト、市民プロジェクト、シンポジウムの3つからなり、アートプロジェクトは水戸芸術館学芸員の竹久侑らがディレクターに就任。作品は招待と公募の2本立てで、市内各地に展示していく。参加作家は石川直樹、カミン・ラーチャイプラサート、西野達、原口典之、日比野克彦、藤浩志、吉原悠博、王文志らが決まっている。北川フラムがディレクターを務めた3年前は新潟市内のほぼ全域に作品を点在させたため、見て回るのが大変だったが、今回は万代島旧水揚場をメイン会場にしてもう少しコンパクトにまとめるようだ。今年は7月29日から同じく新潟県で越後妻有アートトリエンナーレも開かれるので、まとめて見に行くぞ。

開港都市にいがた 水と土の芸術祭 2012 URL=http://www.mizu-tsuchi.jp/

2012/01/25(水)(村田真)

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