2020年07月01日号
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artscapeレビュー

古賀絵里子「浅草善哉」

2012年02月15日号

会期:2012/01/20~2012/02/20

EMON PHOTO GALLERY[東京都]

古賀絵里子の「浅草善哉」のシリーズは、浅草で長年喫茶店を営んでいた老夫婦を、2003年から撮り続けた労作だ。中村はなさん(旧姓平田)は1912年、中村善郎さんは1921年生まれで、1955年から西浅草二丁目で喫茶店「あゆみ」を経営していた。古賀が浅草三社祭で偶然二人にあったころには店は閉じられ、晩年は二人とも病気がちだった。2008年に義郎さん、2010年にはなさんが相次いで逝去。古賀が撮影した二人の写真が残された。このシリーズは、2004年に銀座・ガーディアンガーデンで一度展示されているが、今回青幻舍から同名の写真集が刊行されたのをきっかけに、リバイバル展が開催されたのだ。
古賀の写真には、この種のドキュメンタリーにどうしてもつきまとう「こう見なければならない」という強制力が感じられず、穏やかで、開放的な雰囲気が備わっている。いつも寄り添うように近くにいる二人の存在のかたちが、柔らかに定着されていて見ていてストンと胸に落ちる。また、昔の二人が写っているスナップ写真の複写が効果的に挿入されていて、過去と現在の時間がゆるやかに混じりあうのもいい。ただ、このシリーズはやはり旧作であり、むしろ古賀がこれから先どんなふうに作品を発表していくのかが気になった。その意味では、会場を区切って展示されていた「一山」という6×6判、カラーのシリーズが注目される。高野山の四季を2年半にわたって撮り続けているものだが、そろそろひとつのかたちにまとまっていきそうな気配を感じた。
展覧会の会場構成は、『魯山』店主の大嶌文彦が行なった。書、器、鏡、錆の浮き出た家具などを配置した趣味のいいインスタレーションだが、少し要素を詰め込み過ぎて、やや写真が見づらくなっているのが残念だった。

2012/01/25(水)(飯沢耕太郎)

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