2020年11月15日号
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artscapeレビュー

朝海陽子「Northerly Wind」

2011年12月15日号

会期:2011/11/02~2011/11/20

NADiff Gallery[東京都]

自宅でホームビデオの映画を鑑賞している人々を撮影した朝海陽子の「Sight」シリーズ(2006~2010)は、とてもよく練り上げられた、想像力を刺激する作品だ。すでに同名の写真集(赤々舎、2011)も刊行されており、今のところ彼女の代表作であることは間違いない。
えてして、こういういい作品の後には模索の時期が続くことがあるが、まさに朝海が陥っていたのがそんな状況ではないだろうか。近作をいくつか見たのだが、まだ「これは」という水脈が見つかっていないように感じた。今回NADiff Galleryで展示された「Northerly Wind」にしても、試行錯誤の産物であることに違いはない。だが以前に比べると、何か手応えのようなものを感じさせる作品になってきている。
2011年夏、青森に滞在して撮影したいくつかのシリーズが並ぶ。「「Northerly Wind」は、海辺の道の風速表示板に、「北東の風2メートル」、「北の風0メートル」といった具合に数字が出ている様子を撮影している。「field sketch」は海、鳥の群がる樹、草原、燈台などのある風景をやや引き気味に撮影したランドスケープ。ほかに風が登場する小説の冒頭部分だけをモニターに映し出すインスタレーションも展示されていた。風というテーマは魅力的であり、可能性を孕んでいる。これまであまり表立っては見えてこなかった、朝海の作品のなかにある文学的なイメージが、さらに南風や東風や西風の領域にまで広がっていっても面白そうだ。

2011/11/16(水)(飯沢耕太郎)

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