2020年07月01日号
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artscapeレビュー

田口行弘

2011年09月01日号

会期:2011/03/26~2011/08/28

森美術館[東京都]

床板や椅子などありきたりの日用品を少しずつ動かすことでストップモーション・アニメーションを制作するアーティスト、田口行弘の個展。森美術館のバックヤードや六本木近辺で制作した映像作品を、角材などで空間を構築した会場で発表した。どちらかといえば表現に対して規制が強く働くほうの美術館にしては、映像のロケーションから会場の構成まで、空間を巧みに使いこなした作品に仕上がっていたように思う。このある種の「受け入れられやすさ」こそ、田口の作品の真骨頂なのだろうが、その一方で、「受け入れられにくさ」の段階まで飛躍することを期待しないではいられない。田口のストップモーション・アニメーションは、凡庸な日常を前提にしているが、その日常そのものに大きな亀裂が生じてしまったいま、日常にちょっぴり手を加えて無邪気に楽しむ類いの作品を、以前と同じように受け入れることが難しくなってしまったからだ。これは、おそらく田口にかぎらず、多くのアーティストがいま直面している壁ではないか。

2011/07/23(土)(福住廉)

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