2020年07月01日号
次回7月15日更新予定

artscapeレビュー

アトミックサイト

2011年09月01日号

現代美術製作所[東京都]

会期:2011/07/18~2011/08/07、2011/08/11~2011/08/20
イルコモンズ監修による企画展。既存の「原子力発電PR施設」に対して「反/脱原子力発電PR施設」を仮設するという設定で、イルコモンズ自身をはじめ、石川雷太や伊東篤宏、Julia Leser & Clarissa Seidel、中村友紀、山川冬樹、吉田アミが作品を発表した。3.11からわずか半年しか経っていないにもかかわらず、3.11以前の日常を取り戻したかのような健忘症的多幸感のなかで、原爆の核と原発の核が同じ危険であることを意識の隅へ追いやり、依然として「人間の安全保障」を蔑ろにしてやまない私たち自身の愚かさを思えば、これに対抗する表現文化をはっきりと打ち出すことは絶対必要であるし、この20年のあいだにサブカルチャーが失ってしまったカウンターカルチャーとしての役割を蘇生させることも必要不可欠である。平たくいえば、イルコモンズによるクリティカルな表現活動の主旨には大いに賛同する。しかし、そうであるにもかかわらず、展覧会を見た後の違和感をどうしても拭い去ることができないのは、そこで発表されているのが、結局のところ、どこからどうみてもアート作品以外の何物でもないからだ。しかも、原発や放射能の危機をテーマとした中庸な作品ばかりであるところに、同じ危機を感じてやまない者としては、少なからず不満が残る。会場の冒頭には楳図かずおの『漂流教室』から引用した「あたしらはいま、ふつうの状態じゃないんだ! ふつうの状態じゃないときに、ふつうのやり方じゃまにあわないんだ!!」というマンガが象徴的なメッセージとして掲げられていたが、この展覧会そのものが「ふつうのやり方」に終始してしまっているといったら言い過ぎだろうか。楳図かずおを置き去りにするほどの「ふつうじゃない」表現が見てみたいし、それは必ずしも展覧会を構成するほどたくさんある必要はない。ひとつでもあれば、十分に生きてゆけるからだ。

2011/07/29(金)(福住廉)

2011年09月01日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ