artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
安慶田渉 渦巻く思考と溶ける彫刻

会期:2011/03/16~2011/04/02
MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w[京都府]
鉄線を渦巻き状に加工したピースからなる巨大な人体像、球体が溶解したかのような石彫、石彫と同様の形態をした樹脂製の小品などが大量に並び、さらには制作に用いる道具類も演出として展示されていた。広大なスペースを持つ会場を相手に、まるで自身の全ポテンシャルを注ぎ込んだかのような情熱的な個展だった。これが初個展だと聞き2度驚いたが、だからこそここまでやれたのかも。このまま燃え尽き症候群に陥らないことを切に願う。
2011/03/26(土)(小吹隆文)
上須元徳 展 “RE:Assemble”

会期:2011/02/11~2011/02/13
YOD Gallery[大阪府]
上須元徳はこれまで一貫して、普段目にする町並みや建築など、撮影した風景の写真をもとにリアルに描いた作品を発表してきた。輪郭ではなく色面で構成されるその作品には、モチーフとなる複数の風景が部分的に組み合わされていたり、時間のズレを感じさせるものがまぎれていたりと、違和感を感じさせる特定のイメージが織り込まれ、現実に目にしている世界と人間それぞれの知覚、感覚の関係について考える作家の意図が比較的解りやすく示される場合が多かった。しかしモノトーンの作品ばかりが発表された今展の作品にはどれも、これまでの普遍的な風景のなかに描かれていた、例えば、固有名称が書かれた看板や自動車の車種など特定のイメージはない。無機質な大きなドーム型建築、ソテツの木、地面を被う落ち葉など、どれも物質的な普遍性や価値だけが画面に表わされている。違和感によって他者と自己の関係やアイデンティティについて考えるのではなく、普遍性からアイデンティティを探る新たな試みに見えた。今後どのように表現が展開するのか気になる。
2011/03/26(土)(酒井千穂)
ほんをさがして 「Looking for a Book」(福岡道雄、藤本由紀夫、かなもりゆうこ、森末由美子、柴田精一)

会期:2011/02/28~2011/03/26
Gallery Hosokawa[大阪府]
本をキーワードにした展覧会。小さな会場だが、それぞれの作家がイメージを展開した表現はどれも自由な想像力が発揮されていて繊細でユニークなものが多い。遊び心と快い記憶をくすぐる要素がところどころにちりばめられていたかなもりゆうこの美しい映像作品が特に良かった。暗く沈みがちな気分になっていたが、見に行って良かったと思う素敵な展覧会だった。
2011/03/26(土)(酒井千穂)
片山浩 展

会期:2011/03/21~2011/03/26
Oギャラリーeyes[大阪府]
作家の日常生活空間を描いているのだろうか、室内を描いた作品の画面に染み込むアクリル絵の具の透明度と輪郭を曖昧にして薄く混じり合うような色彩の線が印象的だった。一見は、全体にぼんやりとしたイメージで画面になにが描かれているのか解らないのだが、しばらく見つめていると、薄暗い空間から見える窓の外の光景やカーテン、隔てたスペースにあるソファの像などが、画面に浸透した青っぽい色の筋のなかにじんわりと浮かび上がってくるようで不思議。時差をもって見えてくる何気ない日常の光景の静謐と、その驚きが新鮮に感じられた個展。
2011/03/26(土)(酒井千穂)
生誕100年 岡本太郎 展

会期:2011/03/08~2011/05/08
東京国立近代美術館[東京都]
生誕100周年を記念し、岡本太郎の多面的な活動を振り返る展覧会である。個人的には、画家としてよりも(形式や手法の前衛性ではなく、不思議なキャラの絵であり、やはり色使いが特徴)、生き方、言説、民族学者的なまなざしの方が興味深い。今回は、二つの岡本太郎の展示施設をすでに見ていると、既知のものが多い入門的な内容なので、そういう観客も楽しめる、もうちょっと違う展示の仕かけも欲しい。もっとも、大阪万博における太陽の塔は、やはり岡本の履歴のなかでも傑出した作品だと、改めて思った。
2011/03/26(土)(五十嵐太郎)


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