artscapeレビュー
大沼洋美「くもがうまれるところ」
2011年08月15日号
会期:2011/07/21~2011/07/26
谷口雅企画の現代HEIGHTS Gallery DENの連続展示の第四弾。山形の東北芸術工科大学を卒業して当地で活動している大沼洋美の作品は、文字通り「くもがうまれるところ」を扱っている。山間で煙、霧、靄などが立ちのぼる場所を撮影しているのだが、大地から流れ出る気流のかたちに神経を集中している様子がしっかりと伝わってくるいい写真だった。地面に近い場面は床に近づけて、山頂のあたりの場面は天井近くに展示するというインスタレーションも、よく考えられていた。
それとは別に、同時に展示されていた「谷口雅写真展」の最終回「水面を眺めてばかりいる」もなかなかよかった。谷口の記憶のなかに流れ、淀み、渦巻き、変化していく「水面」のイメージを、ふと目にした嵐の後の川面や、バルコニーの床に叩きつける雨粒などと重ね合わせて撮影していったシリーズである。「句読点のように置かれた水の記憶。撮り損なってばかりいる水。あるいはだからこそいまだに水面を眺め続けシャッターをきりつづけているのだろう」。写真から言葉へ、そしてまた写真へと「切断し旋回」していく思考と感情の流れが、繊細かつ的確に定着されていると思う。
少し気になったのは、写真がA4のコピー用紙にプリントアウトされた状態で、上の二カ所だけをホッチキスで止めて壁に並んでいること。なるべく大げさになることを避けて、軽い感じで展示したいという気持ちはわからないではないが、逆に衒いが目につき過ぎる気もする。普通のプリント、普通のフレームでよかったのではないだろうか。
2011/07/24(日)(飯沢耕太郎)